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書簡(改訂)
帝国暦三二〇年 初夏
東ロンバルディア帝国騎士団領
第七騎士団 本庁 執務室 午後
「団長、帝都より書簡です」
エリシアが差し出す。
封蝋。
皇族の紋。
「……あいつか」
レオンが受け取る。
封を切る。
中身は短い。
「……簡潔だな」
「どうされましたか」
レオンは紙を一度見直す。
小さく息を吐く。
「来るらしい」
「……誰がです?」
「皇女だ」
「来年の春までには、だと」
エリシアの指が、わずかに止まる。
「……正式な決定では?」
「違うな」
紙を軽く叩く。
「“そのつもりでよろしく”だ」
それで十分だった。
そして、もう一行。
レオンの目が細くなる。
「……ああ」
「どうされましたか」
「俺の屋敷で衣食させるそうだ」
「……はい?」
珍しく、間が空く。
「父上には話が通ってるらしい」
「……アルヴェルト様に、ですか」
「ああ」
つまり、決定だ。
断る余地はない。
エリシアは、静かに息を整える。
「……準備が必要ですね」
「そうだな」
レオンは紙を折る。
内容は軽い。
だが、意味は重い。
(来る)
それだけは確定している。
「……めんどくさいな」
本音だった。
だが、その奥に。
(……外)
小さく、何かが動く。




