仕切りの向こう
――帝国暦三二〇年・冬中頃 第七騎士団 本庁・執務室――朝。
部屋に入って、すぐ分かった。
変わっている。机の配置が違う。
中央に、レオンとエリシア。
その前に、書記官たち。
そして奥に――
メリエラが一人。
「配置を変更しました」
エリシアが言う。
「業務は一度、私に集約します」
「そこから各自に割り当てます」
「直接の判断・指示は禁止です」
はっきりしたルールだった。
リリアは頷く。
「……はい」
仕事が始まる。
しばらくして。
一つの書類が回ってくる。
リリアが受け取る。
目を通す。
その時。
「それは第十騎士団の案件です」
奥から声がした。
メリエラだった。
「補給線の再調整が必要です」
続ける。
一瞬。
空気が止まる。
クリスが小さく言う。
「……もう言ったな」
エリシアが口を開く。
「メリエラ」
静かに。
「指示は私を通しなさい」
一瞬で空気が締まる。
メリエラがこちらを見る。
「……はい」
短く答える。
一瞬だけ、間を置く。
「補足として提出します」
言い直す。
エリシアが頷く。
「受け取ります」
そのまま書類を処理する。
レオンが目を通す。
「第十に回せ」
短く言う。
流れが、整う。
ダリオがぼそりと言う。
「……分かりやすいな」
クリスが頷く。
「分かりやすいな」
ミナが笑う。
「ちゃんと回ってる」
リリアは書類を見る。
奥を見る。
メリエラはもう何も言わない。
ただ、仕事をしている。
同じ部屋。
同じ仕事。
やり方だけが、ただ変わっていた。
少しだけ、距離も。




