表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/119

休日が重なる理由――団長の配慮が重すぎる件

――帝国暦三二〇年・冬初め 東ロンバルディア帝国騎士団領 第七騎士団 本庁・大広間――朝。


 張り出された新しい勤務表。

 騎士たちがざわつく。

「……なんだこれ」

 ダリオ副官が言う。

 指で表をなぞる。


「この二人」

 止まる。

「全部一緒じゃねえか」

 クリスとシエラ。

 休日も、当番も。

 完全一致。


 ミナが覗き込む。

「……本当だ」

 少しだけ目を丸くする。

 その視線が、二人へ向く。


「……仲、良かったんだ」

 ぽつりと呟く。

 完全に疑っている。

 クリスが止まる。

「違う」

 即答。

 だが説得力はない。

 シエラは淡々と。

「業務上の調整です」

「ほんとに?」

 ミナがじっと見る。

 逃げ場がない。


 ■別件

「それだけではありません」

 シエラが続ける。

「第十騎士団副官、ヴァルドの配置も変更されています」


 視線が集まる。

 ヴァルド。

 腕を組んでいる。

「……ああ」

 短く答える。

「外された」

 それだけ。

 しばらく沈黙。

 ミナが小さく首を傾げる。

「なんで……?」

 ダリオ副官も腕を組む。

「さあな」

 ヴァルドが言う。

「分からん」

 短い。

 本気だった。


 ■執務室

 レオンがいる。

 書類に目を落としている。

「団長閣下」

 ダリオ副官が入る。

「本日の配置について、確認を」


 レオンが顔を上げる。

「調整した」

 当然のように言う。

「……どの意図で?」

 淡々と問う。

 だが視線は鋭い。

「効率だ」

 一言。

「行動を合わせた方が無駄がない」


「その方が都合がいい」

 どこか満足げに。

 分かっている顔で。


(違うだろ)

 だが、口には出さない。

「……承知しました」

 ダリオ副官はそれだけ言って引く。


 ■廊下

 クリスとシエラ。

 並んでいる。

「……なんでだこれ」

 クリスが呟く。

「調整された結果です」

 シエラは淡々と答える。

「いや原因の話してる」


「推定は可能です」

「やめろ!」

 聞きたくなかった。


 ■周囲

 騎士たちがひそひそ話す。

「やっぱりな」

「団長の配慮か」

「なるほど……」

 勝手に納得していく。

 ミナが小さく言う。

「……やっぱり」


「そういうことなんだ」

 完全に確信している。

 クリスが頭を抱える。


 ■談話室

「お休み、一緒なんですね!」

 リリア。

 明るい声。

 純粋な善意。

 クリスの肩が止まる。

「……まあな」

 力なく答える。


 シエラは頷く。

「効率的です」

 肯定する。

 違う方向で。


 ■大広間

 その少し後。

 リリアは騎士たちの間にいた。

 楽しそうに。

 嬉しそうに。


「クリス様とシエラさん、式の日取りを考えているそうです」

 にこやかに言う。


 そして。

「……そうなのか」

「早いな」

「団長の調整か……」

 一気に広がる。

 誰も疑わない。

 リリアは満足そうに頷く。

「おめでたいですね!」

 純粋に。

 それが一番強かった。


 ■エリシア副官

 少し離れた場所。

 全体を見ている。

 何も言わない。

 言えない。

 一瞬だけ視線が動く。

(……もう、戻りませんね)

 理解する。

 静かに。


 ■執務室

 ダリオ副官が腕を組む。

 全体を見る。

「……このままでよろしいのですかね?」

 ぼそりと。

 誰にともなく。


 クリスが即答する。

「よくねえよ」

 だが。

 誰も止めなかった。

 その日から。

 第七騎士団の勤務表と噂は。

 ほんの少しだけ――

 意図の分からない形で整い始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ