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1523 ジュニアの冒険:自由なるドラゴン

「ここに七つのドラゴンボールがあるじゃろう」


 あるけど、それが何か?


 もはやこのスタンスで行くことに決めました。


「これを、こうして……こうじゃ!」

「じゃじゃじゃーん! ヴィール様見参なのだー!」


 投げたボールがパカッと開いて飛び出すヴィール。

 ボールとヴィール、大きさ的にまったく整合性がとれていないが、そこはまあドラゴンの超理力から無理を押し通したんだろう。


 ボールにヴィールが入っている必要性がまったく不明なのだが。


「もしダンジョン内でピンチなことに陥ったら、このボールを投げて中のヴィールを召喚するがいい。きっと助けになるだろう」


 それもう実質のチートコードなんですが。

 投げた瞬間ゲームが終わる。

 いくら『聖なる白乙女の山』が最強ダンジョンでも、ヴィールに突破できないギミックは存在しないかと愚見する。


「そして二つ目のドラゴンボールには……」


 何事もなく話を進めるな!

 たしかにドラゴンボールあとの六つの中身は気になるが!


「……この御方が入っている」

「はっはっはっはっは、おれだ!」


 誰?

 見覚えのない子どもがボールの中から出てきた。


 しかしこの子ども、薄ら笑いした表情がとても子どもとは思えない。

 むしろ大人の嫌な感じがこれでもかというほど厚塗りされたような表情だ。


 人の姿をしていてもドラゴンであることは疑いないが、彼は……?


「我が父にして先代ガイザードラゴンのアル・ゴールだ」


 と解説をくれるアレキサンダーさん。


 ガイザードラゴンといえば別名、皇帝竜とも言われる、あの?


「ただ今ご紹介に預かった、おれこそアル・ゴールだ。というかお前、竜の国でも会っただろう忘れたのか?」


 そうでしたっけ?

 竜の国では衝撃的な出来事多々過ぎて、些細なことは忘却の彼方どころかそもそも記憶化されていないというか……!


「おれとの遭遇が些細なことだと申すか! むっきー!」

「まあまあ父上。アナタも力のほとんどをアードヘッグに譲り渡して残っていないのですから、重要度が下がるのも仕方ないかと……」

「譲ったんじゃねえ、奪われたんだよ! 大体お前なアレキサンダー、お前が素直に後継者にならないから……!」

「その話、今します?」


 食ってかかってくる男の子に呆れ模様のおじいさん。


 あれで実際は、子どもの姿をした方が父親で、おじいさんの姿をした方が息子だというのだからドラゴンは本当にややこしい。

 人間の姿に化けるとしても、歳相応にはできないのか。


「父上は気持ち若作りしたいお年頃なのだ。対して兄上は人間を愛でるあまりに威厳を重視して、ああいうジジイの姿を好むというわけだな。何にしろ気持ちが大事というわけだ」


 ドラゴンの変身に、気分が大きく関わっていたのか。


「父上は元々、自分が永久にガイザードラゴンの座に居座るために、自分の子どもらから力を奪うなんて暴虐を尽くしていたからな。それをアードヘッグがトリーズナー(反逆)して打倒。ヤツが新しいガイザードラゴンになったのだ」


 ヤベえことしていたのかあの子ども……!?

 そんな悪い人が、よく今はああして平和にしていられるな?


「暴虐はドラゴンにとって美徳だからな。アードヘッグみたいに義憤するヤツが珍しいのだ。でも、アードヘッグが立ち上がったのは意外だったけれどな。おれの推測では結局アレキサンダー兄上が何とかすると思っていたのだ」


 しかし実際はそうならなかった。

 最強竜と誉れ高く、世界を打ち砕く力を持ちながら。


 そんなアレキサンダーさんは、子ども姿の父から容赦なく白髭を引っ張られていた。


「いででででででで……! ん? ああ、父上の暴虐については、被害がドラゴンの中に収まる限りは静観するつもりだったぞ」

「え? そうなの!?」

「『暴虐が美徳』というのがドラゴンの価値観なら、その暴虐によって滅ぶこともドラゴンのあるべき姿。自業自得ゆえにな。だがそのせいで人間に迷惑がかかるなら、徹底して食い止めるがな。実際に父上が垂れ流したレッサードラゴンは、私が即刻駆除していたし」

「えッ、そうなの!?」

「父上がすべてのドラゴンの力を奪い尽くしても確実に勝てるから心配もしていなかった。それをアードヘッグが改善したのは私にとっても予想外だ。だからアイツこそドラゴン族の未来を託すに相応しいと認めたのだ」


 そういえば……。

 アレキサンダーさんとアードヘッグさんの力関係って、どんな感じなんだろう?


 アードヘッグさんこそすべての竜を支配する皇帝だろう。

 それに対して世界最強で有名なアレキサンダーさん。

 トップが並び立っているようなこの構図。


 一体どちらに軍配が?


「そりゃーアレキサンダー兄上が、力で圧倒的に上なのだ」


 そうなんだ。


「昔はガイザードラゴンが最上位かつ最強かつ頂点だったんだが、アレキサンダー兄上が現れてからそうでもなくなったよな。強さで言うならおれだってアードヘッグより上だしな」


 アードヘッグさん……。

 現代においてガイザードラゴンより強いドラゴンはたくさんいるものの。

 ガイザードラゴンは文字通りの皇帝としてドラゴンたちの統率し、平和を維持していく役割ってことか。


「ある意味クソ真面目のアードヘッグにピッタリな役割だな。それに比べりゃアレキサンダー兄上の方がよっぽど自由奔放で昔ながらのドラゴンなのだ」


 竜の国にも参加せず、人の世界で思うが儘にダンジョン経営してるんだもんな。


 これを自由と言わずしてなんと言おう?

 フリーダム?


 ……あッ。

 いかんいかん、竜の親子関係が難雑すぎて話が逸れてしまった。


 それで先代皇帝竜様をドラゴンボールから出して、一体何をされようと?

 ダンジョン攻略に何か利点があるのでしょうか?


「いいや、まったくない!」


 そんなキッパリ答えられても……!?


「おれはアードヘッグに負けて、ガイザードラゴンとしての力をすべて奪われてしまったからな。残っているのはカスほどもないわ。その辺のニンゲンにと戦ってもフツーに負けるぞ、おれは!」


 そんなこと自慢げに言われても……!


 じゃあなんで出てきたんですか?

 ドラゴンボールに入ったドラゴン、助っ人じゃないんですか!?


「応援ならしてやるぞホレ、んばばんばんば、メッサーラ、メッサーラ」


 役に立たない。


「そして三つ目のボールだが……キミに決めた!」


 父親にまったくかまわず先に進むアレキサンダーさん!?


 そして次なるドラゴンボールから出てきたのは……。

 これまた意表を突いた、グラマラスな色っぽいおねえさんだった!?


「シードゥルですわ、よろしくー!」


 彼女もドラゴンなのか!?


「シードゥルはドラゴンの中でも大分弱い方なのだ。ドラゴンの後継者争い中は酒瓶に漬け込んでやり過ごそうとしていたぐらいだからな」


 酒瓶に漬け込む!?

 何だその謎の表記は!?


「ジュニアもわからないか? おれもわからんのだ。いや、当時はわかっててやってたつもりだったが、それも若さゆえ……だったのかな?」


 ヴィールが珍しく難しい顔つきになっている?

 彼女らの過去に、一体何が?


「思えばあの発想が、無限に終わらぬスープ消費の始まりだったように思えるのだ。無限スープ編、そのビギンズナイトが……!」

「あ、ヴィールお姉さま、これ今日の分のスープ補充ですわ! どうか有効活用なさってくださいまし!」

「ぎゃああああああッッ!? また増えた!? だからドラゴンスープはもういらねえって言ってるのだぁあああ!?」


 もしやヴィールがラーメン作りを営んで十数年な理由が、ここに?


「いや、ヤツのラーメン好きは明らかに趣味でもあるぞ」

「ラーメン作る時のアイツの表情は輝いているからな。アイツも充分に変なドラゴンだ」

「まあ、聖者の傍にいるのだから変なことは間違いないが……」


 アレキサンダーさんとアル・ゴールさんが、しみじみ言った。


「ではジュニアくんよ! 旅のお供としてこの三体のドラゴンのうち、一体を選ぶがいい!」


 えッ!?

 そういやそういう話だった!


 アレキサンダーさんのダンジョンを攻略する試練の途中だった!


 でも待って!?

 まず最初にアレキサンダーさんが出してきたドラゴンボールは七つだったよね?


 そのうち三つが紹介されて、残り四つは?


「カラだけど?」


 じゃあなんで並べた!?

 最初に七つ並べることに何らかの意図を感じずにはおれない!


 やめませんか、こういう危険な遊びは!?

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― 新着の感想 ―
目の前のドラゴンボールを選らばなかったら、新たに巨大なドラゴンボールが出てきそう
ドラゴンボール、出落ち感がハンパねぇ…
多分ジュニア敢えて「カラ」の玉選ぶんだろうなあ…感動したアレクサンダーさんが入る…
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