ローアル・side story/僕の本当の幸福は③
———しかし、それから何ヶ月もエステレラに会えない日が続いた。
エステレラ付きの新女官長に何度も嘆願したが、会うのは無理だと拒否された。
理由を尋ねても何の説明もない。
その頃僕がエステレラの情報収集のために顔見知りになった女官が何人かいた。
しかし、次に会おうとする時には、彼女らは実家に帰っただとか結婚したとかで二度と会うことはなかった。
何の前触れもなくいなくなった彼女らのことを不審に思いながらも、僕はエステレラに手紙を書いて東の宮のそばかすの女官にそれを渡すように頼んだ。
1日だけ休暇を貰ったので、以前約束していたエステレラの髪飾りを買いに行こうと書いた。
———でもエステレラはその日、手紙に書いた時間に大庭園に現れなかった。
女官は手紙を確かに渡し、本人が了承したと言ったけれど。
「ローアル?」
そこに現れたのは、エステレラではなくエスピーナだった。
何をしているのかと尋ねられてエステレラのこと話すわけにもいかず、休暇だから市街をブラブラしようと思ったと話すと、「それならわたくしも連れて行きなさい」と迫られたのだ。
結局、厳重な警備の元でエスピーナと市街に行くことになる。
「うふふ。ローアル、これだとまるでデートみたいね。」
市街をお忍びで訪れたエスピーナは本当のデートのようにはしゃいだ。が、僕はエステレラが手紙の場所に現れなかったことの方が気掛かりで、それどころではなかった。
雑貨店を訪れた時に綺麗な琥珀色の石がついた髪飾りを見つけ、エステレラによく似合うだろうと思ってこっそり購入した。
だが、それも運悪く盗難に遭い、失ってしまった。
———あの時女官は、エステレラに手紙を渡さなかった。
なぜなら渡したはずの手紙はエスピーナが持っていたからだ。
あのそばかすの女官は、エスピーナの回し者だった。
僕の書いた手紙をそのままエスピーナに渡していたのだ。
だからその日、エステレラは大庭園に姿を現さなかった。
しかも手紙は、全く別の日に渡された。
これから式典でもあるのかというくらい着飾ったエスピーナに大庭園に呼び出されて、キスをしろと不自然に命令された。
冬にも関わらず庭園には色とりどりの花が咲き乱れていた。スノードロップ、カトレア…ダリア…アネモネ…
そこにエステレラがいるとも知らず、僕は命令されて彼女を称賛して抱き寄せ、キスまでしなければならなかった。
いつまでこうしなければならないのか…好きでもない人と。
「…ローアル、キスは唇にするものよ?」
「…申し訳ございません。…ですが陛下はトルメンタ帝国の皇帝であり、帝国の華やかな太陽でございます。
そんな稀有な方に、わたしのような身分の低い者が触れるだけでも罪でしょう。
どうかお許しください。」
唇ではなく頬に軽く触れるだけのキス。
これ以上はできない。
僕がそうしたい相手はこの世に一人だけ。




