それはそう見える
――帝国暦三二〇年・冬中頃 第七騎士団 本庁・執務室――翌日。
いつも通りの朝。
ただし。
「おはようございます、姫様」
少しだけ、空気が違った。
リリアは気づかない。
ただ、いつものように微笑む。
奥の窓際。
メリエラが顔を上げる。
視線が、リリアに向く。
「……なるほど」
また、それだった。
クリスが席に着く。
妙に静かだ。
「……なんだよ」
周りを見る。
ミナが笑う。
「楽しそうだったわね」
「は?」
ダリオが肩をすくめる。
「噂になってる」
「は?」
クリスが固まる。
その時。
メリエラが静かに口を開く。
「理解しました」
全員がそちらを見る。
「関係性の構築ですね」
淡々と。
「段階的接近と、外部環境での距離調整」
「極めて合理的です」
完全に違った。
クリスが顔を覆う。
「やめろ」
ミナが笑う。
「すごくそれっぽいわね」
ダリオが頷く。
「それっぽいな」
リリアは静かに聞いていた。
何も言わない。
ただ少しだけ考える。
メリエラが、ふと視線を向ける。
リリアに、にこやかに。
そして。
「参考になります」
それだけ言う。
一瞬で
リリアの動きが、わずかに止まる。
視線を小さく落とす。
「……何の、でしょうか?」
誰に向けたでもなく。
静かに。
誰も答えない。
ただ、紙の音が重なる。
いつもの執務室。
けれど、少しだけ話が違っていた。




