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ギルド登録の勧め

「…8345・8346・8347…」

 街を気ままに散策した翌日。ハルカは朝食を取った後、ヴェチカの家の小さな庭で、剣の基本型を確認しながら素振りをしていた。剣はヴェチカに頼んで彼女の母が使っていたという軽めのブロードソードを借りている。軽めとはいえ、ハルカが実際に振ったこともある日本刀と比べてもかなり重い。それをこの回数、簡単に振れるのだからレベルの上昇によりかなり体力は底上げされていると感じていた。

 そして先程、剣を振っているだけだったというのに1つのみだがレベルがまた上がっている。ハルカにはどのような基準でレベルアップが行われるのか?ますます解らなくなっていた。

「…9997・9998・9999・10000!」

 とりあえず1万回、素振りをやってみたがほとんど疲れていない。訓練するならもっと広い場所で本格的にやらなければならないようだ。

 この体に必要があるかは分からないが、柔軟体操で体を軽くほぐす。

「なかなかすげ~な…」

 庭に面したリビングから張り出すように作られたウッドデッキの柱に寄りかかり、ハルカの素振りを眺めていたアルゴがその動きを褒める。

 実際、アルゴはかなり驚いていた。これほど剣の振り、足捌きに無駄が無い剣の使い手は初めて見る。間違いなく達人レベルだ。さらに言えば素振りの途中からキレが増した。本当の実力はどのレベルにあるのか?アルゴのような見る目を持つ者でも計りかねていた。

「今度、うちの若い奴らを鍛えてくれねぇか?もちろん授業料は払う」

「お世話になってるんだから、それは構わないけど。…もっと立派な先生とかいるんじゃないの?これだけの街なんだし」

 ハルカももちろん自身の剣術にある程度の自信はあった。だが、なんといってもここはファンタジーな異世界だ。自分より遥かに上の【剣聖】なんて達人がいてもおかしくはないと思っていた。

「そうだな、少なくともお前レベルの奴はこの街にはいないな。いるとすりゃ、三大聖都くらいだろう」

 三大聖都というのはこの大陸にごく初期に造られた、人・エルフ・ドワーフがそれぞれ纏めている三つの都市を指すらしい。昨日、ヴェチカから話だけは聞いていた。

「へ~~…」

 柔軟をしながら、どことなくピンと来ない、間抜けな表情でハルカは生返事をした。

「この件はまた相談する事にしてだ…今日はアレだ…その、なんだ…」

 アルゴが言葉を選ぼうとして言いよどむ。

「そういえば、今日はこれからの事を相談するって言ってたよね」

 柔軟体操を終えたハルカは一昨日の別れ際の会話を思い出していた。

「そう、それだ!で、お前、荷物の類はすべて海で無くしたんだよな?」

「え、ええ…」

 アルゴの迫力に押され、引き気味にハルカは答えた。

「残ってたのはナイフとアレだけね」

 指差す先にはハルカの邪魔にならないようにと、隣の家の庭を借りてヴェチカと戯れ遊ぶニアの姿があった。



 ハルカとアルゴは場所をリビングに移して話を続けていた。

「そういう訳だ。今日はギルドで登録作業をしてくれ。でないと仕事もまわせねぇ」

 なるほど。アルゴによると、どうやら街の住人はすべてギルドに登録され情報を管理されているらしい。となるとこの世界のギルドとは役所のような役割も持っている事になる。思ったよりもキッチリとしたファンタジーらしからぬ要素はプレイヤー達の仕業なのだろう。

(私は住所不定・無職・パスポート無しの難民、みたいなものか…ギルドにとっては、そりゃまずいよねえ…)

「わかったわ。登録すればいいのね」

「職業はハンター、所属クランはとりあえずうちのシルバーロアにしとけ。移籍しようと思えばいつでも可能だし、功績が溜まれば自分でクラン設立もできる。あとはブラックハウンドとブラッドレオの討伐報酬もすでに算定されてるはずだ。登録すりゃ貰える」

「それはありがたいなぁ。今のままだと年端もいかないヴェチカに養ってもらってるみたいで居心地悪いもの」

 半ば冗談ぽくハルカは笑った。

 話を続けながら、アルゴは無事に説得できた事に内心ほっとしていた。というか、ハルカは登録する事に何の躊躇いも持っていないように見える。

(こいつはもしかすると本当に記憶が無いのかもしれねぇ…まぁ、へたに話していらん疑問をぶつけられる前にとっとと帰るか。後はギルマスに任せりゃいいしな)

「俺は一緒に行けねぇが、案内はヴェチカで問題ない。話は通してあるからすぐ済むはずだ」

 これで話は終わりだ、とばかりにアルゴは腰を上げると勝手口から外に出た。

「あれ?アルゴ、もう帰っちゃうの?」

 庭でまだニアと遊んでいたヴェチカが家から出てきたアルゴに気付き尋ねた。

「ああ、仕事があるんでな。案内はお前に任せる。受付で名前を言えば、向こうがいいようにしてくれるさ」

「うん。じゃあ、これから行ってくる」

 返事をするヴェチカの頭をいつもするように乱暴に撫でると、アルゴは庭を突っ切り垣根の向こうに消えていった。

 一方、ハルカはふと頭をよぎった事について、リビングで考え込んでいた。

(ギルドが役所だとすると…ギルドマスターは市長かしら?いや、知事?総理…は言いすぎよね…)

 かなりどうでもいい事だった。

次回、ハルカ達に難癖をつけて吹き飛ばされるハンターは出てきません。

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