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[二部九章]絡繰人形師と悪魔の王

ちょいちょいっとしたお話です。

この二人の掛け合いも結構個人的に楽しかったりします。


『伽羅繰様、こちら部品完成いたしましたが如何でしょうか。』


段々と機械技術師、機賀 伽羅繰様のところでの生活が根付き始めた頃。

私は今日も指示されたとおりに部品を組み立てて伽羅繰様に差し出すのです。


「おー、流石、段々手馴れてきてんじゃん。」


そう言いながら嬉しそうにその部品を受け取る伽羅繰様。

このパーツは何に使われるのだろうかと見ていると、まるで魔法のようにささっと手元にあるパーツと共に組み立てを行っていく。

出来上がったのは、小さな鳥のような絡繰り仕掛けの人形だった。


『これは‥‥‥‥‥もしや、伝書鳩のようなものでしょうか?』


そう問いかけると、嬉しそうににーっと笑う伽羅繰様。

このお方と過ごして少しの時間が経ちますが、如何せん彼は機械関連の話になると非常に少年のような無邪気な笑みを浮かべることが分かってきた。


(初めは怖がられてしまい、どうしたものかと思ったものですが‥‥‥まぁ、このような時間も時には必要でしょう。ふふ、人間で遊ぶ以外に、このような楽しみがあったとは。悪魔である私が人間から学ぶ‥‥‥‥前までは想像もつきませんでしたが、悪くないものですね。)


そう思うこと自体、自分にも変化が起きているのだと自覚をする。

が、存外悪い変化ではないのかもしれない。


(もしかしたら、これが、伽羅繰様の仰った“人間らしさ”なのでしょうかね。)


勿論、変化は自分だけに訪れるものではなく。

ぐぅ~、という可愛らしい音と共に、伽羅繰様が手を止める。


「ノワール、今何時?」


『丁度正午を過ぎたところです。ふふ、勿論、食事の準備は万端ですよ。』


「いーじゃん、食おうぜ。腹減った。」


そう言って手を止めて席に着く伽羅繰様。

先に頼まれたパーツを組み立てる前に用意しておいた食事を運び込むと、今日も美味しそうに食事を召し上がる伽羅繰様。


そう。変化は私だけに起きるものではありませんでした。

無限ともいえる時間、寝食を忘れて作業に没頭していた伽羅繰様が、“おなか減った”や、“眠い”などと仰るようになったのです。

あぁ、勿論、私も共に同じような生活をさせていただいておりますよ。存外、面白いものですね。

本来であれば不必要なものだというのに、娯楽として寝食が成り立つとは。

昔の自分自身に教えてみたら面白いかもしれません‥‥‥‥‥まぁ、信じないでしょうけれど。


『あぁ、伽羅繰様、お手を。』


「ん?あ、わっすれてた。」


そう言って差し出された手についた汚れを、魔術で綺麗さっぱり落として差し上げると、満足げな表情で伽羅繰様は私が席に着くのを待つ。


『それでは。』


「いただきます、っと」


『はい。』


歓談しながら(とはいえ内容は機械の事についてばかりですが。)、食事を共にするのにも慣れてきた。


「んで?お前のお仲間からの連絡はまだないってわけ?」


『そうですね。まだありません。‥‥‥‥そう言えば、一点提案があるのですが。』


「いいぜ?」


『まだ何も申し上げておりませんが‥‥‥‥もしや心当たりがおありで?』


とある提案をしようと、ここ数日機会を見計らっていたのだが、その辺りの勘はやはりというか動物的に鋭いのか、内容を話す前に承諾の返事を得てしまった。

どうしたものかと考えていると、伽羅繰様の方から話をされる。


「どーせ、自分たちのところに来ないかって誘いだろ?今の状態と同じように実験ができる場所があって、お前に時折手伝ってもらえるんだったら別に移住くらいはしてやってもいい。お前にはそれだけ色々やってもらったしな。」


本当に、笑う時は無邪気な笑みを浮かべられるお方だ。

最近では、その笑顔に対して何かをして差し上げたいと思う機会が増えてきた。

だからこそというか、それを抜きにしてもこれだけの腕前を持つ職人をスカウトしないのもどうかと思ったのです。伽羅繰様は、努力の天才とでも呼ぶべきお方ですから。


『そうですね。賃金についてはある程度私の裁量で決められる部分は最大限あなたに有利なように致しましょう。そして場所ですが。この家、そのまま私の管理するバーと入り口を繋いでしまってもよろしいでしょうか?私の管理するバー自体が移動式と言いますか、様々な国の様々なドアと繋いでおりますので、伽羅繰様からすると窓の外の景色が移動によって変化すること、玄関を開けたら私の管理しているバーの蔵に繋がること‥‥‥‥くらいでしょうか。』


「へぇ、何それ、ちょっと面白そうじゃん。まぁ俺ってば普通に外に出る事なんか無いからその辺りは問題ないぜ?むしろちょっと外に出たらお前がいるなら文句なしだ。」


承諾の理由の中に自分の存在が含まれていることが、少々くすぐったいですが。

けれど、心の底からホッとして、私は軽く陣を空中に描いてから食事の続きを始めるのです。


「ん?今のでもうお終いか?仕事が早いってか、もっと大仰なものになるもんだと思ってたぜ。」


『ふふ。私が悪魔の王であることはお忘れなきよう。この程度でしたら指一本動けば簡単に空間を繋ぐことができます。』


「へぇ、結構便利なんだな、お前。」


『そのお言葉、とても嬉しく思います。‥‥‥ふふ、不思議なものですね。私がここまで人間と密接に関わることがあろうとは。本当に、いろいろと教えてくださってありがとうございます。伽羅繰様。』





さて、多分もうお分かりだと思いますが、次のお話から集合が始まります。

ちょろっとだけノワールさんと伽羅繰さんのお話が挟まるかな?ってくらいですね。

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