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1549 ジュニアの冒険:試練終了

 ……。

 …………。

 ………………。


 ……はッッ!?


 ここはどこ!? 僕は誰!?


 僕ジュニア!!

 ここは……わからん!


 とりあえず記憶喪失ではないようなので安心した。


 しかし今は一体、どういう状況だ?


 僕はどうして意識が途切れて……そうだ。

 僕は最強ドラゴン、アレキサンダーさんと試合の真っ最中だった。


 圧倒的パワーでなすすべもなく圧倒されかけていたところを、起死回生の一手で逆転!

 ……しようとした刹那に意識が途切れた、ような気がする。


「おお、ジュニアくんよ、死んでしまうとは情けない」

「死んでねーって」


 仰向けに倒れた僕をのぞき込むのは……。

 カトウさんとモモコさん。

 S級冒険者の方々。


 彼らが目の前にいるということは……?

 別宇宙から元の世界へ戻ってきたということ!?


「おお意識が戻った。いやぁ、無駄に頑張っちゃダメだよジュニアくん」

「そうよねー、どうせアレキサンダー様には誰も勝てないんだから、足掻くだけ不様よねぇー」


 そんな色々台無しなこと言われても!?

 そ、そうだアレキサンダーさんは!?


「向こうで家令さんを慰めてるよ」


 指さす先を確認してみると、家令さんが土下座していた。


『申し訳ありませぬアレキサンダー様! 主に刃を向けるなどと従者にあるまじきこと! この不敬、この不忠! 死んで詫びますゆえどうか思い出の中の私のことはお許しください!』

「まあ、そう思い詰めるなって。死んで詫びるっつっても、もうお前死んでるし」


 人間形態に戻った(?)アレキサンダーさんが困り顔で、家令さんのことをなだめていた。


 アレは一体?


「一体も何も、すべてはキミのせいだろう」


 何ですって!?


「話は聞いたよ。家令さんをファイナルフォームライドして、アレキサンダー様にファイナルアタックライドしようとしたんでしょう?」


 なんですその意味不明な単語の羅列は!?


「それは酷な話だよぉ~。家令さんほど人はいないよ、アレキサンダー様を敬愛し、心から尽くそうとしているのは。そんな家令さんの意に反して、よりにもよって最高の忠心の対象へ攻撃させようとするんだから」


 えっと……カトウさん、ごめんなさいまだ記憶の整理がついてなくて混乱です。


 アレキサンダーさんへの挑戦権を行使して、戦いの場へと踏み込んだ僕は……。


 ……どうした?

 ゼリーフライ食べた?


「ダメだわカトウさん、このガキ大分記憶混乱してる」

「まあそうだね、アレキサンダー様がちょっと真面目にパワーを当てて意識を刈り取ったって話だから。そうでもしないと取り返しのつかないことになってたかもね」

「攻撃当てたらそれまでだったからねー」


 ……なんだ?

 カトウさんとモモコさんの会話が、わかるようでスンナリ耳に入ってこない・


「まだ混乱しているようだね。むしろこの程度の軽い混乱で済んでよかったともいえる」

「軟弱よねー、この程度で」

「キミは、アレキサンダー様に挑戦した後しばらく自分の名前思い出せなかったよね」


 僕ジュニア!

 そうだ、アレキサンダーさんと対戦してじわじわと追い詰められて、それで起死回生の一手を思いついたんだった。

 僕最強にして唯一の武器『究極の担い手』を使うには、何かに触れることが必要。


 なのであの虚無空間で唯一触れられしもの……家令さんを利用するしかなかったんだった。


「うんうん、理屈としてはわかるけれど。利用される家令さんの気持ちも考えてあげないと」

「何も知らぬ無知なる者を利用することは吐き気を催す邪悪なのよ」


 なんか一方的に責め立てられている僕!

 しかし言われることもわかる僕!


 家令さんは、アレキサンダーさんを慕って人としての生命すら投げ捨てる御方なのに。

 よりにもよって、その何よりの忠誠の対象であるアレキサンダーさんに向かって刃を向けさせるなんて。


 鬼畜の所業ではないか!!


「勝つためとはいえ、人の心を無視して利用するやりかたは冒険者的にどうかと思うがな」

「いいではないか! 目的を遂げるためなら手段も問わず! それもまた冒険者のモットーだ!」


 そんなことはないと思いたい!!

 しかし! 僕が勝負の空間でしたことは間違いなくソレ!


 ああ! 意識がハッキリとしてくるほどに自己嫌悪が襲ってくる!?


「まあまあ、そう自分を責めることはあるまい」


 アレキサンダーさんがこっちに来た!?

 ああ、なんと!? 僕は卑劣なことを!?

 このままでは『農場の二代目は卑劣』と言われてしまう!?


「あの時のジュニアくんの精神状態は尋常ではなかった。何しろ数十億倍に超大化した私のパワーに当てられたのだ。余裕を失い、正常な判断力を失っても仕方のないことよ」


 そうでしょうか……!?

 たしかにアレキサンダーさんのパワーに圧倒されていた状況。あの息苦しさから脱出したくて、とにかく何でもやろうという心地だった。


 そんな追い詰められた感情が、家令さんの気持ちを無視して利用するという行動に走らせたのか_?


「こらー! ジュニアをいぢめるな!!」


 こら女子!?

 いやヴィールだ! ヴィールが話に割って入ってきた!?


「ジュニアの成長を促すためにと今まで静観していたが、テメーら寄ってたかってジュニアを責めすぎだ! なんだ兄上の部下の一人や二人、ジュニアの役に立てることを光栄と思うのだ!!」


 そんなドラゴンならではの暴虐理論を唱えられても!?


「ジュニアよ、気にするこたねー! お前はいずれご主人様のあとを継いで色々背負って立つご身分なのだ! 清濁併せ呑む精神じゃねーと務まんねーぞ!!」


 それはそうかもしれないが……!


 思えばこの旅路の中で、ここまで精神的に追い込まれたことはなかったんじゃないだろうか。

 いや、追い込まれたこと自体は何度でもあるんだが、その中でも群を抜いてアレキサンダーさんは凄まじかったと思う。


 そんな中で出た僕の行動が、内面に潜んでいた何かを剥き出しにしたのではないか。

 僕はここで、自分の新たな一面を垣間見たのか。


 アレキサンダーさんが諭すように言う。


「そう深刻にならんでくれ。ヴィールの言う通り、アレは勝負の場であった。勝利のためにあらゆる手段を尽くすのは当然のこと。その最中で家令は不覚をとったにすぎん」

『その通りです……! ジュニア様、アナタがいたたまれぬ気持になることはありません。すべてはこの家令の不徳……!!』


 家令さんが今にも切腹しそうなテンションで話してくる!

 本当に申し訳ないと心から!


「まあ、それがジュニアくんの教訓になったのならいいではないか」


 いい感じにまとめようとしてくるシルバーウルフさん。

 さすが年長者。


「結果どうあれジュニアくんキミは、世界存在の存在と言ってもまだ足りないアレキサンダー様と一戦交えたのだ。それは他では得難い経験であり、唯一無二のものだろう。聖者様ですらアレキサンダー様との戦闘経験はないぐらいだ」


 そりゃあ、父さんは戦闘向きの人ではないから。

 戦いを通じなくても色んなことを悟り、知ることのできる人だから。


 それに比べて僕はどうだろう?


 キチッとあの人に近づき、あとを引き継ぐ準備は進んでいるのだろうか?


「難しいことをゴチャゴチャと考えてもしょうがねえのだ!」


 ヴィールがキッパリと言う。


「ジュニアは、アレキサンダー兄上の試練をすべてサッパリクリアした! それが重要なことではないか!!」


 えッ?

 でも僕はアレキサンダーさんに完膚なきまでにやっつけられたのだが?


「あんなの負けて当然だ。アレキサンダー兄上には誰にも勝てねえんだからな」

「そうだそうだ。『聖なる白乙女の山』の試練は、頂上までたどり着いて完了。最後の勝負はボーナスステージとでも思っておけばいい」


 ちょっと釈然としないが、言われたことにも一理ある。


 こうして僕の試練は終わり無事、最強ダンジョン『聖なる白乙女の山』を制覇したという実績が僕に残った。


 皆さん!! おつかれ!!

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― 新着の感想 ―
真なる忠誠心があるならバトルホッパーみたいに操られても反抗して自爆くらいしないと。
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