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闇堕ち令嬢シンシア ~死に戻り少女は死なないことにした  作者: 九條葉月


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隠蔽

 


 私が冒険者や騎士たちと共に盗賊の残党狩りをしていると、冒険者の中でもひときわ強そうな男性(スキンヘッド&マッチョ)が近づいて来た。


「嬢ちゃん! 助かったぜ! あの雷魔法はあんたのだろう!?」


「えぇそうよ。はじめまして、Aランク冒険者のシアよ」


 冒険者証を示しながら自己紹介すると、スキンヘッドの男性は嬉しそうに破顔一笑した。


「やっぱりか! 王都の冒険者ギルドから話は来ているぜ! さすがの腕前だ! それに住民を守りながら戦ってくれただろう? 城館からもよく見えたぜ!」


「ま、盗賊退治のついでにね」


「ははっ、謙遜するなって! いくら遠くても守りながらの戦いだってことくらい分かるんだからな!」


 バンバンと私の背中を叩いてくるスキンヘッドマンだった。背骨折れそう。


「いやぁいいタイミングだった! ありがたい! あとは俺たちに任せてくれ! あれだけの魔法を使ったなら疲れているだろう?」


「そうね、ではお言葉に甘えて」


 まだまだ魔力には余裕があるけれど。ロイ君の様子も見たいし『魔王』も気になるのでお任せすることにした。


「おう、そうしてくれ! ……おっと、こっちの自己紹介がまだだったか。俺はこの街の冒険者ギルドマスター・デーニッツだ」


「あら、大物ね」


()してくれ、こんな寂れた辺境のギルマスなんて自慢にもならねぇよ。……ところで、領主様を見なかったか?」


「領主様? 城館にいるんじゃないの?」


「いや、俺たちが冒険者を引き連れて城館に駆けつけたときにはもう、騎士を率いて盗賊退治に出陣されたようでな。すぐに追いかけたかったんだが盗賊の数が多くてなぁ……」


「救援に駆けつけられず、籠城を選んだと」


「あぁ。この領地は財政が厳しくてな。騎士の数が足りていないんだ。しかも今は魔物の討伐に出かけている騎士もいるし……」


「そうだったの……。ごめんなさいね、そもそも領主様の顔すら知らないの。私が助けた人の中にお貴族様みたいな格好の人はいなかったと思うわ」


 一応リリーにも確認してみるけど、彼女の首を横に振った。


「そうか……。いや、すまんな。しんみりとさせちまった。俺も残党狩りに行くから、あとで酒でも奢らせてくれ」


「楽しみにしているわ」


 愛用の武器であろう戦斧を担いで町中へと走って行くデーニッツさんだった。男性でもあのくらい気っ風がいい性格だと嫌悪感がないわよね。


「――シア様。リリーは不満を抱いています」


 ぷくーっと頬を膨らませながらリリーが近づいて来た。え? なんで? もっと盗賊を倒したかったとか?


「なぜ戦場に赴くというのに、リリーを置いていってしまわれたのですか?」


「あー、そういう……。だってリリーにはあの女性たちを任せていたじゃない?」


「……シア様からのご下命に不満はありませんが」


 ますます頬を膨らませるリリーだった。


 こういうとき、どうすればいいのか私は知っている。――別の衝撃的な話題で誤魔化せばいいのだ。


「そうそう、リリー。私ってどうやら『魔王』になったみたいなのだけど」


「……魔王、ですか?」


「うん」


 ぷしゅーっとリリーの頬から空気が抜けていく。


「シア様のお言葉を疑うわけではありませんが……シア様のご説明では、現在の魔王を倒すと代わりに魔王となるのではなかったのですか?」


 リリーへの協力を求めるため、その辺は説明済みだ。信じさせるのに苦労したけどね。


「そうなのよ……。どうやら別の条件があったみたいで」


「条件とは?」


「えーっと、神を否定すること、魔法で1万人殺すこと、千人斬りを達成すること。そうすると神と人類の敵である魔王になるそうよ」


「……まぁ、人間が神を否定するなどあり得ないですし、1万人も殺せば十分人類の敵ですよね。私の記憶ではそこまで殺していないはずですが」


「それはたぶん、やり直しの中で殺してきた数が繰り越しで加算されたのね」


「そんな都合のいい……。いえ、とにかく『鑑定』してみましょうか。よろしいでしょうか?」


「もちろんよ」


 私が承諾すると、リリーが真剣な目で見つめてきた。

 その赤い瞳がわずかに光を放っている、ような気がする。


 鑑定眼(アプレイゼル)


 その名の通り相手の名前やレベル、称号、保有スキルなどを鑑定できる瞳だ。もちろん多すぎる魔力とか厄介な称号などは隠蔽スキルで隠しているけれど、所得したばかりの『魔王』はそのままのはずだ。


「……たしかに称号が『魔王』になっていますね。これはすぐに隠した方がいいでしょう」


「それもそうね」


 辺境とはいえどこに鑑定眼(アプレイゼル)持ちがいるか分からないもの。


 まずは『ステータス画面』を起動する。空中に浮かぶ半透明の液晶画面みたいなもので、自分のレベルやスキルなどを確認できるのだ。あとは空間収納(ストレージ)に入っているものを整理したりとか。


 他の人はステータス画面の存在すら知らないので、たぶんよくある『転生特典』だと思う。


 それはともかく、私の称号が『魔王』になっていたので、それを外す。称号として選択できるのは一つだけで、その称号によって伸ばしやすい基礎能力が変わっていく感じだ。


 魔王の称号だと闇魔法のレベルが上がりやすいみたいだ。洗脳とか魅了とか。


 私もさすがに闇魔法までは習得していないからちょっと興味があるけど……闇魔法ならリリーに任せればいいのだから別に必要性は感じない。


 私が他に保有している称号は『Aランク冒険者』と『剣聖』、そして『賢者』となる。剣聖はその名の通り剣技を極めた者に与えられる称号で、賢者は魔法を極めた者に与えられる称号となる。


 ちなみに闇魔法は禁忌というか魔族専門の魔法なので、闇魔法を極めなくても賢者の称号は得られるのだ。


 以前は他にも『王太子の婚約者』や『公爵令嬢』という称号もあったのだけど、婚約破棄されたり実家から追放されたせいかそれらの称号は消えていた。まぁ別に惜しくはないので別にいいのだけど。


 ……ん?

 もう一つ称号が増えているわね?


 ……女たらし?


 これのどこが称号だと? どんな効果があると? まさか女性からモテモテになるとか? モテてどうするというのか……。あれか? リリーを連れ回して同じベッドで寝たりしたから称号ゲットしちゃったかなー?


 私としてはロイ君(少年)をたらしている気がするから、むしろ男たらしなんじゃ……。いや、それはいいから。どちらにせよこんな称号は表にできないから。さっさと称号を『Aランク冒険者』に変えてしまう。


 あとは一応『隠蔽工作(ブラエ)』というスキルで魔王の称号自体を隠しておきましょう。これはすでに人間としては多すぎるHPやMPを人並みに見せていたり、自動回復(イルズィオン)自動魔力回復(イルズィカーリオン)といった貴重すぎるスキルを隠すために使用しているものだ。


 称号変更と隠蔽工作(ブラエ)。その効果をさっそくリリーに確かめてもらう。


「どうかしら?」


「……称号はAランク冒険者。HPとMPは多いですが、人間の範疇ですね。保持スキルも平凡なものばかりですので問題なさそうです」


 リリーが太鼓判を押してくれたので、不意に鑑定されても大丈夫でしょう。


 次はロイ君の様子を――あら? ロイ君がいないわね? シーナちゃんとセイラちゃんもいない。どこ行っちゃったのかしら?


 こういうときこそ便利な探知魔法ね。人物指定で検索して~っと。……街の中にある広場に集まっているみたい。ロイ君たちや、他のみんな。そして遺体たちも(・・・・・)



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これ君じゃない可能性があるなあ
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