094 マイムとムゼン、ヤシャ国へ
『我も当然行くぞ』
ムゼンはゆらりと9の尾を揺らし静かに言った。
白銀色の眼は冷たくも、怒りを持っていた。
威圧的な空気に、周りにいる者達は息を呑むがマイムだけは違った。
「共に来てくれますかムゼン様」
『無論だ。我はリタの従魔である。まだリタは無事であるが、一刻も早く救いに行くぞ』
従魔契約を結んだ者同士は、互いの安否が分かる。
傷を負えばその部位に違和感を感じ、どちらかが命を落とせば喪失感に見舞われる。
だからムゼンはリタが怪我もしておらず、無事である事が分かっていた。
「待てマイム」
「父さん・・・止めるのか?」
「止めはせん・・。リタ殿を攫われて我ら一族も憤慨しているからな。だが相手は戦闘種族の国・・。なるべく事を荒立てぬよう慎重に動け」
『我がいる。オーガ族など力試しにもならぬ』
「確かにムゼン様がいれば、オーガ族の彼らといえども平伏するでしょう。しかしヤシャ国は各地の国と繋がりがあり、ムゼン様の存在が王族の耳に入る可能性があります。そうなればムゼン様と従魔契約を交わしているリタ殿の事も、その力も知れ渡るかもしれませぬ。勿論、王族といえども聖獣であられるムゼン様と主であるリタ殿に下手に手出しはしないでしょうが、何としてでもお二人を囲おうとする者達が相次ぐ事でしょう」
『ふぅむ・・蹴散らすのは簡単だが、そういった輩達はしつこいからな・・』
「・・それに平穏に暮らしたいと望んでいたリタも、嫌がるに違いない・・」
村長の言葉に、マイムは落ち着きを取り戻した。
ムゼンもリタが嫌がると聞いて、当初は本来の姿のままヤシャ国へ向かおうとしたけれど思いとどまった。
「良いか?慎重に行動を取る事を忘れるな?」
「ああ、父さん」
「お兄ちゃん・・・・・」
「大丈夫だレイニー・・。リタは必ず助ける」
「うん・・・」
レイニーの頭を優しく撫でて、マイムはムゼンの転移魔法でヤシャ国へ向かった。
ムゼンは子ギツネの姿になって、マイムの肩の上にいる。
『姿を消す魔法もかけておく。だがオーガ族は気配にも敏感だからしっかり気配を消すのだぞ』
「分かっていますムゼン様。奴らの事はよく知っていますから・・」
リタ、待っていてくれ。
必ず、必ず助ける───!!!
ムゼンの魔法でついた先はヤシャ国を取り囲む石壁の傍だった。
見張りもいたが、姿を消す魔法と気配を完全に消していたお陰でマイム達に気づいた者は誰もいなかった。
『この壁、乗り越えられるか?』
「大丈夫です・・。何度か登った事はあるので余裕です」
そう言うとマイムは慣れた様子で石壁を登り始めた。
『何度も、という事は不法侵入を何度もしているのか?』
「ホムラの奴が俺が来たとなると入国税を倍以上にふっかけてくるからですよ・・!俺だけ!!そのたびにこうやって壁を登って奴の所まで行って、その顔面に正規の入国税を叩きつけてやってるんです・・!」
まったく本当にふざけた奴で・・!と壁を登りながら憤慨するマイム。
その様子にムゼンは、マイムとホムラの間には深い因縁があるようだと改めて思った。
一方、その頃のリタは。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
院長先生、アンジェリカ。
マイム、ムゼンさん。
いったい何が起きているんでしょう?
何故、私は多くのオーガ族の人達に囲まれて・・。
「ほらリタ!食え食え!まだいっぱいあるからな!!」
「成人しているからもうお酒も飲めるわよね、ほらこのお酒美味しいわよ」
「リタ!貴方って素晴らしいもちもちぽよぽよな上にあんな凄いスキルを持ってるなんて、わたくし感動ですわ~~!」
お肉がたっぷり入った鍋料理をご馳走になってるんでしょう?
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