070 ムゼンさんのお陰で村が大騒ぎになった
「まさかこのような辺鄙な村に聖獣キュウビ様がお越しになられるとは・・!!!」
村長さんがへへーと床に座り込んで頭を深々と下げた。
その目の前にいるのは、高く積み上げられたクッションの上に座るムゼンさん。
好待遇な扱いに、ムゼンさんはまんざらでもないらしく踏ん反りがえってる。
村に戻った時、それはそれは大変だった。
大半の人達は私が王国にそのまま残ると思っていたらしく、私が一緒に戻ってきたのを見て、驚かれながらも喜ばれた。
特にレイニーちゃんは私に駆け寄って抱き付いてきた。
「お姉ちゃん!!もうお姉ちゃんに会えないかと思ってた!!」
ぎゅうぎゅうにしがみつくレイニーちゃんに、私は凄く嬉しくなった。
「あれ?お姉ちゃん?そのキツネさんどうしたの?」
レイニーちゃんが私の肩の上にいるムゼンさんに気づく。
村の人達も聞きたそうにしてたから、私が説明しようとしたんだけど、その前にムゼンさんが地面に下りたって・・。
『スライム族達よ。我は聖獣キュウビ、名はムゼン。これからこの村に住まわせてもらうぞ』
皆の前で大きくなって、9本の尻尾を揺らして威圧感丸出しの上、偉そうにそんな事を言った。
当然、その場は大パニックとなった。
「もうムゼンさんったら・・。大きくなるにしても、ちゃんと説明してからでも良かったのに・・。皆を落ち着かせるの大変だったよ・・」
「アタシは今だに信じられないわ・・。本物の聖獣様がこの村に現れたなんて・・・。今日は何て素晴らしい日なのかしら・・」
クリスタルさんがうっとりとムゼンさんを見つめてる。
それだけでなく、さっきから次から次へと村人がムゼンさんの前に来て、頭を下げてお会いできて光栄ですとか平伏してる。
「しかも聖獣様がリタさんの従魔だなんて・・。流石はリタさんねっ」
「あははは・・・私は今だに実感がないけど・・・」
マイムはと言うと、今は村長さんと何かを話してる。
すると村長さんは立ち上がって、家の外に出た。
「村の者達よ、全員集まっているな?ちょうどいい。聖獣様がこの村においでになられた事はこの上ない幸運だ!しかも聖獣様は我が村の大恩人、リタ殿の従魔であらせられる!」
おおおお!と凄い歓声が上がる。
村長さん??
な、何をしたいんだろう?
「更に聞け!何とリタ殿は我が村に移住したいと願っておられる!!!」
一瞬の、静寂が流れた。
でも次の瞬間、わあああああっと更なる歓声が村中に響いた。
「リタ様が私達の村に!」
「何て喜ばしい事だ!」
「素敵!!」
「皆の者、異存はないな?」
村長さんの言葉に、全員が声をそろえた。
『ありません!!!』
「・・・・・・・・・・」
村の人達が皆、笑顔を浮かべて私を歓迎してくれる様子に私は呆気にとられた。
こんな、簡単に受け入れてくれるの?
「リタさんがこの村に・・・っ凄く嬉しいわ!」
クリスタルさんも笑顔で、レイニーちゃんは私に抱き付いてあのキラキラした目で私を見上げる。
「お姉ちゃんほんと?この村にいてくれるの?ずっと住むの?」
「・・・・・・・レイニーちゃん達が、迷惑じゃなかったら」
レイニーちゃんがぎゅううっと痛いくらい私を抱きしめる。
「迷惑なんかじゃないよ!!嬉しいっ!!お姉ちゃんとこれからずっと一緒にいられるんだねっ」
私も嬉しかった。
レイニーちゃんやクリスタルさん、村長さんや村の人達、皆が私を受け入れてくれた事に。
マイムと目が合った。
「(言った通り、だろ?)」
口パクだったけどちゃんと伝わった。
それに返事するように私は笑って頷いた。
院長先生、アンジェリカ。
私、住む場所が決まったよ。
それは、とても優しいスライム族達が暮らす村。
家も、マイム達の住む家に暮らしても良い事になった。
旅立つときは、こうなるなんて思ってなかったけど・・これからはこの村で頑張るよ!
ムゼンのテレパシーはムゼンの意思で聞こえる人と聞こえない人に分けられます
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