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上級調査員殿

――帝国暦三二一年・夏中頃 東ロンバルディア帝国騎士団領 中央街道――


 クリスは疲れていた。

 かなり疲れていた。

「なんで俺なんだよ……」

 小さく呟く。


 その横。

「恋人ですから」

 シエラが静かに言った。

「覆面ですが」


 クリスは頭を抱える。

「その設定まだ続いてたのか……」

「当然です」

 即答だった。


 シエラは資料をめくる。

「今回は、新設騎士団について調査します」

「第十一騎士団」

「第十二騎士団」

「特に」


「なぜ総長が、ここまで急いだのか」

「南方問題との関連」

「人事意図」

「権限移動」

 淡々としていた。

 完全に仕事モードだった。


 一方、クリスは嫌そうだった。

「普通に聞けばいいだろ……」

「表向きは、そうでしょうね」


「ですが」

「私は“表向き”を調べる調査員ではありません」

 静かな声だった。

 少し怖い。


 ■中央街道

 二人は並んで歩いていた。

 完全にデートだった。

 クリスは死んだ目をしている。

 シエラは普通だった。


 その時。

「あ」

 明るい声。

 リリアだった。

 一瞬で。

「クリスさん、シエラさん」

 嬉しそうに近づいてくる。


「お出かけですか?」

 クリスは止まる。

 嫌な予感しかしなかったのだが。


 シエラは平然としている。

「はい」

「デートです」

 即答だった。


 リリアの顔が少し明るくなる。

「仲良しですね」

 嬉しそうだった。


 クリスは遠い目をする。

「違——」

「シエラ」


 シエラが静かに見る。

「上級調査員殿です」

 訂正だった。

 クリスは止まる。

「……上級調査員殿!」

 低い声だった。

 リリアは少し首を傾げる。

「?」

 意味は分かっていない。

 だが、楽しそうだった。


「ふふ、仲いいですね」

 クリスは何も言わない。

 もう諦めていた。


 ■中央街道・喫茶店

 シエラは資料を整理していた。

 完全に仕事だった。

「新設騎士団は、現時点で第十一騎士団だけで十分だと思われます」

「ああ」

「にも関わらず、庁舍さえ完成していない第十二騎士団が急いで追加された」


「つまり」

「最初からレオン団長を追加する前提だった可能性が高いです」

 静かな声だった。


 クリスは眉を寄せる。

「便利だからだろ」

「便利なだけなら、第七だけで止めます」

 即答だった。


「総長は」

「レオン団長を、もっと上へ置こうとしている」


 空気が少し変わる。

 クリスは黙る。

「……あいつ、辞めたいだけなんだけどな」

 小さく言う。


 シエラは静かに答える。

「だからです」

「欲がない人ほど、上は使いたがります」


 クリスは黙る。

 少しだけ、嫌な予感がした。

「クリスさん」

「……なんだよ」

「上級調査員殿です」

 まただった。

 

 クリスは空を見る。

 もう逆らえなかった。


 ……最近、自分の立場がよく分からなくなっていた。

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