1554 ジュニアの冒険:最後の戦場
父さんからの挑戦……!?
一体それは……!?
「当然のことだろう。お前は、修行のために旅に出た。修行とは、自分を鍛え強くするためのものだ。修行の旅を経たお前は、それ以前よりも強く大きく成長していなければならない」
それは……はい、そうです。
「しかもその成長は、俺のあとを継ぐためのもの。ならばあとを託すこの俺が認めるほどの成長でなければ何の意味もない。長い時間をかけて積み上げた成長が、俺を唸らせるに届かないのだとしたらジュニア、お前はオレの後継者である資格はない!!」
な、なんですってー!?
「俺は見極めなければならない。お前の成長の度合いを、お前の後継者としての資質を。そのための舞台を用意した」
舞台……?
「そう、俺とお前の対決の舞台だ。そここそが、真なるお前の旅の終着点だ!!」
父さんからビリビリとした気迫が伝わってくる。
今まで感じたこともないほどの。
いつも朗らかで優しく、周囲の常識はずれな人々のどんな無茶振りにも軽快なツッコミで対応していた父さんが……。
……こんなにも覇気と威厳に満ち溢れた態度をとれるなんて……!?
『ふーむ、今日の聖者様は一味違いますのう』
『息子の前でええカッコしたいにゃ。ニンゲンこうやって威厳を備えていくにゃー』
不死者がメチャクチャ第三者的なコメントを……!?
「さあ、どうするジュニア? この父からの挑戦を受けるか、受けないか?」
父さんは聞いてくる。
あくまで決定権は僕にあるんだぞ、とばかりに。
これもまた僕の決断力を計るための試験のように思える。
だったら、ここで困惑するのはNGだ。
答えはもちろん……!
「受けます」
その挑戦、受けて立ちます。
僕は旅を続けてきた。長い長い旅を。
いや、実時間的にはせいぜい一年そこらの旅ではあったが、その間とてつもなく色んなことがあった。
大事件もあったし、強大な敵との闘争もあった。この世じゃない場所にまで踏み込んだりもした。
そこで多くの言葉にならない経験を積んできた。
それらはすべて父さんのあとを継ぐため、立派な後継者となるために自分を鍛えてきたんだ。
その研鑽が、父さんの求める基準に達していなければ、それこそ無意味。
僕のここまでの旅は無駄だったということになる!
そうじゃないと証明するためにも、もう一度言う……!
父さんからの挑戦、真っ向から受けて立つ! 立ち尽くす!!
「その意気やよし。気迫充分、それもまた旅で培ったものかな?」
サカモトに跨って、上空から僕を見下ろす父さん。
その貫禄は、まさしく生者と呼んで差し支えないもの。
「お前の挑戦受諾の意志、たしかに確認した。それでは開催決定だ、俺とお前の、互いの意地と誇りを懸けた決闘の!」
決闘!? デュエル!?
「決闘の日時場所は追って知らせる。それまでは好きな場所で待機し、準備を整えるのもいいだろう」
ぬ、ぬう……。
「では、一旦さらばだジュニア。次に会う時は雌雄を決する敵同士。覚悟を固めておくがいいだろう」
そして父さんが手綱を引くと、即座にサカモトは反応し、いななきながら天空を駆け去っていった。
澄んだ青空に曲線の軌跡を描きながら。
それを見送りながら、僕は心が粟立つのを抑えきれなかった。
「父さん……」
初めてだ、父さんからあんな敵意のこもった視線を向けられるのは。
いつだって父さんは僕へ対して慈しみのこもった視線、我が身を犠牲にしてでも守り抜こうという優しさと強さのこもった眼差しを向けてくれていた。
しかし今日久々に見た父さんの瞳の色は、これまでとはまったく異なるものだった。
『それこそ、お父上がそなたを認めた証拠なのでしょう』
先生……?
『そなたはもう守られるだけの存在ではない。一人前の男として、対等な相手だと認められたからこそ聖者様は、遠慮なくそなたを認めたのでしょう。決闘の相手として』
先生の説明に、僕は何とも言えない気持ちになった。
父さんが僕を認めている。
僕のことを、ただ守り導くための弱き者ではなく、自分の脅威にもなりえる強き者として。
それこそが、僕の成長の証……!
『しかし本当の困難はこれからですぞジュニアくん。アナタが認められたといっても、いまだ挑戦者として。アナタは挑戦し、勝者となって、真なる意味で認められなければいけません。聖者様に、後継者として認められるために』
そうだ、先生の言う通りだ。
僕がここまで旅を続けて頑張ってきたのは、父さんに後継者として認めてもらうため。
そのチャンスが、いきなり速攻で巡ってきたということだ。
だったら逃げる理由もない。
堂々と受けきるんだ、この新しい、正真正銘最後の試練を。
『その意気ですぞジュニア殿。それでは早速このワシが、戦いの舞台へとご招待いたしましょう』
えッ、先生が!?
『前もって打ち合わせしてあったのですぞ。ジュニア殿が挑戦を受けた暁には、ワシが案内役を務めると』
打ち合わせ済み!?
なんだ皆して示し合わせていたってことなのか!?
これが農場の初期メンバー無言のチームワーク!?
『転移魔法でひとっ飛びですぞ。それでは博士、今日はこれにて失礼しますぞ』
地面に寝転ぶネコに向けて言う先生。
『お招きいただきありがとうございました。ワシもノーライフキングの一人として、行く末を考えさせられる一件でしたぞ』
『神として内定している先生には心配ないことにゃー。いつの日かまた会おうにゃ』
『ネコがいる場所であれば、すぐにまた会えることでしょう』
ノーライフキング同士の次元を超えたやり取りを、黙って見守ることしかできない僕だった。
『では行きますぞジュニア殿! 転移魔法!』
先生の魔法に誘われ、光の速さで移動する僕。
魔法が完了して視界が正常に戻った時、僕の前にはまた異なる景色が広がっていた。
……いたって普通の景色だ。
クレーターが開いているわけでもなければ、天を衝くほどの大山が聳え立っているわけでもいない。
森と草原、それらが散見的に広がっていてさらには舗装された道が横切っていたりする。
それは、この近辺に人が住んでいる証拠であり、遠くに目を凝らすと集落らしい建築物が立ち並んでいる。
ここは……、人里離れた秘境、という感じではなさそうだが。
『ふぉふぉふぉふぉふぉ……、気づきませんかなジュニア殿』
うう、先生がからかうように問うてくる。
……すみません、記憶にございません!
『まあ記憶力で若者を責めるなど老人にはできますまいて。では、解答をお知らせいたしましょう。ここは……ワルキア辺境領です』
ワルキア辺境領!?
……。
うーん、待って?
まだ出てこない、記憶の底から適切な情報が。
わる……わるき……!?
……あッ!
わらび粉で作ったお餅!?
『それはわらび餅ですぞ。美味しいですな』
そうですよね!
美味しいですよねわらび餅!?
『しかしワルキア辺境領とは何の関りもありませんぞ。まあ、答えがわからぬのも仕方ないところもありましょう。起こった出来事だけが印象だけが残っていて、場所の名前まで頭に入っておらぬもの、よくあることです』
そうかなあ。
事件名とかよく地名から取られているから覚えやすいかも?
まあいいや。
では、このワルキア辺境領とやらで一体何が繰り広げられているので?
『このワルキア辺境領こそ、オークボ城が開催される場所ですぞ!』
なにぃ!?
オークボ城!?
あのオークボ城なのかッ!?






