1565 ジュニアの冒険:第三の男
ジュニア、ラストダンジョンに突入成功!
御免くださいませ!
ここが天空のオークボ城……!
いや?
オークボの天空城?
天空オークボ城?
天空の城オークボ?
城オークボ天空?
シックリくる呼び方に迷いがある。
とにかくこの……突如ダルキッシュさんの領地上空に現れた巨大富裕物体……その正体はウチの父さんが造り上げし天空の城。
その城もまたオークボさんの名を冠していることこそ、農場謹製の証でもある。
父さんはこの常識を超えた空中要塞を、僕の試しの場として用意してくれた。
これもまた期待の表れだろう、その期待に応えるためにも絶対にゴール地点まで駆け上がって、父さんをボコボコにしなければ。
この天空オークボ城、農場にあったピラミッドをリノベーションしたものらしく、そう言われて外観は酷似していた。
ピラミッドと言えばアレ……と言うべき正四角推。
しかしピラミッドと最も違う点は上下逆さ。
尖った頂点が下向きになり、四角い底面が上を向いている感じだ。
僕は現在、その底頂とでもいうべきか……一番下の尖った部分におります。
そこにまるで『おいでやす』と言わんばかりの、出入り口があったからだ。
進入すると、すぐさま階段があって『上りやす』と言わんばかり。
完全に誘導されているな……!
しかし、それが父さんの敷いたレールだというならば、ここはあえて乗るしかない。
その先に、輝かしい勝利が待っているのなら。
「待ちやがれ……!」
ん? なんだ?
僕を待ち受ける天空オークボ城に響く声。
この上空に浮かび、余人の踏み込む可能性も低いこの場所で……。
声がした、ということは早速、父さんが僕を阻むために送り込んできた刺客か!?
「違ぇよ、どいつもコイツもアンタに対応して動いてると思うんじゃねえ。自意識過剰か」
この辛辣な物言いは!?
まさか……ノリト!?
我が弟、次男にして生意気反抗期の面倒臭いヤツ! そして僕にない美点を数多く持った
「フッ、待っていたぜ兄貴、待ってないけどな」
どっち!?
何故お前がここに? お前も父さんの側に立って、僕を試そうというのか?
「だから違ぇよ。兄貴がオヤジに認められようと認められなかろうとオレには関係ねえ。ご勝手にどうぞって話だ。何より兄貴なんぞのためにオレが手伝ってやるいわれもねえしな」
刺々しい。
これだから弟は。
「でもな、この御大層なお城は果たして兄貴のためだけに用意されたものか? そんなにいつでもどこでも兄貴が特別扱いされるのかよ? そういうのには……もう飽き飽きしたのさ」
どういうことだ?
「譲ってもらうぜ。オヤジの試練を今日、クリアして認められるのはオレだ」
なんだと!?
でも、この天空オークボ城は僕の旅の総決算で……!?
「頑張っているのがアンタだけだってか? 他のヤツらは何もしてないと? そうじゃねえ。認められるチャンスは誰にだってあっていいじゃねえか?」
それはそうだが……?
ならノリト、お前はどうしたいと?
「この大騒ぎが始まる前にオヤジは言ったぜ。『お前にもチャンスはあるべきだ』と……!」
!?
「だからオレも走ってみることにしたのさ。柄にもねえことは百も承知だがな。兄貴、アンタに勝てないからって拗ねてばっかりなのはあまりにもダサすぎる。だから今日ぐらいは死に物狂いになってやる。アンタのための舞台を奪って輝く頂点に立ってやるぜ!!」
ノリトからの正面堂々たる挑戦。
そうか、父さんは僕だけじゃない……自分のすべての子どもたちのためにこの武謡を用意したのか。
次の世代へ等しく分け与えられる愛情。
そのやり口はいかにも父さんらしい。
……そうだな。
いつも自分が特別扱いされるなんて思い上がりだな。
いいだろうノリト。
僕のもっとも目障りな弟よ。
僕のチャンス、お前のチャンス。
掴めるチャンスが一つしかないのなら奪い合うしかない。
それもまた試練の一つだというならノリト、お前を完膚なきまでに叩き潰し『兄より優れた弟などいない』ということを改めて証明してやる!
「そっちこそ図に乗るのは今日までだ。たかが一年二年のアドバンテージが、いつまでも生き続けると思うなよ。ここでアンタを打ち砕き、オレは誰にも文句を言われないオレになる!」
我が人生、最高にして最強の邪魔者……ノリト!
ここでお前を倒して人間として一回り成長してやる!
ならば今この場こそノリトを始末する絶好機!
ノリトの名は第一ステージで抹消される小ボスとして残るであろう!
死ねやぁああああああああッ!
「わぁーい、ここがパパンのパーティー会場かぁー?」
?
誰!?
この間延びした声は!? もちろんノリトじゃないな!?
「誰だ!? 下り坂最強の豆腐屋の息子か!?」
ノリトも誰かわからず、困惑しているようだ。
……いや、たしかこの声は、聞き覚えのある……!?
「……いや、たしかこの声は、聞き覚えのある……!?」
同じことに同時に気づくな。
僕ら二人の兄弟に共通して心当たりのある声。
つまりそれは……!?
「兄ちゃんたちばっかり盛り上がっててずるーい。ボクも交ぜてよ愉快なパーティーに」
「お前はッ!?」
ぴょいーんと、上空から飛び込んでくる、小柄な少年。
僕よりもノリトよりももっと年下だ。
あどけない表情で屈託なく笑う、その子どもの名は……!
「「ショウタロウッ!?」」
僕とノリト、双方が一緒くたに叫んだ。
「はーい! お兄ちゃんたちの愛すべきリトルブラザー、聖者兄弟のナンバースリー、ショウタロウだよ!」
たしかにお前は、僕の弟でありノリトの弟でもある。
僕たち兄弟の三番目に生まれし三男坊のショウタロウ。
お前どうしてここに!?
他の弟妹たちと同じく農場でのどかに過ごしているんでは!?
「ボクもバトりに来たんだーい! ジュニア兄ちゃんやノリト兄ちゃんにばっかりいい格好はさせないよ!」
なんだとぅ!?
もしやショウタロウも、みずからの成長を証明するために試練の場へ!?
さすがにノリトよりもさらに年少な三男はまだまだ子どもだとばかり思っていたが。
彼もまた、みずからの天命を追い求める男の一人に成長したというわけか。
「ちゃう。……兄貴、ちゃうちゃう」
ん? どうしたノリト?
急に犬名など唱えだして?
「ショウタロウはそんな殊勝なヤツじゃねえよ。というか気づいてねえの? 兄弟でいながらアイツの俗物性を……」
ぞくぶつぅ!?
おいおいノリト!? 血を分けた弟相手にそんな物言い、あまりに不躾すぎるぞ!
相手はまだ純真無垢な男の子なんだから、もっと柔らかい言葉遣いでな……!
「うーんとね、地上に凄くマブいお姉さんがいたんだよ!」
マブい!?
コイツはコイツでどこの文化圏の言葉を使っている!?
「ボクが優勝してオークボ城を乗っ取れば、きっと感動してナンパされてくれると思うんだよね! キレーなお姉さんと仲良くなるためならどんな労力も惜しまない! それがボクのナンパポリシーさ!」
何を言ってるんだ、この弟は……?
脇でもう一人の弟ノリトが『こういうヤツなんだよコイツは……!』と頭を抱えていた。
次の投稿は、10/19(月)の予定です。






