1527 ジュニアの冒険:意外な待ち受け
世界最高ダンジョン『聖なる白乙女の山』。
その攻略のカギとなる八つの周辺エリア、その最初の一つ岩山エリアの番人……ノーライフキングの岩壁さんに勝利を収めた。
……こうして書き連ねていくと、まだまだ最初の方だと実感できてシンドイ。
「うぇーい! さすがジュニアなのだ! 勝利! 大勝利! ヴィクトリャーッ!! アレキサンダー兄上んとこの死体モドキなんてメじゃないのだー!」
ヴィール……!
勝利を讃えてくれるのは嬉しいけれど、もう少し控えめに……!
ビッグなマウスをしていたら後々大変なことになるフラグにも……!?
「で、あのデカ玉ブン回し野郎はどうなったのだ?」
あッ!?
そういえばノーライフキングの岩壁さんは!?
無我夢中の全力で吹っ飛ばしてしまったが、まさかあれで死んでしまったりとか……!?
『う~ん、酷い目に遭った』
無傷!?
無事でよかったと喜ぶべきところだろうが、何のダメージも負っていないとなると、それはそれで!?
吹っ飛ばされた勢いで、その辺の大岩に激突し、粉砕された瓦礫の中に埋没していたようだが、すぐさま瓦礫を押し戻して出てこられた。
『まさか、その辺の石コロで我が魂の岩槌と同じ威力を生み出すとはな。何かのスキルか? そうでなければワシの面目も立たんが……』
と、特に不調の様子もなくピンピンしている岩壁さん。
こっちは全力の上の全力を振り絞っての攻撃だったのに。こっちの方が全身の筋肉ピキピキしているのに。
当てた方と当たった方と、むしろ当たった方がダメージデカいなんて、アリ!?
「するってーと、どうなるんだ?」
驚異の復活を遂げた岩壁さんを前に、ヴィールが訝しむ。
……どうなる、とは?
「だって、一度は倒したと思った相手がピンピンしながら立ち上がってきたんだぞ。それって勝負続行ってことでは?」
あっ。
ヴィールの言うことにも一理ある。
立ちあがった岩壁さんは目に見えて損傷もなく『シフト変更ですか? 入れますよ?』と言わんばかりの精悍ぶりだ。
不死身がウリのノーライフキングとはいえ、ここまで何事もなかったかのようなのは腹立たしい。
こんなに元気溌溂ならば……まだやれるのか?
戦闘続行か?
あの……僕もう体中がガタつき始めてるんでやめたいんですが。
絶対明日、筋肉痛くるヤツです。なんなた今日中にきそうです若いので。
『フッ……安心せよ。ワシももうこれ以上やろうとは思わん』
えッ? マジですか!?
やったあッ!?
『ワシがもっとも得意とする大質量での激突で押し負ければな。あの衝突の一瞬、ただの石コロに我が魂と同等の重みが宿ったことに驚き、動揺し、手を緩めてしまった。冒険者として生死の際で隙を見せるなど、これ以上の失態があるものか!』
自分自身に憤る岩壁さん。
『冒険者として遥か先達であるワシが、このような失態を演じることなど万死に値する』
「お前はもうとっくに死んでるけどな」
『よってこの勝負、完全無欠にワシの負けよ。ワシもまだまだ修行が足らぬわ。未熟を暴かれたな』
と自省する岩壁さん。
ここまでの力を持ちながらまだ自分に厳しくするなんて、恐ろしい……!
『では小僧よ、この岩山エリアを制覇した証、岩バッジを受け取るがいい!』
「わーい、何らかの問題がありそうなのだー!」
不吉なことを言うヴィールを余所に、僕はバッジを受け取る。
これが、最高ダンジョンの周辺エリアをクリアすることによって貰える、実力者の証明。
これを八つ集めた時、本山のアレキサンダーさんへの道が開ける。
『他七つの周辺エリアには、ワシと同類の八傑衆が待ちかまえておる。その全員を倒した時に八つのバッジがすべてお前の手に揃うであろう』
一人戦っただけでこんなに大変だったのに!?
これをあと七回なんて……しんどいなあ。
一回拠点に戻るかなあ……。
「大丈夫だぞジュニア! こういうのは大体最初の一人目が最弱と決まっているのだ! よって今回は楽な方だぞ!」
それ何の解決にもなってないよ!
一回目が最弱ってことは、二回目以降どんどん厳しくなっていくってことなんだから!
今回ここの戦いでヒーコラ言っている僕には特大級の悲報だぞ!
『心外な! このノーライフキングの岩壁が八傑衆最弱などと、事実無根のノーコンなり! そんなデマを吹聴するなら名誉棄損で訴えるぞ!』
対策の仕方が現代風なのやめてください。
そしてスミマセン、ウチのヴィールが滅多なことを言ってしまって。今の世の中推測や先入観でモノを言うと後々大変なことになりかねないのに。
『とはいえ八傑衆最強などと大きく出るつもりもないが……。そうだな我が強さを順位付けするなら、ワシは八傑衆の中でも……』
重大発表?
デデデデデデデデデデデデデデデ……!
『三番目ぐらいだな』
「これ全員が三番目に強い、って言うパターンなのだー」
どうやら遥か以前にそういうパターンがあったらしい。
『では小僧よ、……いや、冒険者ジュニアよ。次のエリアへ進むがいい。二番目にオススメなエリアは熱帯山だな』
またオススメが挙げられた。
至れり尽くせりか。
『熱帯山エリアは、別名アマゾンエリアとも呼ばれる熱帯雨林生い茂る山だ。うだるような暑さに湿気、そこにいるだけで体力を奪ってくる過酷な環境に加え、動植物問わず様々な種類の生物が跋扈し、その多様性は八つの周辺エリアでも群を抜く』
――それでも明確なダメージゾーンがない分、他のエリアより進みやすいがな。迷いやすくはあるけど。
……と言う。
『熱帯山の番人、密林は植物使いのノーライフキングで、それだけ草木の生い茂る熱帯山エリアはヤツの力を最大限発揮する。あの場所で密林と戦う時、エリアそのものが自分の敵だと心得よ。ワシのように正面からぶつかってくるタイプとはまったくの別物ぞ』
本当に至れり尽くせりなアドバイスを受けて、僕らは岩山から降りた。
次のエリアは熱帯山かぁ。
服が蒸れそう。
「どんな相手が立ち塞がろうと、おれのジュニアならがいしゅーいっしょくなのだー。次も瞬殺しようなジュニア!」
そんな過剰な期待を寄せられても。
第一、さっきの戦いも別に瞬殺してないし実に大変な戦いだった。
あれがあと七回続くかと思うと……想像するだけでしんどい。
岩壁さんとの戦いで思いっきり消耗しているというのに。
「なんだジュニアお疲れか? だったらおれのラーメンを食らうがいいのだ。ゴンこつエキス配合でどんな疲労も一発解消。死人も生き返るラーメンだ」
と、まともではないことを言いきるヴィールだが、これがデタラメでないから困る。
勧められるがままに出されたラーメンをすする僕。
……ズルズル……。
ズズズッ。
……ふぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!
力が漲るッ! 力がッ!
力はパワーがぁああああああああッッ!!
僕は全回復した。
マジで効き目あるから大変なんだ。
これで僕は八傑衆との戦いで、全戦全力を出せることが決まった。
ダンジョンを出て態勢を整え直すいとますら与えてくれない。
「大丈夫だぞ! ここ十年でドラゴンラーメンも進化を重ねているのだ。一番基本のゴンこつ味を始めとし、あっさり醤油味、こってり濃厚みそ味、魚介出汁の塩味、サンビームトマト味、さらなる形態進化、つけ麺もあるから味も飽きが来ないぞ!」
だから八連戦できますってかコノヤロウ!
僕は体力回復に時間をかけて心の回復も図りたいんだけど。こういうのをこそドーピングと言うんじゃないか。
仕方ない、ひとまずはこのまま次のエリアへ行って、そこで一戦してから今後の方針を立てよう。
負けたら素直に戻って、勝っても休憩を挟みたい。
そう思って向かった次なるエリアで……。
想像もしないモノが僕らを待っていた。
* * *
ま……!?
負けてるッ!?
ノーライフキングが負けている!?
あの倒れている白骨の方が、ここ熱帯山エリアの番人でOK?
その番人が負けておるとはどういう事態ですかッ!?
そして負けているということは、倒した相手がいるということ。
ノーライフキングすら打ち破る、驚天動地の戦士とは……。
「待っていたよジュニアくん」
アナタは!?
誰!?
「つれないなあ。僕の名はカトウ。S級冒険者のブラウン・カトウさ。僕もキミの実力を計る試練に参加させてもらおうと思って、番人役に立候補させてもらったよ」
S級冒険者が何故ここでッ!?
僕の『聖なる白乙女の山』攻略。
波乱に満ち溢れていた。







