073 村の仕立屋『ナル』の店主さん
073 村の仕立屋『ナル』の店主さん
「マイム、レイニーちゃん!どこ行くの?」
「リタ」
「あ、お姉ちゃんっ」
聞けば二人はこれらを村の仕立屋に運ぶ途中だったらしい。
そういえばマイムから仕立屋があるってちらっと聞いたっけ。
そのお店の店主が≪裁縫師≫のスキルを持っていて、どんな服もお手の門なんだよね?
どういう人がやってるんだろう?
私は好奇心が湧いて、暇だった事もあり二人について行く事にした。
兄妹二人で沢山の布を乗せた荷台は重そうだしね。
布といえども、かさばると結構な重さになるし。
「仕立屋さんの店主さんって、どういう人なの?」
「「う」」
荷台を後ろからレイニーちゃんと一緒に押す。
ムゼンさんは一番柔らかそうな布の上にちゃっかり座ってる。
こらこら、それ大事な布なんですよムゼンさん・・・。
私はというとなんて事のない、単なる会話のつもり。
興味を抱いたお店に関しての、至極当たり前の質問をしただけのつもりだった。
でも何故かマイムもレイニーちゃんも揃って言葉を詰まらせた。
「・・・・・お店はね、。ウェーブさんが一人でやってるの・・・」
ウェーブって名前なのか。
「裁縫の腕はスキル持ちもあって、村一番の腕だし・・根は良い奴なんだ・・。良い奴、ではあるんだ・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・?」
マイムの言い方が気になる。
何だろう。
明らかに、良い人なんだけどちょっと訳ありみたいな説明だ。
一体どういう人なんだ、ウェーブさんって?
「ここだ」
お店なだけあって、普通の家よりも少し大きい。
看板もちゃんとあった。
「『ナル』・・・これがお店の名前?」
「うん、そうだよ」
「ウェーブ、入るぞ!起きているか?」
マイムがドアを開ける。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
中を見て、一瞬言葉をなくした。
な、何だここは?
まず物がごっちゃごちゃに置かれてる。
奥にはミシンや作業台が見える。
かろうじてその周辺はまだ整理されてるけど、それ以外が滅茶苦茶だ。
何で窓辺に花瓶と一緒に歯ブラシとコップがあるの・・?
何で椅子の上に芽が出てるオニオがあるの!?
“オニオ=この世界の玉ねぎ”
「お姉ちゃん・・驚くのはまだ早いよ・・」
レイニーちゃんが神妙な顔で呟く。
え、これ以上の何かがあるの?
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だ~れ~・・・・だぁ~・・・?」
水分がない、乾いた声。
べた、べたっと家の奥から怪しい足音。
そして。
「!??!?!?!?」
『ぐぇっ!』
のっそりと、モップのような頭で顔が完全に隠れたスライム族が出てきて、お化けと勘違いして思わずムゼンさんを絞め技のごとく抱きしめてしまった。
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