ローアル・side story/僕の本当の幸福は④
君が左眼を失ったと知った日。
出血多量で君が目を覚まさないかもしれないと覚悟した日。
目を覚ました君を見て、泣くのを我慢して笑った日。
『君のおかげで…なれたんだ、名誉ある専属騎士に。ありがとう。』
…ほら、見てよエステレラ。
僕はもうこんなに幸せだ。
だからもう…これ以上君が身体を失う必要なんてない。
もう、いいんだ。充分なんだよ。
涙をこぼす代わりに、言いたくもない偽りの幸福を語った。
これ以上傷ついて欲しくない。
もうこれ以上僕のために、自分を犠牲にして欲しくない。
僕が最高に幸せだと笑えば、君はもう何も犠牲にしないよね…?
——宮中には僕とエスピーナが相思相愛だとか、毎晩僕がエスピーナの寝所に通っているだとか、それをエステレラが邪魔しているとか、根も歯もない噂が広がっていた。
それを流したのはエスピーナ自身だと後から知った。
いくら否定したところで噂は一人歩きしていった。
今思えば宮中には、僕とエステレラを引き裂く様々な噂が飛び交っていた。
互いの意志を確認する間もなく。
会えない日が続いて、二人とも悪い噂に振り回される瞬間もあっただろう。
人の心を操るのを得意としたエスピーナの言葉に、みんな踊らされていたのだろう。
僕がどれだけ幸せだと言ってもエステレラは、エスピーナと結婚するまで自分の体を犠牲にするだろうと言われたのだ。
心底嫌だった。
エステレラを貶めたエスピーナと結婚するなんて。けれど。
僕がエスピーナと結婚すればエステレラは本当に、もう自分を傷つけなくなるのか…?
君は僕を本当に大切に思ってくれていて、エスピーナと結婚することが僕の幸せだと思っているの?
そうすることで君は安心するのか…?
ディー・ハザック・ストレーガがかけた魔術は解ける…?
君は苦しみから解放されるのか…?
———————愛してる。エステレラ。
僕は君を愛してる。君だけを愛してる。
君には幸せでいてほしいんだ。
どんな形だっていい。生きていてほしい。
エスピーナと結婚するよ。するから。
それで僕が幸せだと思ってくれればいい。
だからもう自分を傷つけないで……
それなのに——————




