再編成
――帝国暦三二一年・夏初め 東ロンバルディア帝国騎士団領 総庁――
人事通達は、一斉に出された。
第二騎士団。
第十一騎士団。
第十二騎士団。
三つの騎士団に、新たな団長が配置される。
第二騎士団団長。
パラ=サイテン。
第十一騎士団団長。
ノイン・ヴァルツェン。
第十二騎士団団長。
レオンハルト・ヴァイス。
そして。
第十一、第十二騎士団は、新設された。
■東ロンバルディア帝国騎士団領 第十一騎士団 本部
新設されたばかりの第十一騎士団。
だが、内部は妙に静かだった。
ノインは机に座っている。
その横。
「団長、こちらを」
新たに配属された副官が書類を差し出す。
「……置いておけ」
短い返答。
さらに。
「書記官側の整理、終わりました」
眼鏡の女性書記官が静かに言う。
「新兵名簿も更新済みです」
ノインは頷く。
「早いな」
「団長が無駄を嫌うと聞きましたので」
静かな返答だった。
ノインは何も言わない。
だが。
少しだけ、仕事が早かった。
■東ロンバルディア帝国騎士団領 第十二騎士団 本部予定地
建物はまだ未完成だった。
正面では職人が作業している。
レオンはそれを見ていた。
「……未完成ではないか」
低い声だった。
エリシアが静かに答える。
「新設ですので」
「そういうものかと」
レオンは黙る。
嫌そうだった。
そこで
「だ、団長!!」
慌てた声。
一瞬で振り向く。
そこには、若い男が立っていた。
「第十二騎士団副官任命されました!!」
「カイル・レヴェルトです!!」
勢いが凄かった。
レオンは見る。
真面目そうだった。
苦労しそうでもあった。
「……よろしく頼む」
静かに言う。
カイルの表情が輝いた。
「はい!!」
「ありがとうございます!!」
なぜか感激していた。
少し怖かった。
さらに後ろ。
「失礼します」
静かな女性の声。
書類を抱えた女性が頭を下げる。
「第十二騎士団書記官任命、フィアナ・ルークスです」
落ち着いていた。
かなり有能そうだった。
その視線が。
ふと、リリアへ向き、止まる。
「……可愛い」
フィアナが近づく。
リリアが少し下がる。
「フィ、フィアナさん?」
抱きついた。
「ふわふわです……」
幸せそうだった。
リリアは困ったように笑う。
「え、えっと……」
少しだけ困っている。
だが、拒否はしない。
一方、
「次こっち来たら叩きますよ」
メリーは真顔だった。
フィアナが止まる。
「メリーさんは警戒心が強いですね……」
「当たり前です」
即答だった。
レオンは黙る。
頭痛がしそうだった。
■第七騎士団 本庁
第十二騎士団は新設。
だが、本部施設まで新設する余裕はない。
そのため当面は。
第七騎士団本庁を共同使用する形となった。
結果。
「人が増えていますね」
エリシアが静かに言う。
廊下を新人の騎士見習いが走る。
別騎士団の書類が飛ぶ。
誰かが迷う。
誰かが怒られる。
「ありがとうございます!!」
カイルだった。
怒られていた。
しかも嬉しそうだった。
周囲が少し引く。
カイルはさらに頭を下げる。
「もっとご指導いただければ!!」
距離を取られた。
だが、本人は少し嬉しそうだった。
レオンは天井を見る。
「……増えた」
低い声だった。
人も仕事も。
問題児も。
全部だった。
……苦労は、まだ始まったばかりだった。




