ローアル・side story/僕の本当の幸福は③
この日のことを、後からエスピーナはとても愉しそうに話した。
キスの瞬間を、物陰からエステレラが見ていたと。
相変わらず非道な女だと思い知った。
それからも皇宮には様々な噂が飛び交った。
僕がエスピーナを好きだとか、エスピーナに相応しい身分を欲しがっているだとか。
全部でたらめだった。
けれど、どれだけ否定しても噂は波のように広がっていった。
その間にエステレラのそばには、ディー・ハザック・ストレーガ公爵が頻繁に付き纏うようになっていた。
その頃、自由に城を行き来できる権限を与えられるようになっていた僕は、前皇帝のアウトリタ陛下の弑逆事件や、フォンセ副団長の不審な死について独自に調査し、数々の証拠からエスピーナを疑うようになっていた。
親しくなった女官の数名が、河岸に遺体で打ち上げられて発見されたこともあり、それもエスピーナの仕業であることが判明した。
これ以上ここに居てはいけないと感じた僕は、密かにエステレラを連れて城を出ようと計画した。
けれど、エステレラに会う許可が全く下りず、そうしているうちにエステレラは片足を失った。
その直後、僕にまた意味もなく男爵の爵位が与えられた。
よく分からない恩賞として。
本来、トルメンタ帝国で賜る爵位とは、国や皇族に尽くした実績から与えられるもの。
何の実績もなく、まだ何も成し遂げてもいないのに突然与えられる爵位…
あまりにも不自然だった。




