035 10年前に起こった事
じゅわあああああああああ。
「はああああああっ・・・・・・・・」
お皿に盛りつけられたジャイアントブラックピッグのポークステーキ。
ソースをかけてじっくり焼いたそれはもう・・匂いだけでやばすぎる。
口の中に涎が溢れ出る。
カチャカチャと、ナイフで肉を切り分ける。
その柔らかい事といったら・・・!!!
「あー・・・・・・んむ」
!!!!!!!!
私の体に電流が走った。
な、何だこのステーキは・・!!!!???
「~~~~~~美味しいいいいいいいっ!」
お肉なのにとろけるような柔らかさ!
ソースとの相性はバッチリだっ。
噛みしめる度に美味しさは増していく。
ああああ・・・・こんな美味しいポークステーキ、生まれて初めて・・。
「はっ!」
も、もうない・・・!
10分もたたずに分厚かった筈のポークステーキはなくなってしまった。
「あまりに美味しくて・・時間忘れちゃった・・」
「お姉ちゃん・・・・」
気づくと、周りの皆が私を見てた。
へ、変な食べ方してたかな私?
やばい、全然覚えてない・・どんな食べ方したんだ私?
「お姉ちゃん・・・すっごく美味しそうに食べるんだね!何だか私も急にすっごくおなかすいちゃった!いただきまーす!」
「いやはや・・こんなに美味そうに食事をするとは・・どれ、私もいただこう」
レイニーちゃんと村長さんがステーキに齧り付く。
周りの皆も一斉に食べ始めた。
よく分からないけど、粗相はしてないようだ。
良かった、うん。
「リタさん、おかわり持って来ましょうか?」
そう声をかけてきたのはお医者さんだった。
「えっと貴方は・・」
「リバーです。この村で医師をしています」
「リバーさんっえっと・・・お願いしても良いですか?」
私は空のお皿をリバーさんに差し出した。
リバーさんは笑顔で受け取ると、ステーキを焼き続けるマイムさんの元へ行く。
「凄いねマイムさん・・全然疲れた様子ないし。流石『究極の料理人』スキル・・」
「でもお兄ちゃん、自分のスキルが嫌みたい」
「え、どうして?こんな美味しいご飯が作れるのに」
「あいつは、戦闘向きのスキルを欲しがってましたからね。はい、どうぞ」
おかわりのポークステーキを運んできてくれたリバーさん。
お酒も進めてくれたけど、お酒の匂いは好きじゃないので遠慮した。
「戦闘向きのスキルを、ですか?」
「ああ。10年前、あんな事があったから・・・・」
「10年前?」
変わりのアープルジュース(これも美味しい!)を飲みながら聞くと、リバーさんは村長さんを見た。
村長さんは小さく頷くと、リバーさんは10年前の事を話してくれた。
10年前、この村はモンスターに襲われた。
幸い、戦闘に適したスキルを持ったスライム族がいたので何とか撃退できたけど負傷者は多く出た。
亡くなった人もいた。
その一人が、村長さんの奥さん。
つまり、レイニーちゃんとマイムさんのお母さんだった。
レイニーちゃんが生まれたばかりに起きた悲劇だった。
「マイムはその惨劇を目の当たりにして以来、武術や剣術などの稽古に明け暮れるようになりました」
「もう二度と、あんな事が起きない為に強くなるって言ってたわ」
「クリスタルさん」
クリスタルさんが空になったグラスにジュースのおかわりを注いでくれた。
そんな悲しい事があったんだ・・。
「俺が医者になったのもその時の事件が切っ掛けなんですよ」
「『授かりの儀』の日、あいつはとにかく戦闘に向いているスキルを願ったの。でも授かったスキルは・・・」
「あの時のマイムの落胆した姿は今でもはっきり覚えてますよ・・」
クリスタルさんとリザーさんはその日の事を思い出してるのか、苦笑いだ。
「周りの奴らには大笑いされちゃったからね・・・」
「まあスキルは戦闘向きじゃなくてもあいつはかなり腕が立ちますよ。それにスキルのお陰で、この村の食事情は大きく変わったんです。好き嫌いをする子も減ったし、泉が汚されて作物がうまく育たなくなった状況でもマイムのお陰で何とかやってこれましたし」
「あいつは今だに自分のスキルを受け入れきれてないみたいだけどね」
「そうなんですか・・・」
マイムさんも、スキルの事で笑われたんだ。
だから、私のスキルを聞いても笑わなかったんだ。
自分も同じ思いをしたから・・。
私は大きなフライパンで肉を次から次へと焼いているマイムさんを見つめた。
この世界では15から成人扱いなので、お酒も飲めます
マイム、クリスタル、リバーは17歳
レイニーは10歳です
村長は年齢不明
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