冒険者三人組
子爵家領や廃砦の場所は分からないけど、次の街には行ったことがあるので転移魔法を使いましょうか。
いやでもセバスは徹夜明けだから酔っちゃうかも? なぁんてことを考えていると、
「――シア様。例の首なし騎士を乗せた馬がいますね」
街道の先へと視線を向けたリリーがそんな報告をしてきた。
私も目を向けてみるけれど……まったく見えないわね? 小さな点みたいな物があるような? よくあんな距離で分かるものだ。これも吸血鬼としての力かしら?
「冒険者らしき三人組が馬を取り囲んでいますね」
「へぇ」
馬を捕獲しようとしているのか。あるいは騎士の死体から鎧を剥がして売り払ったり自分で使ったりするつもりか。もしくはその両方か。
ま、この世界の常識としては『拾ったもの勝ち』なので文句を言うつもりはない。あとはダンジョンの帰り道で他の冒険者に襲われて戦果を強奪されるなんてよくある話だし。
「物取りでしょうか?」
セバスも私と同じ見解に至ったようだ。
「……んん?」
馬がいるという方向を見つめながら妙な声を上げるリリー。
「どうしたの?」
「いえ。馬から騎士の死体を下ろした冒険者たちが――穴を掘り始めました」
「穴?」
「はい。最初は魔法使いが土魔法を使っていましたが、今は人力で掘っていますね。おそらく魔力が尽きたのでしょう。皆が皆、シア様のようにバカみたいな魔力を有しているわけではありませんから」
「バカみたいって……もうちょっと言い方ぁ……」
リリーに対するお嬢様的指導はあとでやるとして。気になるのは冒険者三人の行動だ。
装備を引き剥がしたあとに埋葬でもするつもりかしら? いやわざわざそんなことをする意味が分からない。都市の中なら疫病を恐れてという理由も思いつくけれど、こんな開けた荒野と街道でそんな心配をしてもほとんど意味はない。
埋葬なんてしているうちに他の誰かがやって来るかもしれないのだから、こういうときは見なかったふりをしてさっさと立ち去るのが常道だ。
「あ」
「今度はどうしたの?」
「あの冒険者たち、騎士の死体を穴の中に横たえましたね。鎧を剥がすことなくそのまま」
「……へぇ?」
せっかくの装備品を取ろうともせず、遺体の埋葬を?
もしそれが事実ならとんでもない善人ね。この世界に生きる人間としては珍しいし、冒険者という職業であれば尚更だ。そういう善人は真っ先に餌食となってしまうでしょう。
「…………」
ちょっと気になった私は、その冒険者がいるという場所まで移動してみることにした。転移魔法を使うと驚かせてしまうかもしれないから、徒歩でね。
◇
「ほー」
私の視力でも詳細が見える距離まで近づいて。思わずそんな間の抜けた声を漏らしてしまった。
冒険者らしき三人組が、本当に、穴を掘って騎士の死体を埋葬していたのだ。しかも近くで摘んだらしき花を胸に乗せて。完全に、死者を悼んだ埋葬風景ね。
「……だ、誰ですか?」
近づいてくる私たちを警戒したのか、三人組の一人がこちらを向き、背中に背負った大剣の柄に手を伸ばした。
まだ若い、冒険者としても駆け出しっぽい少年だ。
髪は短く切りそろえられ、どことなく『主人公』っぽい見た目をしている。服装はスタンダードな男性冒険者のもの。
まだ声変わりもしていないのかちょっと声が高いわね。13~15歳ってところかしら? 背中の大剣からして『剣士』でしょう。
続いて他の二人も私を認識し、警戒するように身構える。
二人目は少女で、魔法使いかしら? いかにも『魔法使い』っぽい黒のローブを身に纏い、自分の身長より長い魔法杖を持っている。丸い眼鏡がチャームポイントね。
最後の一人は聖職者の少女。この国の国教である『大聖教』の衣装に身を包んでいる。金髪で、どことなく立ち姿が上品なので貴族かもしれない。貧乏な貴族は育てきれない子供を教会に出すのが普通だし。
たぶん年齢は三人とも同じくらい。
剣士一人に、魔法使い一人、聖職者一人。つまりは前衛と後衛、そして回復役だ。冒険者パーティーとしてはコンパクトに纏まっているというか、必要最低限の人材しかいないというか……。この構成で本格的な冒険をしているのだとしたら『命知らず』としか言えないわね。
いや、私はリリーと二人組で冒険者をやっているので、人のことはとやかく言えないのだけどね。
しかし。んー?
この三人組、どこかで見たことがあるような? どこだっけ……?
…………。
あ、そうだ。原作ゲームでの『勇者パーティー』だ。




