037 リタの過去
みょんっとほっぺを伸ばして笑う。
マイムさんは静かに私の話を聞いてくれた。
「何でそんな状態だったのか、全然覚えてないんですよ。お父さんやお母さんがいたのかも分からない・・。でも、すっごくすっごくお腹がすいて死んじゃうじゃないかって怖かったのは何となく覚えてるんです。だから私、食べる事が大好きなんです。おかげで今じゃこんなに立派になっちゃいましたけど」
お腹をぽんと叩いて、笑いながらオーランジの実を齧り、懐からペンダントを出してマイムさんに見せた。
「その時、唯一私が持っていたのがこれなんです」
「何で・・・そんな話を俺に・・・?」
「実は、10年前の事とマイムさんのスキルの事を聞いちゃって・・」
「・・・・リザーとクリスタルか・・・・」
深いため息を落として顔を覆うマイムさん。
「マイムさんの知らない所で過去の事を聞いちゃって・・何というか、負い目を感じちゃって・・それで・・」
「・・・・・・律儀なんだな、リタさんは」
「そんなんじゃないですよ・・。あのねマイムさん。私、マイムさんのご飯食べてとっても幸せな気持ちになれたんですよ。こんな美味しいご飯作れる人がいるんだって感動しちゃいました。村の人達もマイムさんのご飯で笑顔になってて、マイムさんのご飯は人を笑顔にさせる力あるんだって、凄いなぁって思ったんです」
「リタさん・・・・」
「マイムさん、美味しいご飯、ありがとうございます」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
・・・・はっ!
マイムさん黙ってしまったっ。
また思わず興奮して力説してしまった!!
マイムさんはスキルの事で悩んでるというのに私ったら・・!
「あ、あの、ごめんなさい・・。マイムさんはスキルの事、気にしてて・・気分を害させてごめんなさい・・」
「・・・・・・・・あ、ああ、いやそうじゃないんだ。そうじゃ、ないんだ」
「え?」
「・・・・美味いとはよく言われたけど、人を笑顔にさせる力とは、初めて言われたから・・驚いただけだ」
よく見るとマイムさんの顔がちょっと赤い。
あれ?もしかして照れてらっしゃる?
やだ、カッコいい人の照れ顔って何か可愛い。
「・・・リタさんのスキルも、同じだな」
「同じ?」
「リタさんのスキルも、人を笑顔にさせる。村中の皆が今日笑顔になった」
「そ、そうですか?確かに皆さん喜んでくれたけど・・」
「ああ、凄い力だ」
どうしよう。
嬉しさで顔がにやけそう。
最初は残念すぎる外れスキルで誰もが大笑いしたけど(ある意味あれも笑顔か?)、私のスキルも人を笑顔にさせる事ができるんだ・・・。
「ありがとうマイムさん」
「マイムでいい」
「え?」
マイムさんは優しい笑顔で呼び捨てで構わないと言った。
どきんっ。
ん?何だろう?
何か心臓が可笑しくなったような・・?
気のせいかな・・?
「あ、じゃあ私もリタでいいです」
「敬語も無理して使わなくていい。リタ、俺からも言わせてくれ・・ありがとう」
とくんってまた変な胸の高鳴りを感じた。
私・・・食べ過ぎで心臓可笑しくなったのかな?
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