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[二部九章]救出作戦(作戦ってなんだっけ)

ロシア語混ざりますけどなんかこう上手くルビ入らなかったので全部日本語表記で行きます。


『さて。それじゃあ行こっか。』


そう言って、夜中に文人の手を取って窓から抜け出す。

目くらましとして内亜に私たちの代わりを務めてもらうけど、多分だけど未希姉の事だから見には来ないと思う。

どっちかって言うと万が一ノワールが訪れてきた場合に対しての対応だ。


「葵、寒くない?ちゃんと着込んでる?」


そう問われるけれど、正直私は寒暖差をあまり感じない。

まぁ、色んな生物の特性を持っているからなんだろうけど。


『寒さは感じないかな。大丈夫。』


そう答えて、先日出会った少年の気配のする方へと向かう。

どうやら、路地裏でひっそりと隠れているらしい。


『この先にいるみたいだけど。行くよ。』


「う、うん。」


少しだけ警戒した様子の文人。けれど、悪意なんて気配からは感じない。だから、私はさっさとその少年のいるであろう路地へと向かう。


「‥‥‥‥‥‥!!?」


早速見つけた少年は、私の顔を見て心底驚いたように目を見開く。

そして、何度か咳き込んでから、声を発する。


「‥‥‥‥‥‥どう、して?」


ロシア語。‥‥‥‥私は正直何処の国の言葉でも魔術でちょいちょいっと何とか出来るけれど、文人の方はそうはいかない。


「え、っと‥‥‥?」


首をかしげて私を見る文人。


『ロシア語。北方の子だったみたい。ちょっと待ってね。』


とてとてと、何も武器を持っていないことをアピールしてから、近寄ろうとすると、怯えたように身を縮こまらせる少年。


『‥‥‥‥大丈夫。』


ロシア語で語りかけると、少しだけ警戒心が解けたのか、それとも驚いたのか。ちょっとだけビクつきながらもこちらの様子を窺ってくる少年。まるで子犬みたいだなと思う。


「だめ、あぶないから、きちゃだめ、」


そう言って逃げようとする少年に、私はそっと微笑みかける。

大丈夫だから。と。

怯える少年に、ゆっくりと近づく。

アザトースの義足の術式が発動する気配はない。やっぱり、性質だけ埋め込まれて、使い方は教えられず、私が近づいた時に勝手に作動するように仕組まれていたみたいだ。


『もう、大丈夫。‥‥‥‥私は葵。貴方は?』


そう問いかけると、怯えながらもこちらの様子を窺ってから小さく呟く。


「‥‥‥‥‥イヴァン。」


『そっか。イヴァン。怖い思いしたね。大丈夫。もう、平気だよ。』


そう言ってそっと手を取ると、ボロボロと涙をこぼすイヴァン。

けれど、次の瞬間が大変だった。


「っ、葵!!!」


文人の叫び声が聞こえると同時に、いくつもの義足が展開される。


(あぁ、制御できていないんだ。そりゃ、痛いよね。)


『文人、ごめん。』


そう言って、私はぎゅっとイヴァンを抱きしめる。

義足の何本かが私に襲い掛かる。正直、痛いし熱い。けど、あの時程じゃない。


『イヴァン。落ち着いて。深呼吸、深呼吸。』


そう言いながらも優しくイヴァンの頭を撫でる。義足は痛いけど、ちょっとの間、痛覚を遮断して、イヴァンにそっと私の魔力を流し込む。


「!??」


戸惑った様子のイヴァンに、私は安心させるように微笑みかけて、魔力の通し方を、実際に魔力を流し込みながら教え込む。私の魔力の中には、魔王アザトースの魔力だって混ざっている。だから、きっと違和感は少なくって済むはず。


『力、制御できなくって怖かったよね。ゆっくり、ゆっくりで良いから、真似してみて?』


「ま、ね‥‥‥‥うん、っ」


私の魔力を通して少し落ち着いたのか、先より落ち着いた様子で、イヴァン自身が魔力の流れに意識を向けるのが分かった。それと同時に、暴走しかけて展開されていた義足が治まっていく。


(よし、っと、わっ!?)


安心しかけた瞬間、身体がぐらりと揺れる。咄嗟に手をついたけれど、その手は血まみれで、ちょっとまずったかもしれないとちらりと後ろを振り返る。


「葵!!何やってんのさ!!」


(あ、めっちゃ怒ってる‥‥‥‥って事は‥‥‥)


そぅっとイヴァンの様子を窺うと、案の定というか、私の様子を見て慌てているようだった。


「怪我、怪我いっぱい、させちゃった、やだ、痛いのやだよね、ごめん、ごめんなさい‥‥‥‥っ!!」


ぼろぼろと涙を流すイヴァン。魔力の方は落ち着いているからもうイヴァン自身は痛くないだろうけど、問題は私の方だ。‥‥‥‥‥正直、イヴァンの事に集中しすぎて痛覚を斬っていることすら忘れかけていたくらいだ。ちょっと、痛覚を戻すのが怖い。というか、背後からの視線が怖い。


『えー、うん、大丈夫、イヴァン、落ちついて?もう怖くない。大丈夫。ね?』


そう言いながら立とうとするが、力が入らない。


「あー、もうっ!!葵の馬鹿!!!!!」


そう言いながら、文人が駆け寄ってきて抱きかかえあげられる。


『え、文人、ちょ、イヴァン、イヴァンの通訳!!』


「勘違いしてるみたいだけど多少は話せるよ、僕だって。」


‥‥‥‥‥‥‥そう、怒った顔をしたまま流暢なロシア語で話す文人。


「葵、大丈夫??」


ぐすぐすと泣きべそをかきながら見上げてくるイヴァンに対して、文人はちょっと怒ったような顔を一瞬したけれど、ため息をついてから彼に声をかける。


「彼女は大丈夫。イヴァン、僕は文人。ついてこれる?」


すると、こくりと頷いてとてとてとついてくるイヴァン。

子犬みたいで可愛いなぁ、なんて思っていると、視線が突き刺さるような感覚がしたのでちらりと私を抱える文人の方を見る。


「葵。未希さんのところ、直行ね。」


『や!た、大したことは!!』


「自分、見てみる?傷だらけだよ。‥‥‥‥‥‥‥後でお説教ね。」


にっこりと微笑まれた。‥‥‥‥‥今までで一番怖いかもしれない。

血まみれの私を平然と抱える文人もどうかと思うけれど。そのあとをちょこちょことついてくるイヴァンが可愛らしい。

とりあえず、ちょっと眠って現実逃避をすることにしよう。






現実逃避( ˘ω˘)スヤァ

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