1524 ジュニアの冒険:いわのしれん
我が前に示された三択。
ヴィール。アル・ゴールさん。シードゥルさん。
この三人の中から一人選べと言われたら、そりゃヴィールを選ぶよ。
気心知れてるし、試練中何してくるかは予想がつく。
これで案外ツッコミ役も務まるドラゴンだしな。それが何より貴重で重要だったりする。このイカれた街角では。
「よっしゃー! やっぱりジュニアだな! おれはお前を信じていたのだー!!」
それに、他の選択肢の中には明らかにツッコミ役が務まらなそうな人もいたしな。
完全な天然ボケ役柄と言おうか。
「心外ですわー、わたしもツッコミ役ぐらいできますわー。……なんでやさぶろう! ですわよね?」
やっぱダメだ……!
というわけでアレキサンダーさん、僕はコイツと旅に出ます。
「殲滅なのだぁー!」
ヴィールも元気満々だ。
「うむ、ジュニアくんよ。キミの旅の最終試験として我がダンジョンを選んでくれたことを誇りと思う。周辺エリアを攻略してバッジを集め、見事試練を合格して見せるがよい」
「おれら、何のために呼ばれたんだ……?」
厳かなアレキサンダーさん。
そしてアル・ゴールさんお騒がせして、すみません。
「改めて説明しよう。周辺エリアは岩山、熱帯山、火山、雪山、毒山、雷山、鉱山、霊山に区分けされている。最初の攻略には岩山に行くことをオススメしよう」
オススメ、ですか?
「うむ、岩山エリアは環境負担が少なく比較的易しい。我がダンジョンに慣れておくのにちょうどよかろう。……では家令よ」
『はい』
「ジュニアくんを入り口に送ってやってくれ」
『承知いたしました。それではジュニア様、ご武運をお祈りいたします』
ノーライフキングの家令さんが、手に持っていたベルをチリンと鳴らした。
するとどうだろう。
瞬間、視界がザラついたと思ったら急速に目の前が乱れて崩れ、砂嵐の中にいるような状態になった。
しかしその砂嵐のようなものはすぐさま消え、視界が晴れた時にはまったく別の風景だった。
アレキサンダーさんも家令さんもいない。
ここは……、ダンジョンの中か?
「『聖なる白乙女の山』の入り口付近だな。ダンジョン内の位置情報を強制変更させた上、現実に無理やり沿わせたのだ。基本的に主は自分のダンジョンの中では万能に振る舞えるが、ここまで何でもアリなのも珍しいのだ」
ヴィールがいたッ!?
彼女だけは瞬間移動についてきたのか!?
「当たり前だ! おれ様はジュニアのパートナードラゴンだからな! 何があっても一生一緒なのだー!」
一生は重いけれど、ヴィールが同行してくれるのは頼もしい。
ツッコミ役として。
では早速『聖なる白乙女の山』攻略にかかるとしよう。
まずは岩山エリアだな。
「なんだ、兄上の言う通りに進むのか?」
そりゃあオススメされたんだから、その通りに行かないとアレキサンダーさんに失礼だろう。
「あのなあジュニア、少しは相手の言うことも疑ってかかるのだ」
いきなり何を仰る!?
「会うヤツ皆、本当のことしか言わないと思ったら大間違いなのだ。中には親切そうに見えて、落とし穴に誘い込もうとするヤツだっているからなー」
急に真面目なこと言う。
ヴィールの一見メチャクチャに見えて生活感覚のしっかりしたところ、あると思う。
「これでもご主人様の傍で過ごしてきたからな。農場国が出来てからなおさら、厄介な詐欺師連中が群がってきたのだ。お前もご主人様のあとを継ぐなら、何でもまるっと信じるのは感心しないぞ」
人魚国でランプアイさんからもそんなこと言われた……!
そうだな、未来の農場王として警戒心は必要不可欠だよな。
また一つ学んだ。
「まあ、アレキサンダー兄上ならヒトを騙す理由もないし、大丈夫ではあろうけどな」
じゃあ何だったんだこのやり取り!?
いや、僕の警戒心を促すためにも必要か……!
では改めて、気持ちを取り直してダンジョン攻略へと向かおう!
最初の攻略先は、アレキサンダーさんを全面的に信用して……!
……岩山!!
* * *
そして岩山エリアにやってきた僕たちだが……。
もうしんどい。
見渡す限りの岩、岩、岩!
岩がもう過ぎて、もう、いーわ、ってなる!!
大岩がゴロゴロ転がった地形は平坦ではなく足場も悪い。
気を付けないと転がり落ちそうで怖い。
進むだけで体力を消費し、滑落&落石の危険も多大。
そんな中でもモンスターはしっかり襲ってくる!
誰だ、比較的優しいって言った人!?
やっぱり騙されたか!?
「他のエリアに比べたらって意味じゃねーか。便利だよな“比較的”って言葉」
ヴィール!
宙を浮きながら移動して楽そう!
そうか……これでもまだ楽な方ということ。さすがは世界最高のダンジョン『聖なる白乙女の山』ってことか!?
「でもホントの敵は、岩じゃねえんだろ? なんつったっけ? ハッケッキュー? とかいうヤツ?」
白血球ではないな。
八傑衆だ。
最強ドラゴンであるアレキサンダーさんに忠誠を誓い、ダンジョンの要所を守るノーライフキング。
散々前情報を聞いてきた。詳細は知らないけれど。
でもあの家令さんはまた別カウントなんだよな?
アレキサンダーさんの陣営の層が厚くて怖い。
「死体モドキを家来に持つなんて、ドラゴン多しといえどもアレキサンダー兄上ぐらいのもんだ。おれも真似してみようかな」
家来になってくれるノーライフキングにアテなんかないだろう。
ヘタに募集して裏切られたら目も当てられない。
そういう意味でも、真なる忠誠を捧げられて部下を率いているアレキサンダーさんの異様さが際立つ。
ここにいるという八傑衆の一人も、そんなアレキサンダーさんに忠実な魔人ということか。
しかしどこまで行けば、ソイツに会えるのか?
やっぱ頂上かな? この周辺山の?
『ごわっはっはっはっは! よくぞたどり着いたな!』
ついに来た!?
聞き覚えのない高笑いが響く。
『我こそは大主アレキサンダー様の忠勇なる士! この岩山エリアの守護を任されし八つの異形の一角! 不死王としての名は“岩壁”! ノーライフキングの岩壁である!!』
うわぁ、出てきたぁああああッ!?
やはりノーライフキング!
剥き出しの人骨がひとりでに動くスタイルは、まさにアンデッドの代表格みたいだが、さらにその上にまとっているのは堅牢な鎧装束だった。
重々しい金属鎧を着たその姿は、これまで見てきた魔導士調のノーライフキングとはあまりに印象が違う。
そして何より目を引くのが、その鎧戦士ドクロが肩に担ぐ武器が、石製の巨大ハンマーだということだった!
担いでいる本人よりもなお大きい。
あんな大きな石ハンマーで殴られたらどうなるんだ?
一撃粉砕?
『ごわっはっはっは! この巨大ハンマー“イシツブテ”を見て驚愕したか!? それとも怖気づいたか!? アレキサンダー様のご下知ゆえ、一層丁寧に相手をしてやるが、我が怒号程度で腰を抜かすような臆病者では話にならんぞ!! ごわっはっはっは!!』
今までにない豪快傾向のノーライフキング。
どう対応したものか……と困惑して立ち往生してしまう。
そこへ……!
『イキッてんじゃねえブレーモノがぁあああああああッ!!』
『ぐわおわぁあああああああッッ!?』
変身したヴィールがドラゴンブレスで、相手を吹っ飛ばした。
『ウチのジュニアを臆病たあ、お口が過ぎる死体モドキなのだ! アレキサンダー兄上は舎弟にどういう教育してるんだ!? カスハラものだぞ! あぁ!?』
ヴィール! ちょっとヴィール!?
怒ってくれる気持ちは嬉しいけれども、出てきた瞬間キミが薙ぎ倒してたら僕の試練に全然ならない!
少しだけご自重を!
お願いします!!







