096 我慢できなかったマイムと呆れるムゼン
マイムとムゼンは誰にも気づかれる事なく、無事に壁を乗り越え国の中に入る事ができた。
普段はもっと見張りの数が多い筈だけれど、この時は違っていた。
ある方面に人手が集中していたからだ。
『何やら向こうの方が騒がしいな』
「あっちは・・確か鉱山がある所です」
『ふむ、確かこの国では金とやらが採れるんだったな』
「行ってみましょう。もしかしたらリタがいるかもしれません」
どうやら鉱山で事故が起きたようだった。
事故くらいであのオーガ族達がここまで騒ぐか?とマイムは不思議に思った。
集まるオーガ族達の会話を繋ぎ合わせて情報を集めるマイムは、鉱山で落盤がおき、数人が閉じ込められたと知った。
まさかリタもその中に?と思ったけれど、どうやらオーガ族だけらしいとの事でほっとした。
しかし子供も閉じ込められたらしく、オーガ族達が子供を大切にしている事を知っているマイムはそれでこんな騒ぎになっていたのか、と納得した。
「(・・・閉じ込められた者達、全員無事だといいが・・・)」
気づかれぬよう人込みを避け、様子を伺う。
やがてホムラが現れ、オーガ族達がホムラの傍に駆け寄り状況を詳しく説明した。
マイムは眉を寄せホムラを見ていたが、そのすぐ近くにリタの姿を見つけたのだった。
「っリタ!」
『おいマイム、父親の言葉を忘れたのか?』
「っ!」
すぐさまリタの元へ行こうとしたマイムを止めるムゼン。
『気持ちは分かるが今行動を取れば、騒ぎが大きくなるのは目に見えている。そうなればお前の父親が言っていた事態になりかねん。もう少し様子を見よう』
「・・・・そう、ですね」
マイムは今すぐリタを救出したかったけれど、ムゼンのお陰で父親の言葉を思い出しその場にとどまった。
リタはまた新たなシャボン玉の力で、閉じ込められていたオーガ族達を救った。
子供も怪我はないようで、マイムは胸の内で良かった、と呟いた。
そしたら今度はホムラが祝いの宴を開くと宣言したので、益々リタを救出するタイミングが掴めなくなった。
『あの鍋、美味そうだな』
「オーガ族の伝統料理、肉鍋です。今度俺が同じようなのを作りますよ・・。ああくそ・・少しでも人気がなくなれば・・・」
その時だった。
ホムラがリタの近くに寄って、その顔に触れた。
至近距離にリタに顔を近づけたホムラを見て、ずっと父の言葉を心の中で連呼して我慢していたマイムは。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぶちん。
切れた。
剣を引き抜きリタとホムラの所へまっしぐらに向かっていくマイム。
ムゼンは止めようと思ったが、マイムがぶち切れた音がばっちり耳に届いたため、今のマイムには何を言っても聞こえないだろうと諦め、姿を消す魔法を解除した。
もう気配もだだ漏れなので、姿を消していても無駄な事だと判断したからだ。
『ま、我とて我が主に不埒な真似をしようものならオーガ族の王だろうと容赦はしないがな』
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