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新任教育

 ――帝国暦三二一年・夏中頃 東ロンバルディア帝国騎士団領 第七騎士団 本庁――


 騒がしかった。

 とても騒がしかった。


「違います!!」

「それ第十騎士団の書類です!!」

「え?」

「第十二じゃないんですか!?」

「色見てください!!」

 新人・新任達が混乱していた。

 書類が飛ぶ、人も走る。


 誰かが怒られる。

「ありがとうございます!!」

 カイルだった。

 怒られていた。

 しかも笑顔、嬉しそうだった。

 一瞬で周囲が少し距離を取る。

 本人は気づいていない。


 ■第七騎士団 本庁・執務室

 レオンは静かに言った。

「……教育が必要だな」

 低い声だった。

 エリシアは頷く。


「新設ですので」

「基準統一前に、まず基本教育が必要かと」


 レオンは視線を向ける。

 教育対象は二人。

 カイル。

 フィアナ。


「……多い」

「二人ですが」

「多い」

 真顔だった。


 エリシアは少し視線を逸らす。

 否定できなかった。


 ■第七騎士団 本庁・訓練室

 教育は始まった。

 だが。

 開始十分で空気がおかしくなった。


「違います!!」

 エリシアの声が響く。

「報告書は時系列順です!!」

「申し訳ありません!!」

 カイルが勢いよく頭を下げる。

 その場で。

「素晴らしいご指導です……!!」

 なぜか感動していた。

 一瞬、空気が止まる。

 新人達が少し引いた。


 エリシアは頭を押さえる。

「……カイルさん!」

「はい!!」

「なぜ嬉しそうなのですか」

「厳しく指導されると、自分の未熟さを実感できるので!!」

「たいへん!嬉しいのです!!」


 エリシアは静かに目を閉じた。

「……ヴァルト」

 少し離れた場所で見ていたヴァルトが笑っている。

「面白いな」

「面白くありません」

 即答だった。


 ■第七騎士団 本庁・書庫

 一方、フィアナは静かに仕事を終わらせていた。

 整理、分類、新人用管理。

 全部終わっている。


 リリアが少し驚く。

「は、早いですね……」

 フィアナは静かに頷く。

「終わりましたので」


「……少しだけ、抱きしめてもいいですか?」


 リリアが固まる。

「えっ」

 少し顔が赤くなる。

「そ、その……」

「少しだけなら……」

 小さな声だった。

 一瞬、フィアナが嬉しそうに抱きしめる。


「癒やされます……」

 幸せそうだった。

 リリアは少し恥ずかしそうに困っている。

「ふ、ふわふわってよく言われます……」


 その少し離れた場所。

 親衛隊達が見ていた。

「……尊い」

「今日も姫様はお優しい……」

「浄化される……」

 うっとりしていた。


 一方、メリーは真顔だった。

「理解できません……」

 距離を取っていた。


 ■第七騎士団 本庁・廊下

 午後。


 さらに問題が起きた。

「申し訳ありません!!」

 新人騎士見習いが転ぶ。

 書類が舞う。

 廊下中に散らばった。


 また一瞬、静かになる。

 レオンはそれを見ていた。

 数秒間の沈黙。


「……帰りたい」

 ぽつりと言う。

 珍しかった。

 クリスが吹き出す。

「まだ昼だぞレオン!!」

「もう無理だ」

 真顔だった。


 その横で。

 リリアが小さく笑う。

「でも、少し賑やかですね」


 瞬間、レオンは止まる。

 廊下では、新人が慌て。

 カイルが怒られて喜び。

 フィアナがリリアへ抱きつき。

 親衛隊が浄化されていた。


 騒がしかったとても。

「……そうだな」

 小さく返す。


 けど少しだけ。

 悪くないとも思ってしまった。

 ……その分、仕事は増えていたが。

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