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なぜ嬉しそうなんですか?

 ――帝国暦三二一年・夏中頃 東ロンバルディア帝国騎士団領 第七騎士団 本庁――


「違います」

 エリシアの声だった。

「書類提出順が逆です」

「申し訳ありません!!」

 カイルが勢いよく頭を下げる。


 その直後。

「ありがとうございます!!」

 嬉しそうだった。

 エリシアが止まる。


「……なぜ嬉しそうなんですか?」

 本気で分からなかった。


 ■第七騎士団 本庁・事務室

 カイルは真面目だった、かなり。

 書類も覚える。

 走る、確認もする。

 だが、反応だけがおかしい。


「違います」

「はい!!」

「そこではありません」

「ありがとうございます!!」

「声が大きいです」

「申し訳ありません!!」

 毎回これだった。


 一方、フィアナは普通だった。

 少しリリアへ寄りすぎるだけで。

「補給です……」

「今はいりませんよ?」

「必要です……」

 いつもの光景だった。


 ■第七騎士団 本庁・廊下

 その後。


 エリシアは珍しく、かなり疲れていた。


 そこへ。

「おう」

 クリスが来る。

「ひでぇ顔してんな」

「……クリス」


 エリシアが少し迷う。

「相談があります」

「嫌な予感しかしねぇ」

 かなり正しかった。


 ■第七騎士団 本庁・休憩室

「……つまり」

 クリスは話を聞く。


「怒るほど喜ぶのか?」

「そうです」

 エリシアは真顔だった。

「注意するほど感謝されます」

「怖ぇな……」

 クリスが素で引く。

「どう接すればいいのか分かりません」

 珍しく弱音だった。


 クリスは少し考える。

「多分あいつ」

「怒られる=見てもらえてる」

「みたいに思ってるんじゃねぇか?」

 エリシアが止まる。

「……承認欲求?」

「まあそんな感じだろ」


「面倒ですね」

「面倒だな」

 完全同意だった。


 ■休憩室


 エリシアが静かに言う。

「……シエラさんに聞いてみませんか?」


 クリスが固まる。

「やめろ」

 即答だった。

「絶対面倒になる」

「もう十分面倒です」

 正論だった。


 クリスは頭を押さえる。

「……あーもう」

「あいつ呼ぶのかよ……」


 ■数十分後

 シエラは来た。

 かなり静かに。


「興味深いですね」

 その時点で、クリスは嫌そうだった。


 ■第七騎士団 本庁・事務室

「カイル副官」

 シエラが呼ぶ。


「はい!!」

 やはり声が大きい。

「少し質問を」

「ありがとうございます!!」

「まだ何もしてません」

 シエラが即答する。


 クリスが遠い目をする。

「ほら始まった……」


 ■数分後

「なるほど」

 シエラは静かに頷く。

「承認欲求型ですね」

「怒られることで、自分が必要とされていると確認しています」


 エリシアが止まる。

「……そんな分析できるんですね」

「できます」

 シエラは普通に答える。

「特に上下関係への依存傾向が強いです」

「厳しく接する相手ほど、信頼対象になっています」


 一瞬、エリシアが黙る。

 少しだけ。

 納得してしまった。


「つまり」

 クリスが小さく聞く。

「お前に懐いてるってことだ」


 エリシアがかなり嫌そうな顔をした。

「困ります」

「もう懐いてるだろ」

 その直後。

「エリシア副官!!」

 遠く。

 カイルの声が響く。

「確認終わりました!!」

 かなり元気だった。


 エリシアは静かに目を閉じる。

「……疲れます」


 クリスが笑う。

「まあ頑張れ」

「他人事ですね」

「他人事だからな」

 最低だった。


 シエラは静かに資料を書いていた。

 かなり楽しそうだった。

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