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ローアル・side story/僕の本当の幸福は④


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 —————————————


 結局16歳になるまでエステレラは指と片足、腎臓の一つを失った。僕のために。


 何でこんな残酷なことをエステレラにさせるんだ?


 止めたいのに、あの男の魔術がエステレラの精神を蝕んでいる。


 好きな人を傷つけるこの地獄を、早く終わりにしたいのに…!



 ———その後、エステレラの身体を無惨に奪っているディー・ハザック・ストレーガが、エステレラを献身的に支えているという噂が流れた。


 東の離宮に行くと、彼はエステレラの車椅子を押し、いつも彼女の後ろに控えていた。


 どういうつもりでそばにいる…?


 あんたにエステレラのそばにいる資格はないのに…!!


 激しい怒りと嫉妬で、気が狂いそうになる。

 けれどそれをエステレラに見せては駄目だと我慢した。


 僕の行動次第でエスピーナとディー・ハザック・ストレーガが、エステレラに危害を加える可能性があるから。


 エステレラを守るためには、大人しく言うことを聞く以外にない。


 おそらく、前皇帝の暗殺を示唆したのはエスピーナだろう。


 エスピーナは皇帝だった自分の父親さえ手にかける凶悪な悪女だ。

 僕が間違えば……何をしでかすか分からない。


 僕が大人しく言うことさえ聞いていれば…

 エスピーナはそれ以上、エステレラに手は出さないだろう。

 僕が犠牲になればいい。

 心を殺し……

 自分に嘘をついて。


 行動は細かくエスピーナによって制限され、僕はごくたまにしかエステレラに会うことができずにいた。

 逃亡しようにも、常に僕とエステレラは誰かに監視されていた。


 いくら身体を失っても、成長していくエステレラはその瞳を直視できないほど凛とし美しかった。


 彼女が悪意のあるあの二人から、少しでも早く解放されることを願って…


 ずっと耐えた。耐えたのに。


 エステレラがこれ以上、僕のために自分を犠牲にしないように。


 『エステレラは貴方が幸せでないと、気が済まないみたいよ。』


 『エステレラの前で、自分はとても幸せだと言いなさい。』


 『いいの…?貴方が不幸だとエステレラはもっと自分の体を犠牲にするわよ?』


 『エステレラは、わたくしとあなたが結婚することを望んでいるそうよ。

 あなたが私と結婚しなければ、エステレラは体を失い続け、最期には死んでしまうかも。

 彼女を守るためには仕方のないことよ。

 だから私と結婚しなさい。』


 ———何で?


 イヤだ。僕の大事なエステレラを傷つける女と結婚なんて、死んでもイヤだ———!


 『わたくしと結婚すると言いなさい。

 そうしたらあの子は満足するでしょうし、もうこれ以上、体を失う真似もさせないわ。』


 ずっとエスピーナの囁くことは呪いのようだったし、エステレラの身体を次々に無惨に奪っておきながら、ディー・ハザック・ストレーガは罪滅ぼしのように彼女に纏わりついていた。


 何であんな最低な屑が、彼女のそばにいるんだ…!


 どんな思いで彼女の前に立っていたと思う?


 エスピーナとあの男が共謀してエステレラの体の一部を次々と奪っていくのを、僕がどんな狂いそうな思いで見ていたと思う?


 彼女を魔術で操り、貶め、身体を無惨に奪っているあいつが側にいるなんて許せない…!!



 『エステレラ。僕は……幸せだよ』



 いつの間にか僕は周囲から『皇子』と呼ばれるようになっていた。そんな者である筈がないのに。

 思い出す限り、下級貴族だった僕の母親は亡くなり、落ちぶれた父親は森で死んだ。


 一方のエステレラは…僕が幸福だと思うまで自分を犠牲にするのを止めてくれなかった。


 だから…笑うしかなかった。


 自分の心を押し殺し、いつも彼女の前でせいいっぱい笑った。


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