共同運用、開始です
――帝国暦三二一年・夏中頃 東ロンバルディア帝国騎士団領 第七騎士団 本庁――
騒がしかった。
いつもより、かなり。
「狭いですね……」
フィアナが小さく呟く。
「増えたからな」
クリスが遠い目をする。
第十二騎士団、新設直後。
当然、庁舎はまだ完成していなかった。
結果、第七騎士団本庁。
共同運用。
かなり人口密度が増えていた。
■第七騎士団 本庁・事務室
「こちら、第十二用です」
フィアナが書類棚を整理していく。
動きは早い。
かなり有能だった。
だが。
「……リリアさん」
リリアが止まる。
「はい?」
「少し休憩しませんか?」
真顔だった。
「え、まだ午前ですよ?」
「補給は重要です……」
意味が分からなかった。
「カイル副官」
エリシアが静かに呼ぶ。
「書類提出順が逆です」
一瞬、カイルが止まる。
「も、申し訳ありません!!」
かなり勢いよく頭を下げる。
そして。
「ありがとうございます……!!」
嬉しそうだった。
エリシアが少し黙る。
最近、彼に怒りづらかった。
■第七騎士団 本庁・執務室
レオンは資料を見ていた。
「……増えたな」
「増やしたんだよお前が」
クリスが即答する。
執務室内。
第七。
第十二。
書類量も、人も増えていた。
だが、以前ほど混乱していない。
レオンが少し止まる。
「……回っているな」
「まあな」
クリスは棚を見る。
「フィアナがだいぶ処理してる」
「カイルも、まあ……」
遠く。
「申し訳ありません!!」
「ありがとうございます!!」
また聞こえた。
「……独特だが」
クリスが苦笑する。
■第七騎士団 本庁・廊下
リリアは資料を運んでいた。
その後ろ。
フィアナが付いてくる。
「……重くないですか?」
「大丈夫ですよ?」
「持ちます……」
「だ、大丈夫ですって」
少し押し問答になる。
これを親衛隊達が静かに見ていた。
「姫様がお困りだ」
「だが悪意はない」
「難しい……」
かなり真面目に悩んでいた。
■第七騎士団 本庁・食堂
昼。
人数が増えた分。
食堂も騒がしい。
「第十二って、まだできたばっかなんだろ?」
クリスが聞く。
カイルは頷く。
「は、はい……」
「まだ慣れなくて……」
エリシアが静かに言う。
「慣れてください」
「はい!!」
「ありがとうございます!!」
やはり嬉しそうだった。
クリスが小さく呟く。
「その反応、未だに慣れねぇ……」
一方、フィアナはリリアを見ていた。
かなり見ていた。
「……リリアさん」
「はい?」
「補給、足りてますか?」
「た、多分……?」
かなり曖昧だった。
■第七騎士団 本庁・夕方
仕事終わり。
レオンは窓の外を見る。
建設途中の少し遠い第十二庁舎。
少しずつ形になっているようだった。
「完成したら静かになるか?」
一瞬、クリスが少し考える。
「……どうだろうな」
その直後。
「リリアさん、補給を」
「少しだけお世話を……」
騒がしかった。
かなり、クリスが遠い目をする。
「無理かもしれん」
レオンは少しだけ目を閉じる。
頭は痛かった。
だが、以前より。
少しだけ空気は柔らかかった。




