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聞いていない話

――帝国暦三二一年・夏初め 東ロンバルディア帝国騎士団領 総庁――

 

 レオンは総長室へ入る。


 机の向こう。

 総長ヴァルド・エイゼンは書類を読んでいた。

「ノイン副団長が受諾しました」

 レオンは簡潔に報告する。


 総長が顔を上げる。

「そうか」

 短い。

「なら問題ないな」


 レオンは頷く。

「第十一騎士団については、これで——」

「第十二騎士団も進める」

 一瞬、レオンが止まる。

「……第十二?」

 総長が書類をめくる。

「お前だ」

 当然のように言う。

「新設第十二騎士団団長」


「……聞いていない」

 低い声だった。

 総長は視線を上げる。

「言おうとした」


「それがノインの件を聞いた途端、お前が飛び出していった」

 静かに言う。

「そちらのミスだ」


 レオンは止まる。

 反論できない。


「まあいい」

「正式決定は一旦保留にする」

「一度戻れ」


 レオンは小さく息を吐く。

「……了解した」

 疲れた声だった。


 ■第七騎士団 本庁・執務室

 戻ってきたレオンを見て。

 エリシアが少しだけ眉を寄せた。

「何かありましたか」


 レオンは椅子へ座る。

「第十二騎士団長の話だ」


 エリシアは止まる。

「……正式に?」

「まだ候補らしい」


「絶対に断る」

 即答だった。

 エリシアは少し考える。

「新設騎士団ですので」


「既存騎士団より負担は大きいかと」

「なおさらだ」

 レオンは言う。

「断る理由が増えた」


 エリシアは静かに頷く。

「……負担は、かなり増えるかと」

 珍しく、否定しなかった。


 その時。

 扉が叩かれる。

「統括管理官、第七第十騎士団団長閣下」

 伝令だった。

「総長がお呼びです」

 直ぐ様、レオンは嫌そうな顔をした。


 ■総庁・総長室

 戻ってきたレオンを見て。

 総長は少しだけ笑った。

「そんな顔をするな」

「まだ決まっていない」


 レオンは黙る。

 信用していない顔だった。

「最近、メリーが早く帰っているな」

 一瞬の間。

 レオンが止まる。

 総長は小さく笑う。

「余裕ができたということだな」

 静かに言い切る。

 レオンは露骨に嫌そうな顔をした。


「……あれは」

 反論しかける。

 動きか止まる。

 総長は続ける。

「それに」


「南の動きが増えている」

 空気が変わった。

 レオンの目が細くなる。

「サルヴァディア王国ですか?」

「国境が騒がしい」

 総長は言う。

「まだ大事ではない」

「だが、騎士団の新増設は必要だ」


 レオンは黙る。

 理解はしていた。

 理解したくはないだけで。

「……暫定です」


「正式決定ではない」

 小さく言う。

「現時点では、受けます」

 疲れた声だった。

 総長は頷く。

「それでいい」


 レオンは踵を返す。

 そして。

「……増やしすぎだ」

 珍しかった。

 明確な、恨み言だった。


 総長は少しだけ笑う。

「足りなくなるよりはいい」

 レオンは何も言わない。

 ただ、扉を閉めた。

 ……仕事だけが、増えていく。

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