第81話 神代よりの使者 そして日はまた昇る
イラを助けたい。真琴の両手足に貫かれた透徹の水晶を引き抜きながら、クイナスが言った。
「助けるって」
「言葉の通りだ」
セレナの妖刀の力は今をもって健在。しかしセレナが戦いに全力を尽くしているからなのか、自分の意志で動ける程度には、イラを憎いと思う感情は薄まっていた。
クイナスと真琴は、植え付けられた感情を押し殺しながら会話を続ける。
「俺はイラ・クリストルクを助けたい」
「でも俺たちが割って入れるような戦いじゃ」
ほとんど人外同士のような対決を見ながら真琴が言う。イラは全身から操糸を生やしてセレナと戦っている。そのセレナも蜘蛛のような異形を取り、変則的かつ超高速の戦闘を繰り広げている。迂闊に入ればどうなるかわからない。
「わかってる。だからチャンスは一度だと思う。不意打てるのは一度だけ。その代わり、最高の不意打ちを狙うんだ」
クイナスの言葉から透けて見える固い意志。自分の感情を操られたことへの怒り。揺らぐことのないクイナスの言葉に、真琴は強く頷いた。
「わかった。ならやるぞクイナス」
「よく言った」
そう言って真琴は両手足に穴を空けたまま立ち上がった。イラにやられ、ぼろぼろの真琴はもちろん、クイナスも妖刀に侵されている影響で、セレナへと向かう体がしっかりと動いてくれない。
しかし、だからこそ、一撃に全てを賭けることができるのだ。かくして不意打ちは成功し、その隙をついたイラがセレナの腕を切り落として勝利した。
*
「あああぁぁぁぁ……あっああああ!!!」
致死量になるだろう血を流しながら、セレナは膝をついた。目の前にはイラ。彼も膝をついて息も絶え絶えに、虚ろな目でセレナをにらみつけている。
イラはもう動けそうにない。遠のく意識を掴み取りながら、セレナの頭には目まぐるしく様々な感情が行き来していた。
痛い。セレナは腕を失った。これはつなげば治るのか? それとももう治らない? どうなる? もう二度と刀は握れないのか?
お父さん。
死んでしまった父が恋しい。もう一度会いたい。もう一度会って、いろんなことを話したい。でも話せない。だって父はもう死んでいるのだから。もし会えたとしても、父に顔向けできるような生き方はしてこれなかった。私に残ったものは、たった一つ。
憎い。私の腕を切り落とした、父を殺したイラ・クリストルクが憎い!
「あ……死、ね。イラ、クリス……トルク、死ね……死ね!」
「こいつはもう終わってやがるな」
両腕を失って、セレナにあったのは憎しみの炎。両腕を無くしたことすら、セレナにとっては憎しみへの炎にくべる薪にしかならない。
結局、セレナの中に残ったものは、ただ一つの憎悪だった。
妖刀“増鬼夜行”が砕けたおかげで、その支配もなくなった。クイナスは長刀を持ち、倒れたセレナの前に立つ。
戦士が腕を、それも命と同じくらいに重い両腕を無くしたのだ。動揺して当たり前だが、この女はなおも復讐のことしか考えていない。クイナスにとってみれば、理解できない思考で、人として終わっていた。
さすがに両腕を失っては戦うこともできないだろう。治療してやるつもりはないし、この怪我では長生きもできまい。
「介錯してやる」
「殺すのかよ」
刀を振りあげたクイナスに、真琴は問いかける。クイナスはセレナに目を向けたまま頷いた。
「あぁ。このまま生きててもどうしようもないだろ。ここで殺すのも優しさだ」
その言葉を聞いて、セレナは血走った目をクイナスに向けた。“霊装”が壊れたせいで、セレナの本来の目が見えている。憎悪に塗りつぶされた、濁った復讐者の目だ。
「やさ、しさだと」
「あぁ。だから――」
「お断りだ!!」
セレナは一度目を落ちた自分の腕に向けた。そして叫び声を上げると、地面に転がっていた“神狩”を口で咥えてクイナスに飛び掛かった。
血をまき散らしながら捨て身の一撃に、クイナスは驚き、長刀でとっさに“神狩”を受ける。
「なんで……!」
獣のような苦し紛れの一撃には、想像以上の重さがあった。セレナは不意打ちを失敗したとわかると、空中で反転し、両足だけ地面につける。
獣剣。イラを殺すための修行で、覚えていた奇剣の一つ。使うことはないと思っていたが、両腕を無くしたことで使う機会を得た。
セレナは刀を口に咥えたままクイナスに再突撃……はしない。セレナが手負いの獣同然のギョロリとした目で見たのはイラだ。幾度も致命傷を負い、イラはもう動けない。だが自分はまだ両手を切り落とされた程度だ。動けない人間一人殺すことくらいわけはない。
「っっっっっっっっっっっっっっ!!!」
セレナは両足に力を込めて、イラに襲い掛かる。クイナスは反応できない。真琴も力を使い果たして、起き上がれない。イラはセレナを憎しみをこめて、力なくにらみつけるだけで動く気配はない。
一度で駄目なら二度。二度で駄目なら三度。それでも駄目なら何度でも!
もうセレナとイラを遮るものはない。殺せるまで殺す。
バン
誰もセレナを遮るものはいない。そのはずだった。
「なんで?」
「〈神代が七英雄の一人セラの名において唱える。空間よ。断絶せよ〉」
セレナの口から言葉がこぼれる。“神狩”も一緒にこぼれた。セレナはイラを殺すことができなかった。イラとセレナの間を、不可視の壁が遮っていた。
驚いていたのはセレナだけではない。クイナスも、真琴も、イラすらも状況が読めずに呆然とする。そして彼らの視線は声のした方。通りの影に向けられる。
「さてさて。この収拾のつかない状況に収拾をつけましょう」
「誰?」
通りの影から姿を現したのはどこにでもいるような町娘の服装をした一人の女。悠然と歩く彼女の両手には鏡映しのように同じ形の抜かれた刀が握られており、顔には嗤みが浮かんでいる。
美しい顔立ちではあるが、その美しさに見とれることはできない。朝の日ざしが彼女を照らしているにもかかわらず、女の周りだけ深い闇が漂っているような、そんな禍々しさがあった。
女はクイナス、真琴、セレナ、イラの順に顔を見ると、くつくつと嗤い出した。
「なんだお前は」
ただ嗤う女に全員が飲まれる。口火を切ったのはクイナスだ。
「私? さっきも言ったはずよ。私の名前はセラ。神代七英雄の一人で、忍耐強く、嫉妬に生きる女よ」
まずは、とセラはクイナスに目を向ける。セラにあるのは純化された狂気。クイナスは顔を引きつらせて長刀を構える。
「うん。やっぱりあなたは弱いわ」
セラはクイナスの構えを見て、短く評し、ひゅんと、クイナスの長刀の切っ先に自分の刀の刃先を当てた。
「あ?」
刀同士がわずかに触れる。クイナスは刀を空に高く放り投げ、後ろに倒れた。クイナスは何が起きたのか分からないという顔で、頭から地面に倒れこむ。宙に舞った長刀はくるくると空を舞い、クイナスの鎧の継ぎ目、ちょうど腹の内臓の隙間に突き立った。
「がっ」
「あなたではこの場に役不足よ。私のことは忘れてお眠りなさい」
一歩。セラは倒れたクイナスに一度ずつ。両手に持った刀で斬りつけた。刀が通り抜けた後に傷痕はない。だがクイナスはがくりと意識を失った。
「次」
「クイナスに何をした!」
気を失ったクイナスを見て、真琴が龍剣を杖に立ち上がる。なおも闘志を見せる真琴にセラは微笑んで見せた。
「別に何も。ただ私のことを記憶から消しただけ」
双刀を見せながらセラが言う。クイナスに突き立った長刀以外の外傷はない。だがセレナの使った妖刀のこともある。
「いいじゃない。そこにいる彼女のように、何かを仕込んだわけじゃないわ。本当に、私のことを覚えられているのは都合が悪いから、忘れてもらっただけよ」
信じられない。真琴は龍剣をセラに向ける。セラは呆れた顔で肩をすくめた。
「ふざけんな。わけわかんねぇよお前」
「わからなくて結構。どうせあなたの記憶も消すわ」
一歩踏み込もうとした真琴は、負傷のせいで体勢を崩す。右膝から崩れ落ちた真琴の上をセラの刀が通り抜ける。
「あら偶然」
軽いセラの言葉。真琴の背中に鳥肌が立った。セラはさっきまで真琴から少し離れたところにいた。それがいつの間にかに刀の間合いにいる。瞬歩なら迫る風や気配があるはず。それすらない。リリアーナの転移ですら、空間のゆがみを感じるのに、セラははじめからそこにいたかのように刀を振った。未知への恐怖が膨れ上がり、真琴は後ろに下がりながら白炎をセラに放つ。
「物騒ね」
人体など余裕で消し炭にする白炎を、セラは蚊を払うように刀で払い斬った。
「その剣」
「龍剣が、どうかしたのかよ」
セラは小首をかしげながら、手にした刀で龍剣を指す。
「神代の龍がそこにいるのね。妙に器用な封印がされているみたいだけど、おかしな話よね」
だって異形の龍は私たちが封印したはずだもの。セラは真琴に歩み寄り、刀の片方を地面に突き刺して、龍剣をつかみ取る。
「あ」
「ちょっと貸して」
むき身の刃を素手でつかむセラ。龍剣は真琴の手から離れる。セラはまじまじと龍剣を観察する。龍剣はセラを嫌がるか、恐れるように、細かく鳴動した。
「ふぅん。わかったわ」
セラは龍剣を見終わると、興味を失ったと言わんばかりに真琴に龍剣を放り投げる。反射的に真琴は龍剣に手を伸ばす。
龍剣に触れた真琴の体は空転する。真琴の視界は朝日の昇った空をとらえた。
どうして? クイナスと同じだった。何かをされたわけでもないのに、体が勝手に動いて空を仰ぐ。
まるでイラが最後に見せた、セレナの体勢を崩した技ではないか。
「“理合掌握”。肉体構造と肉体を流れる力の流れ、さらに言えばこの世界に流れる力の全てを把握できれば、相手の体を自在に操るくらいのこと簡単だと思うけど、なかなかうまくいかないらしいわね」
青空にセラの顔が映る。せめて何か一つ。真琴は魔眼でセラを見る。そこにはありえない光景が映っていた。
「生きて、ない?」
生命には必ず内界位階と、その中を巡る無色の精霊が存在している。“色欲”の生み出した怪物のような例外はあるが、それでも生命である以上、外界とは異なる内界位階はある。
だがセラには内界位階がなかった。真琴の魔眼はセラの存在する場所だけぽっかりと穴が空いたように何も映していなかった。
幻か、この世界のバグのような存在。仰向けに真琴は倒れる。セラは見られていることに気付いたのか、不愉快そうに顔をしかめた。
「のぞき見なんて悪趣味ね。……悪いけど、前言撤回。あなたには一つ仕込ませてもらうわ」
セラが双刀を真琴に突き立てる。柔らかく、乱暴な手つきで真琴の魂に触れる。
それはたまらなく不快で、真琴はなすすべもなく意識を失った。
*
「次」
セラは真琴から刀を引き抜き、今度はセレナに顔を向けた。セレナは理解できない感情を憎悪に変えて、セラをにらみつけている。
「なぜ邪魔をした」
両腕から流れる血はほとんど止まっていた。無色の精霊……帝国でいう“気”を操ったのだろう。イラとセレナを遮る壁は今もなお展開している。セレナにイラは殺せない。
「ごめんなさいね。イラ君を殺させるわけにはいかなくなったの」
セレナの目に映る憎悪にセラは微笑む。身勝手で、わがままで、強い力を秘めた感情。それはセラにとって好ましく、またセラの相棒にとっても同様のものだ。
「私としてはイラ君を殺そうとするあなたは邪魔だから、この戦いの後にあなたは殺そうかと思っていたけど、気が変わったわ」
両腕の喪失は戦士としての死だ。喪失の後にも戦い続け、イラを殺そうとしたセレナの姿勢は好い。
セラは嗤みを浮かべながら地面に落ちたセレナの両手を見た。そして刀を振るう。
セレナの両手は、セラの手によってサイコロ状の肉塊と化した。
「お……前は」
「うん合格」
つなぎ合わせることすら不可能な状態になった両手を見て、セレナは言葉を失う。だがセレナの憎悪は揺らがなかった。セラはぐちゃりとセレナの手だったものを踏みにじりながら唱える。
「〈神代が七英雄の一人セラが唱える。空間をつなげ〉」
セラが一閃した場所に不可思議に輝く境界が現れる。
「帝国行きの門。あなたがイラ君の好い敵になってくれることを祈っているわ」
「まっ……」
セラはセレナの腹を容赦なく刀で貫く。引き抜いた後に傷痕はない。気を失ったセレナをセラはつかみ上げ、境界の向こう側に放り込む。ついでにと、転がっていた“神狩”も境界に投げ入れた。
「最後。ほんとに、これでよく生きてるわね」
境界を閉じ、不可視の壁を消す。セラは最後に残ったイラを前に、しゃがみこんだ。
全身を操糸で包み込み、動くはずのない体を動かし、生きているはずのない生を生かす。腕が千切れ、胸と四肢に大穴を空け、足を切り捨てられ、喉も貫かれた。全身にくまなく傷を作り、血も流しきった。呼吸もしていない。
しかしイラは生きている。
どう見ても外れていて、どう考えても壊れている。その根底にあるのは揺るがない一つの想いだったはずだ。だがセラはそっと柳眉を顰めた。
「感情に濁りが生まれているわね」
イラを突き動かすのは復讐心だったはずだ。ならば復讐以外の全ては不要のはず。
「仲間なんていらない。友達なんていらない。親友なんていらない。生徒なんて、弟子なんていらない」
イラには憎悪だけあればいいのだ。それで復讐者イラ・クリストルクは完結している。なのにその憎悪が揺るげば、イラは弱くなってしまう。
現に、町の住民も真琴も手加減なく戦えば、大した怪我もなくイラは相手を全滅させられたはずなのだ。
住民など、精霊術の一つで全滅だ。真琴など、六色細剣を心臓に突き立てるだけで死ぬ。脆いものだ。セレナだって、手の内を晒す前に殺せば簡単だったはずだ。
「消すのは簡単だけど」
「お……れは」
セラは別にイラが好きで手助けしているわけではないのだ。あくまでセラの目的のため、イラを利用しているだけに過ぎない。極論、イラのことなんてどうでもいい。セレナはイラという「可能性」を育てているに過ぎないのだ。セラが思案していると、弱々しくイラが声を上げた。
「まだ意識があったの。どう? 私の教えた“理合掌握”は役に立った?」
セラがイラに教えた唯一の技術。無才なイラが、執念で何とか再現できた神代の技術の一つ。
最もイラができるのは“理合掌握”の初歩の初歩。しっかりと打ち合って、相手の体勢を崩す程度。“理合掌握”を編み出したセラであれば、相手に触れずとも体を操ることができる。自分の力、相手の力だけではない。力というものは、この世界にあふれかえっているのだから。
「おれは」
「何かしら」
「この、おもいを、無くしたく……ない」
「ふぅん」
ガクリとイラが前のめりに倒れこんだ。弱々しくも脈打っていた操糸が動きを止める。死んだわけではない。無理に体を動かす必要がなくなっただけだ。
さてどうしようか。イラの気持ちは分かったが、イラの最後の言葉はセラを揺らすほどではなかった。イラが揺らがない憎悪を抱くことで得られる強さと、混ざり合う感情を持つことで得られる強さ。二つを天秤にかけ、セラは考える。
考えること数秒。結論は出たとセラは大きく頷いた。
「うん。消そう」
イラに憎悪以外の感情は不要だ。セラは手にした“嫉妬”と“忍耐”の魔剣を構える。大罪と美徳の魔剣。対となる原典の二振りがセラの手にはある。二つの魔剣を使えば、イラの感情を消すことなど造作もない。
倒れたイラに目線を合わせ、セラは刀を振りあげる。振り下ろせばイラに芽生えた感情は消えてなくなる。元通り、憎悪だけの人間になる。セラが刀を振り下ろそうとした瞬間、
イラのそばにあった透徹の刀がブルリと震えた。
「……カリウス?」
セラの動きがピタリと止まる。妄執に満ちた目線はイラから透徹の刀に移っていた。わずかな光を放つ刀はセラの決定に反論するように、鳴動している。
「あなたは反対なの? イラ君の感情を、憎悪以外の全てを消してはいけないの?」
また刀が鳴動する。それを見取るとセラは刀を下ろし、鞘に納めた。
「そう……ならやめておくわ。全てはあなたにまた会うためだもの。あなたの言うことには従うわ」
セラはもの言わぬ透徹の刀にねばついた熱っぽい視線を向ける。そこにあるのは純化された狂気。憎悪にも似た恋慕の情だ。
「またねカリウス。もう一度あなたと会えたら、私は」
セラは透徹の刀を一度抱きしめた後、イラたちに背中を向けて、町を去った。
*** ***
*** ***
太陽が空に昇り、戦いの後を照らす。町を埋め尽くすのは妖刀“増鬼夜行”で操られた人々の群れ。彼らは手足を砕かれ、無力化されていたが、妖刀本体が破壊されていた反動で、皆気を失っていた。
妖刀の影響は町の住民の九割以上にも及んでいた。幸運にも妖刀の影響から免れていた町領主を始めとしたごく一部の人間は、異変におびえて家や宿に引きこもっていた。
整然と造られた町は真琴の白炎と空間破壊のせいでおおよそ一割が再起不能なレベルで崩壊し、そこに倒れていた多くの人々も死亡した。
最後に戦いのあった町の中央には三人の男が倒れている。一人は金級冒険者クラン“龍王の咆哮”のリーダーのクイナス。彼はハイオーガとの戦いでの傷に加え、腹に自身の長刀を突き立てられて気を失っていた。
一人は金級冒険者真琴。彼はクイナスよりもさらに重傷だった。両手足の貫通痕に加え、体の至るところに傷を負い、仰向けに倒れて動かない。
そして最後の一人は“黄の玉石”イラ・クリストルク。彼が誰よりも重傷だった。全身をくまなく覆う操糸。その裏側はあちらこちらが切断され、貫通され、操糸で強引に縫合された痕がある。心臓のある部分には大穴が空き、血はすでに流れ切った。肺もつぶれてしまったから、息もしていない。
誰が見ても死んでいると断ずる状態。けれどイラは生きていた。死んだように、生きていた。
彼らを後ろに町を去るのは一人の女。神代よりの使者、この場において誰よりも強く、そして計り知れない狂気を宿した女セラ。彼女は上機嫌に町を去る。
セラが町を去り、町を歩くものは誰もいなくなった。一人の復讐者が、別の復讐者へ戦いを殺そうとした。言葉にすればそれだけの戦いに、幕が下りた。
薄い光を発していた透徹の刀が砕け散り、朝日射す空に舞う。砕けた透徹は風に乗って、崩壊したイゾの町を巡って消えた。
戦いは終わった。勝者なんていない。敗者など存在しない、誰もが敗者で、誰もが傷を負った、この無意味な戦いに。
第三章 二人の復讐者 完
誰か俺に異世界人の指導の仕方を教えてほしい 第一部 完
第二部に続く
これにて三章は完結です。読んでいただきありがとうございました。また連日更新もこれで終了です。三章のあとがきや今後の予定などは活動報告に挙げておりますので、もしよろしければそちらもご覧ください。
感想、ブクマ、ポイント評価、誤字報告などいただけると今後の励みとなります。よろしくお願いします。




