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なんか来た

――帝国暦三二〇年・冬初め 第七騎士団 本庁・執務室――朝。


 扉が、軽く叩かれた。

「失礼します」

 入ってきたのは、小柄な少女だった。

 黒髪、年の割にかなり小さく見える。


 リリアが一瞬、目を細める。

(……年下?)

 少女は部屋を見回す。

 迷いがない。


「総庁より参りました」

 一礼。

「メリエラ・エイゼンです」

「騎士団統括管理官補佐として配属されました」


 静かに名乗る。

 クリスが眉を上げる。

「……若くないか?」

 メリエラがちらりと見る。

 その瞬間。

 表情がわずかに曇る。


「そう見えますか?」

 淡々とした声。

 温度は低い。


 そして。

 レオンを見る。

 表情が変わる。

 ぱっと、明るく。

 にこやかに笑った。

 空気が一瞬だけ歪む。


「よろしくお願いします、レオン様」

 声も柔らかい。

 クリスがそれを見て固まる。

「好きにやれ」

 レオンは気にしない。

 メリエラは一歩近づく。

「メリエラではなく」


「メリーとお呼びください」

 にこやかに。


 クリスが吹き出す。

「いや待て」

「なんでだよ」

「じゃ、俺もメリーって……」


 メリエラが振り向く。

 表情が消える。

「お断りします」

「なれなれしいので」

 露骨に不機嫌な顔。


 クリスが止まる。

「……差、露骨すぎない?」

 ぼそり。


 リリアが一歩前に出る。

「はじめまして」

 柔らかく笑う。

「リリアです」

 メリエラが見る。

 一瞬だけ、無表情。


「知っています」

 短く。

「有名ですので」

「姫様ですよね。」


 親衛隊の空気が変わる。

「――その呼び方は」

 エゼルが前に出る。

 メリエラは視線だけ向ける。

 少しだけ、眉を寄せる。


「何か問題でも?」

 不機嫌なまま。

「軽い」

 低い声。


 メリエラはため息をひとつ。

「そうですか」

 興味なさそうに。

 リリアが困ったように笑う。

「大丈夫ですよ」


 その一言で、親衛隊が引く。

 メリエラはそれを見る。

 一瞬だけ、目を細める。

「なるほど」

 小さく呟く。


 レオンが言う。

「で」

「何ができる」

 メリエラはすぐに視線を戻す。

 そして。

 また、にこやかに笑った。


「他騎士団との折衝」

「情報の整理」

「運用補助」

 明るく、淀みなく。

「必要であれば代行も可能です」


 クリスが小さく呟く。

「……切り替えすごくね」

 レオンは興味なさそうに。

「使えればいい」

 それだけ。


 メリエラは、にこりと頷く。

「承知しました」

 その時。

 ふと、リリアを見る。

 今度は、笑っていなかった。

「よろしくお願いします」

 静かに。


 リリアは少しだけ首を傾げる。

(……なんだろう)

 その日。

 第七騎士団に。

 ひとつ。

 扱いづらい風が入った。


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