小話 お手紙の出し方
新しい羽根ペン。
開けたばかりのインク。
薄水色の便箋。
新品を使う時って、何だかわくわくするのはどうしてかな?
私はトーラスト王国で買ったものを机の上に広げて、孤児院の院長先生宛への手紙を書いた。
住む場所も仕事も決まったしね。
でも書く内容には気を付けないと・・。
旅に出た矢先、盗賊団に襲われた話は院長先生卒倒しかねない。
聖獣であるムゼンさんと従魔契約をしました~なんて、孤児院中が大騒ぎになりかねないし。
真実を全て語るのは、いささか危険な事もあるとはね・・。
なもんで色々考えて考えて、今私はとても優しい人達が暮らす村にいる事、その村の人達と仲良くなって、村の長さんの家で暮らす事になった事、仕立屋さんで働く事になった事、強いお友達(ムゼンさんの事)ができた事を手紙に書いた。
「嘘は書いてないから、大丈夫だよね・・」
自分で自分に苦笑いをしつつ、手紙を封筒に入れてしっかり封を閉じる。
蝶の形をした切手を貼って、と・・・。
そういえば、何で切手の形は蝶なんだろう?
・・・・あ。
「・・・・この村から孤児院までどうやって手紙を届ければいいのかな?」
この村にはポストはない。
今更ながらに気づいた。
「手紙?」
「うん。孤児院の院長先生に出したいんだけど・・」
私は外で剣の素振りをしていたマイムに相談した。
「それなら定期的に村に来る郵便パピヨンに頼めば大丈夫だ」
「郵便パピヨン?」
「確か・・明後日に来る予定だからその時に手紙を預ければいい」
「うん・・・?あ、あとさ」
「ん?」
「・・・この村の住所って、どう書けばいいのかな?」
そして明後日。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
上空から、それはそれは綺麗な羽根の、大きな大きな蝶々が降りてきた。
首から二つの籠を下げていて、村の人の何人かが片方の籠に手紙を入れた。
「大きな街ならともかく、こういった村には各地方にある郵便本局が郵便パピヨンを飛ばして手紙を預かってくれるんだ。それを本局に持ち帰って整理して手紙を届けてくれる」
「へ、へぇ・・・」
もう片方の籠からは小さな何頭かの蝶が手紙を持って、村の各家の方へ飛んでいって家の人に手紙を渡したりしてた。
ああやって手紙を届けるのか。
暮らしていた街には普通にポストがあってそこに手紙を入れるだけだった。
それが普通で、どこでも共通当たり前の事だと思っていたけれど、こういう郵便システムがあったなんて知らなかった。
「・・・・ああ、そっか。だから切手の形は」
すごく納得した。
「お、お願いします」
あ、可愛い眼をしてる・・。
私は郵便パピヨンさんの籠に手紙を入れた。
郵便パピヨンさんはもう預かる手紙がない事を確認するように辺りを見渡すと、もう片方の籠に小さな蝶達が戻るのを待って、やがて静かに羽根を動かして空へ飛び立って行った。
「無事に届きますように・・」
ちなみにこの村の住所は、「アニマの森 ヴァッサ村 スプラー長の家」だけで大丈夫との事だった。
ちなみにちなみに、私はこの時村の名前を初めて知りました・・。
手紙は無事に届いた院長先生の反応。
「・・・この村の名前はたしかスライム族の・・それにあの森はモンスターが出るという噂が・・ああ」
「院長先生!!!」
手紙の住所を見て、色々察した院長先生は結局卒倒して他の先生に支えられたとかなんとか・・。
切手は鉄貨8枚分の値段で売られています
郵便物によって値段は変わります
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