それはどこで知るものだ
――帝国暦三二一年・春初め第七騎士団 本庁・執務室――昼過ぎ。
書類の音が続く中。
「エリシア」
レオンが呼ぶ。
「はい」
「騎士領の外についての資料が欲しい」
短く言う。
エリシアの手が止まる。
「……外、ですか」
静かに聞き返す。
「地図や記録だ」
続ける。
「どうすれば手に入る」
一瞬の沈黙。
エリシアは考える。
少しだけ、間を置く。
「……詳細な地図は」
ゆっくり言う。
「高価です」
「また、一部は機密扱いとなります」
淡々と。
レオンは頷く。
「そうか」
それだけだった。
エリシアは続ける。
「ですが」
「一般向けのものは、書籍を扱う店で入手可能です」
「資料については」
「地理院、あるいは総庁の資料室で閲覧できます」
はっきりと。
レオンが考える。
ほんの少しだけ。
「見に行くか」
短く言う。
その時。
「それでしたら」
イリスだった。
いつの間にか、近くにいる。
「私もご一緒してよろしいでしょうか」
穏やかに言う。
エリシアがそちらを見る。
嫌な予感しかしない。
レオンは頷く。
「構わない」
即答だった。
エリシアが諦めから目を閉じる。
理解していた。
また振り回されることを。
「……では」
静かに言う。
「書籍店から向かいましょう」
現実的な順番だった。
イリスが微笑む。
「良い本があるとよいですね」
レオンは頷く。
「勉強になる」
短く言う。
一瞬の静寂。
三人は立ち上がる。
そのまま、執務室を出ていく。
それを見ていたミナが呟く。
「……また?」
小さく。
ダリオが肩をすくめる。
「まただな」
クリスが顔をしかめる。
「やめろ」
低く言う。
一瞬。
誰もやめなかった。
その様子を。
別の場所から見ている者がいた。
リリアだった。
少しだけ、考える。
「……三人で何を」
小さく呟く。
そして。
静かに歩き出す。
一方の窓際。
メリエラが視線を上げる。
一瞬だけ、三人の背を見る。
「……なるほど」
小さく呟き席を立つ。
迷いはなかった。
クリスがそれに気づく。
「……おい」
だが、止めない。
止められない。
クリスは頭を抱える。
「……なんで増えるんだよ」
誰にも届かない声だった。
五人が去り、執務室は静かに戻る。
ただ外では、また別の話が、始まろうとしていた。




