第十四話 楽しみに楽しみに
やっぱり、竜崎勇人君と話すだけで、びっくりするくらい心臓が高鳴る。
あからさますぎたかな? はしたないなんて思われてないかな? まだ会ってから二日しか経ってないのにお昼に誘うなんて……。
「ねえねえ、竜姫、どうだった?」
「お、おっけー、だった」
「さっすがー、やるねえー」
女子のみんなの所に戻ると、やっぱり冷やかされた。行ってこい行ってこい、なんて言ったのはそっちなのにー。
多田さん、吉野さん、松本さん。今いるのはこの三人なんだけど、お昼食べてるところを見られたら、他の人にも何か言われそう……。
「竜崎君って、何気にすごい人らしいよ。同じ中学の人が言ってた」
「え?」
「全国模試で一位取ったことがあるんだって」
「うそ……」
「ホントホント。人は見た目によらないねー」
全国一位……。私も頑張ってるけど、一位なんて取ったことない。いっつも二桁が関の山。
はー、凄い人なんだ。知らなかった。でも、たぶん、それを知ってても私は勇人君に声をかけたと思う。
「ねえ、竜姫、彼のどこがよかったのー?」
仲良くなったみんなが、次々に質問をぶつけてくる。
「よかったっていうか、その、見た瞬間っていうか……」
「マジ? 一目惚れ?」
「そ、それはどうか分からないけど……」
「ヤバ、竜姫、かなり乙女じゃん。こりゃあ、友達としては心配ですなあ。ちゃんと話を聞いてあげないとなあ」
「き、聞くって……?」
「とりあえず、今日のお昼は、みんなで観察しよう。竜姫のカレがどんなヤツなのか」
さんせーい、ってみんなが言った。そ、それはちょっと困るなあ。
我ながら、ちょっと急ぎ過ぎたのかもしれない。でも、一目見ただけでこんな気持ちにされちゃうんだもん。見逃したら、絶対に後悔する。
お弁当、一応二人分くらい作ってきたけど、足りるかなあ? あ、量もだけど、味とかもどうだろう。ちゃんと味見はしたけど、気に入ってくれるかな?
誘った後になって、急に不安になってきた。どうしよう……。
「竜姫、いきなり弱気になったらダメだって」
で、でも……。
「せっかく好きになったんだから、チャンスをどんどん作んなきゃ」
「そうそう、高校二年って、一番自由がきくからねー」
「三年になると、受験勉強とか大変になるし」
みんなはそう言ってくれるけど、わ、私はやっぱり不安、かな。
チャンスって、どうやったら作れるんだろう? お弁当だけじゃ、ダメ、かな?
「竜姫って、今まで好きになった男子とかいるの?」
「い、いなかった」
「告白されたりとかは?」
「い、いちおう、何回か……」
おおー、って驚かないで。別に自慢してるわけじゃないし!
「となると、竜姫はやっぱりスペック高いわけじゃん? むしろ、竜崎君から何かしてくるかも……?」
「な、何かって?」
「ほらー、こことか、こことか。竜姫、結構あるし、迫られる準備とか、しといた方がいいんじゃない?」
みんなが、胸とかお尻とかを指さしてくる。
「そ、それはないよー」
「あはは、油断するなよー、竜姫。男はオオカミだそー」
大丈夫、変なことをされても、抵抗するくらいはできるし! ……たぶん。
護身術っていうのかな。そんなのは小さい頃にやってたけど、今はあんまりやってない……。勇人君は、いきなり変なことしてくるような人じゃないよね?
「竜姫、空気に流されそうだなあ。ヨシノ、マツモト、これはアタシたちが守ってやらないといけないぞ!」
「了解、タダっち!」
「いきなり手を出してくるようなヤツだったら、大変だしね!」
みんなが気合を入れ始めてる。応援してくれてるんだよね? ただ楽しんでるだけじゃないよね?
「とりあえず、今日のお昼は決戦だ! 竜姫、どこで食べるか決めてるの?」
「勇人君は学食でって言ってた」
「学食ね。二人に近い席を確保しなきゃな」
みんな、ニヤニヤしてる……。やっぱり、楽しんでる?
「いやー、友達の恋バナって楽しいなー!」
「分かる分かる」
「タダっち、ヨシノん。これは見逃せませんぞー」
ううー、ホントに応援してくれてるのー?
「あ、ところでさ、竜姫」
「え、なに? 多田さん」
「……竜崎君にさ、渡辺君を紹介してくれるように言ってくれない?」
「あちょっ、タダっち抜け駆け!」
「タダっちもヨシノんも!? そっちは譲れないっしょー!」
あ、あはは、そういう意味もあったんだね……。
なんだか、やっぱり不安だなあ。なんとか、お昼までにはこのモヤモヤした感じを落ち着けないと。
勇人君、私のお弁当で喜んでくれるかな……?




