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1573 ジュニアの冒険:戦うことでしか

 犬たちの試練、終了!


 僕はポチのタックルにも吹っ飛ばされることなく、受け止めきった。

 ここまで犬たちとハグし合って、すっかり信頼関係も強化されたに違いない。

 ……犬臭い。


「ぬうう……兄貴め、やはり侮れん」


 ふぁっはっはっはっは、見たかノリトよ。

 僕の我が身を張ったハグ攻撃で、犬たちからの信頼は爆上がり。


 きっと僕のことを父さんに次ぐ群れの超リーダーと認めてもらえたんではないですか!?


「はーい、では犬さんたちはお役目完了なので、速やかに農場へ戻ってくださいね」

「ワンワンワンワンワンワン!」


 ベレナさんの指示に応えてイッヌゥたちは、自分たちが出てきた扉の向こうへと駆け戻っていった。

 しっかり躾の行き届いた、一糸乱れぬ隊列を描いての帰宅だった。


 その見事さに僕とノリト、同じことを思った。


「「ベレナさんの方が群れのリーダーしてない?」」


 と。


 急に全身に虚脱感が襲うのだった。


「さあ、気は抜けませんよ。次なる試練に突入です」


 と唱えるベレナさん。


 いや、アナタまだ進行役をなさるんです?


「次なる試練の担当者は……この方です!!」


 ウィィイイイイイイイイイイ……!

 なんだ? なんだなんだこの駆動音は?

 またどこかの扉が開くのかと思ったら、何と開いたのは天井だった。


 天井!


「「マジでぇえええええええッッ!?」」


 こうなったらノリトと同時に驚愕絶叫するしかない。

 どれだけのギミックをこの天空オークボ城に詰め込んだんだ。


 天井が開いたということは……!

 あのセリフを、今使う時!


「気を付け……!」

「気を付けろ! 上からくるぞ!」


 ノリトに先に言われてしまった。


 そして予想通りに開けた天井から、上より下へと降臨せし翼あるモノ。


 真っ白は一対の翼を羽ばたかせて降りし、そのモノの正体は……。


「に……!?」


 に……!


「「ニワトリッ!?」」


 またもノリトとの声が重なってしまった。


 だってニワトリが下りてくるんだもん。

 バタバタと忙しなく羽ばたいて、なんとか着地できる落下速度で降りて……落ちてくるニワトリ。


 大変だなあ可哀想に。

 ニワトリの翼は、空を飛ぶようにはできていないんだが。


「いや、この子が飛んで登場したいと希望するものですから」


 ニワトリが希望!?

 何を言っている!?


「それでは紹介しましょう! 天空オークボ城の次なる刺客! その名はヨッシャモ!!」


 クケーッと雄々しい鳴き声を放つニワトリ……いやヨッシャモ?

 名乗り声のつもりだろうか?


 ヨッシャモと言うのはヤツの種族名。

 御多分に漏れず、ヤツもニワトリではなく、ニワトリ型のモンスターだ。


 体長こそ通常のニワトリと同程度だが侮るなかれ。

 非常に好戦的な性格で、迂闊に近寄ろうものならそれだけで攻撃対象となる。


 最大の武器は脚。

 そのつま先の尖った爪だ。


 本来鳥類が、獲物を狩るために進化させた鋭く凶悪な脚。

 さらには、地上を元気に駆け回るニワトリには相応の脚力があって、そこから繰り出されるキックも高威力だ。


 まともにぶつかれば人間だって無事では済まない。

 ニワトリ型モンスターであるヨッシャモならなおさら。


 ベニヤ板ならいともたやすく貫通するぐらいのキック力をこの怪鳥は持っている。


 実に恐ろしく……危険なヤツだ。


「コイツが次の試練だなんて……!?」


 僕もノリトも、滴る脂汗を抑えられない。


 なんてったってヨッシャモは、僕らの子ども時代の恐怖の的だった。

 農場における最高の恐怖だった。


 何故って、ヨッシャモ以上の強者は農場にはいくらでもいた。

 先生にヴィール、オークボさんにゴブ吉さん、他オークゴブリンの皆々さん。レタスレートおねえさんにホルコスフォンおねえさん、母さんに魔女の皆さん。バティさんベレナさん他、他、他……。

 普通にヨッシャモより強い。


 しかしながら上記の人々には皆、自制心がある、良識がある、『幼い子供を傷つけてはいけない』という優しさがある。


 対してそうした思いやりの類が一切ないのがヨッシャモだ。


 ヤツらは戦闘本能だけで生きている。

 近づく者は老若男女、誰であろうと好敵手。『始め』の挨拶なしで蹴ってくる、まるでグラップラーのように。


 なので農場住みの人々は、まだ危険と安全を見分けられない子どもへ注意を払って『あの鳥に近づいちゃダメよ』と口酸っぱく言い含められた。


 僕もそうだったし、ノリトもそうだ。


 やがて僕らは成長して、所詮蹴り技が痛いだけの鳥ぐらいに脅かされることもなくなったけれど、それでも下の弟妹や、オークボさんやゴブ吉さんの子どもたちには一際注意を払っている。

 かつて自分が守ってもらった時と同じように。


『じゃあ、そんな危険な鳥を農場内に放つなよ』と思われるかもしれない。

 たしかに、それが一番安全な方法だ。


 しかし歯がゆいことに、それができない理由があった。

 あの凶悪な鳥は、農場に必要不可欠な存在だった。


 それはそれとして……。


「まーたアニマル系列かよ」


 ノリトがうんざりしたように言った。

 たしかに僕もそう思う。


 金剛カイコと来て、ポチたちイッヌゥ。

 それに続いてニワトリのヨッシャモときたものだ。


 さっきから人間じゃないモノたちのオンパレードではないか。

 こんなに種族問わずに繁栄している……それが農場か。


「それで、コイツはどうやってオレたちのことを試すんだ? 翻訳機をチョロッと……」


 翻訳機!? 一体どういうことだノリト!?


「これが、畜産業界の援けとなるためにオレが作った新発明『バベルに反抗期くんZ』だ! これさえあれば家畜の意意思疎通ができるのさ!」


 お前、僕より便利キャラになってない!?


 と言うかそんな便利な道具があるなら、金剛カイコやポチたちに使えばよかったのでは!?


「アイツらは素直でいいヤツだから、使わなくたって特に問題ないだろう? それに言葉が通じると却って可愛さが半減する場合があるし」


 う、うむ……。

 たしかに?


「対してこのクソ鳥なら、可愛さの欠片もねえから問題ないだろう。むしろ何考えているかわからない方が問題ある」


 たしかにぃ……!?


「というわけでクソ鳥! お前が何を考えているか、白日の下に晒しやがれぇ!」


 掛け声と共に、ノリトが手にした翻訳機(?)のスイッチが押される。


 そして『コケッコー、コケッコー』という鳴き声を通して翻訳機が告げた言葉は……。


『……戦い』


 は?


『戦い、我ら軍鶏の血筋は戦うことでしか己を立証できない。ゆえにお前たちにもそれを求める。さあ己を示したいのなら戦いで、勝負によって示せ』


 結局そうなるんかい!?


 バティさんベレナさんからせっかく平和的な方向で話が進んできていたのに、結局また戦いに戻ってくるのか!?


 ねえ、いくらコイツも農場に住んでいるからといって、明らかな人選ミス……。


 ……もとい、鳥選ミスじゃないんですかッ!?

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