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増えた人手と、なぜか増えた違和感

 ――帝国暦三二〇年・秋終盤

 東ロンバルディア帝国騎士団領

 第七騎士団 本庁・大広間――昼。


 第七騎士団の面々が並ぶ。

 少しざわついている。


「静かに」

 エリシアの一言で、空気が締まる。

 前に出るのはレオン。

「第十と第ニから人を呼んだ」

 簡潔に言う。

「今日からここで合同処理する」


「紹介する」

 四人が前に出る。

「……ヴァルドだ」

 短い。

 必要最低限。

「シエラと申します」

 整っている。

「ダリオだ」

 声が大きい。

「……ミナです」

 少しだけ緊張している。


 騎士たちがざわつく。

「……増えたな」

「助かるのか、これ」

「いや量が増えてるからな……」

 不安の方が大きい。


 レオンが一言。

「皆働け」

 それだけ。

 全員、黙る。

 そして。


 ――地獄が始まる。

 同日・本庁 執務室

 机。

 机。

 机。

 紙。

 紙。

 紙。

 山。

 山。

 山。

「次!」

「こっち終わりました!」

「回せ!」

 声が飛び交う。

 止まらない。


 だが、多すぎる。

「これ、第十の分だ!」

「第ニも来てるぞ!」

「混ぜるな!!」

 もう混ざっている。


 カオス。

 その中で。

 イリスは座っている。

 静かに。

 書類を分ける。

 流れを整える。


「こちらは第十へ」

「こちらは第ニで処理可能です」

 的確。

 速い。

 だが、押さない。


 エリシア。

「その順序では遅れます」

「こちらを先に」

 指示が飛ぶ。

 正確。

 迷いがない。

 二人。

 違う。


 でも、噛み合っている。

 リリアが走る。

「これ、どこですか!」

 イリスが見る。

「こちらです」

 エリシアが補足する。

「優先度は低いですが、今処理しておきなさい」

「はい!」

 迷いが消える。


 リリアが走る。

「次!」

 声を出す。

 空気が動く。

 周りも引きずられる。


 ヴァルドが低く言う。

「……回ってきたな」

 シエラが頷く。

「ええ、安定してきています」

 ダリオが笑う。

「最初よりマシだ!」

 ミナが必死に書いている。

「す、すみませんこれ――!」

「大丈夫です、こちらに」

 イリスが受ける。


 エリシアが指示を飛ばす。

 リリアが運ぶ。

 流れる。

 止まらない。


 そして、整い始める。

 レオンは少し離れて立っている。

 腕を組み。

 見る。


 騒がしい。

 だが、崩れていない。

(……回ってるな)

 小さく息を吐く。


 クリスが隣に来る。

「地獄だな」

「だな」

 短い会話。

 しかし、どこか楽しそうだ。


 夕方。

 書類の山が減っている。

 確実に。

「……終わりが見えます」

 シエラが呟く。


 誰かが笑う。

 疲れている。

 だが、達成感がある。

 リリアが大きく息を吐く。

「つ、つかれた……」


 正直。

 イリスが少しだけ笑う。

「お疲れ様です」

 エリシアが書類をまとめる。

「まだ終わっておりません」

 冷静。


 ほんの少しだけ、声が柔らかい。

 レオンが言う。

「今日はここまでだ」

 一斉に止まる。


 静寂、そして。

 誰かが笑う。

 それが広がる。

 疲労。

 達成。

 混ざる。

(……悪くない)

 レオンはそう思った。


 ――そのときだった。

 ヴァルドが、ふと顔を上げる。

「……なあ」

 低い声。


 シエラが視線を向ける。

「どうしました」

「……いや」

 少しだけ眉をひそめる。


 ダリオも周囲を見る。

「……なんか」

 ミナも、手を止める。

「え……?」

 周囲。

 第七騎士団の面々。


 ――見ている。

 妙に。

 じっと。

 四人を。


「……なんだ?」

 ダリオが言う。

「いや、別に」

 ヴァルドが目を細める。

「……なんで見てる」

 答えはない。


 だが、視線は外れない。

 クリスが横で小さく笑う。

(あー、気づいたか)

 誰も何も言わない。


 どこか満足そうに。

 あるいは――

 期待するように。

 第七の騎士たちは、

 その光景を、見ていた。


 四人は顔を見合わせる。

「……なんだこれ」

「……わかりません」

「……気持ち悪いな」

「え、ええ……」


 理由は、誰も教えない。

 ただ一つ、確かなのは。

 この騎士団は――

 少し、普通ではない。

 そして。

 その中心にいる人物もまた、

 やはり、普通ではなかった。


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