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[二部九章]思いもよらない凶報

さて、前回の続きです。


『んで?キミは今後どうするんだい?ティナ。』


葵と似ているだけの別人、ティナに対して僕はそう問いかける。

こんなところに来たのはきっと、身に覚えがないはずなのによく見知ったような魔力の持ち主、つまり僕がいたから来たっていうだけなんだろう。少ししか話をしていないけれど、彼女に今居場所がないことくらいは想像できる。


「え、えっと‥‥‥‥葵に貰ったもの、たくさんありますから。だから、その一つ一つを回ることくらいしか‥‥‥まぁ、当てのない旅、みたいな感じです。幸い、この身体は食事や休息を必要としていませんから、何か好戦的な異形にでも会わなければ問題なさそうです。」


うん、やっぱり勘が当たった。少しだけ考えてから、僕は彼女へと提案をしてみる。


『じゃあ、良かったら僕と一緒に行かない?もしかしたら招集があるかもしれないけど、君の事は僕から見てて何の害悪にもなりそうにないからね。それに、僕もちょっと一人でいるのには向かなさそうだ。こういう掃き溜めみたいなところでぬくぬくと居座ってしまうから。』


そう言うと、ティナは薄いミントの瞳を真ん丸くさせてからこくこくと頷いた。


「い、良いんですか?それなら、是非一緒に行きたいです。その、何かお役に立てるかもしれないですし。」


『んー?どっちかって言うと世間知らずの君を僕が手助けする程度じゃない?ま、良いけどさ。』


そう意地悪く言ってみると、あからさまにしゅんとするティナ。

こんな反応、葵じゃ見られないからちょっと新鮮で、思わず笑ってしまった。


「もう!私は真剣なんですよ!?だって、内亜さんはよくっても、他の人は嫌がるかもしれないじゃないですか。」


『その時はその時。だけど、“君の記憶の中の葵”の仲間たちが、葵の選択によって生き残った君をどうこうすると思うかい?』


そう問いかけてみると、少し考えてから首を横に振るティナ。


「いいえ。むしろ、皆さん私の事をちゃんと“ティナ”としてみてくださると思います。‥‥‥内心がどうであれ。」


おっと。そこまで分かってしまうのはこう、ちょっと損な気もするけれど、仕方ない。特にノワールなんかは内心じゃあちょっとティナに対して複雑な感情を抱くことだろう。だってあいつまだ葵の事全部知ってる訳じゃ無いし。


『うんうん、でもま、そこまで分かっているならいいさ。じゃあ、行こうか?』


そう言って手を差し出してみると、おずおずと手を乗せてくるティナ。


「よろしく、お願いします。」


『あ、その顔で敬語はもう無しね、ちょっと色々複雑。』


「え、っと‥‥‥‥‥じゃあ、よろしく?」


『うん。よろしく。』


そう言ってちょこんと握手をしてから、とぷんとティナの影の中に潜む。


「え、えぇぇぇぇぇ!?」


戸惑ったようにその場でとたとたと足踏みをするティナ。


『ほらほら、葵の記憶の中にあったでしょ。君は君自身の能力で空飛べるんだろうから僕が手を貸すのは対人関係だけだと思っておいてよ。契約しているのはあくまで葵であってキミじゃあないからね。でもこうやって影に潜めるあたり、半分くらいは葵判定受けてるんだろうなぁ。』


「も、もう!急にやらないで下さ‥‥‥‥やらないでよ!記憶にあっても体験するのは初めてなんだから!」


『やーいやーい初体験ー』


「変な言い方も無し!!もう!葵はこんなおかしな存在とよく一緒にずっといられたよね‥‥‥本当。」


おかしな存在ってなんだ、おかしな存在って。


『仕方ないじゃん。影の中の方がぬくぬくできるから楽なんだもん。ほら、どこ行くのさ。』


そう言ってティナをからかっていると、“何か”が飛んでくる気配がして、つい身構える。

ティナもその気配に気が付いたのか、戸惑ったように俺の方を見る(下向いてるだけだけどね。)


『多分誰かからの連絡だ。ちょっとだけ待って、さん、に、いち、はい、腕上げて。』


そう指示を出すと、迷いなく従うティナ。ただ、ちょっと怖いのか瞳を閉じているのが少し面白い。


「えっと‥‥‥‥‥羽?と、手紙です。どうしましょう。」


『んー?羽?真っ白ってことは多分天使だと思う。‥‥‥‥んー、あ、分かったかもしれない。中身診て良いから開けてよ、無いとは思うけど万が一のこと考えたら僕それに触れたらダメなヤツかもしれないし。』


天使と言って知り合いって言ったらもう一人しかいない。葵の姉の未希って子だ。

まぁ、こっちが悪魔であることを把握した上での連絡手段だろうから、もうその羽はただの飾りのようなものになっているはずだけれど、万が一魔力が残っていたらちょっとした火傷位はしそうだ。


「えっと‥‥‥‥読みます、前略、内亜くんへ‥‥‥‥‥‥ッ!!?」


手紙を読み始めた瞬間に顔色が真っ青になるティナ。


『え、何、何かあったの?』


警戒の色を強めて、ティナに問いかけてみる。

すると、ティナはぼろぼろと涙をこぼしながら言った。


「葵さんが、刺客に襲われて怪我をしたと‥‥‥‥私が、私が彼女に出会ってしまったから、きっと天上の誰かに見つかってしまったんだと思います‥‥‥!ごめんなさい、本当に、ごめんなさい!!」


手紙がくしゃくしゃになるくらいに強く握りしめて、本気で悔しそうに涙を流すティナ。


『‥‥‥‥‥‥はっきり言おう。君がトリガーになったのはきっと事実だ。だけど、それは君自身が望んだことじゃない。だったら君が悔しがる必要なんかないんだ。無駄な涙を流している位なら、場所を教えておくれ。どうせ、書いてあるんだろう。』


「は‥‥‥‥う、うん‥‥‥‥アカイム街、寿図書館‥‥‥‥?って書いてあります。」


『‥‥‥‥‥ふぅ。未希から連絡来たってことは葵はまだ気を失ってるか動けない状態だろうね、さてと、ティナ。選択しな。一緒に来るか、来ないか。責任とかそんなのはどうでもいいから、君自身がどうしたいかで選んでおくれよ。』


そう言うと、ぐっとこぶしを握り締めて、ティナは答える。


「‥‥‥‥‥‥行きます。私にも、何かできることがあるかもしれないから。」


‥‥‥‥‥その意志の強さは、葵と本当に似ているなぁ、なんて思いはちょっとしまっておくけれど。

僕だって、自分と向き合う以外にも少しくらいは掃き溜めでぬくぬくする以外のことだってしてたんだ。さて、それらを見せつけるためにも、向かうのは早い方がいい。


『じゃあ行こうか。ティナ。』


「うん。」


そうして、少しだけ歪な組み合わせの二人は、集合場所へと向かう。





同じようで違う相方(一時的)ですね。

さて、ブックマーク登録者様や評価をつけてくださっている方々。いつもこの小説を読んでくださっている皆様に今日も最大の感謝を。

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