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ローアル・side story/僕の本当の幸福は⑤



 冷たい床に、涙が雨粒のように滴り落ちた。



 「ごめんね。エステレラ………苦しかったよね。」


 エスピーナもあの男も加害者だが、結局は僕がエステレラを殺したのと同じだ。

 結局、助けられなかった。


 どんなに後悔しても、もう君はいない。


 どんなことになっても君を止めなかった僕が、殺したのと変わりない。

 床に膝を突き、ボロボロと泣き崩れて、もう二度と届かない、その言葉を吐いた。


 「あ…い…愛してた…のに。」


 君に好きだと言えばよかった。


 愛していると伝えれば良かった。


 何一つ、生きている君に、僕の本当の気持ちを伝えることができなかった。


 だから、君の気持ちも何一つ分からないまま。


 …ねえ、エステレラ。君は……


 僕の本当の幸福が何かを知っていた?


 僕の幸福は君と一緒にいることだった。


 もう君がいないなら、僕がこの先幸福になることは一生ないよ。


 僕の望んだ幸福は、君と一緒にいることだったから。


 君と結婚して、温かい家庭を持つ。君にそっくりの息子や、子供達に恵まれる。

 やがて月日が経ち、子供達が巣立っていく。

 その後は君とふたりで年老いて、どちらかが寿命を迎えるその瞬間まで、そばにいる。

 そんなありきたりなことが、僕の願いだった。

 

 「あらあら。ローアルったらまだ子供ね。

 そんなに泣きじゃくるなんて。

 けれど…わたくしに悪態ついたんだからしばらくお仕置きよ?」


 フォンセ副団長がいなくなってからも、エスピーナは、陰で暗躍する騎士団員を数人そばに置いていた。

 僕は拘束されて地下牢に閉じ込められた。


 光の差さない牢に閉じ込められ、必要最低限の食事しか与えられない日が続いたが、何も口に入れる気にはならなかった。


 死にたかった。


 死んで、もう一度エステレラに会いたかった。


 ……会いたい。

 優しい君の声を聞きたい。強く逞しい君の眼差しを見たい。

 温かくやわらかい君の体を抱きしめたい。


 エステレラ。


 今でも君を愛してる。だからそばにいきたい。


 君の側に逝きたい。


 僕にはずっと君だけだ…………


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