表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

83/163

ローアル・side story/失ってしまった僕の星⑤


 ◇◇◇


 4年前。僕とエステレラは、エスピーナ皇女のきまぐれによってトルメンタ帝国の城の門をくぐった。


 僕を『飼いたい』と言った皇女の物欲の目が、最初から恐ろしいと感じていた。


 身を挺して庇ってくれたエステレラを巻き添えにする形で、城に来ることになってしまったのが悔やまれた。

 何とか二人で城を抜け出せないかとしばらく観察したが、目ぼしい位置に兵が置かれていて一寸の抜け道もなかった。


 トルメンタ帝国の皇帝は血も涙もない暴君だと聞いていた。

 これほど厳重に兵を采配しているのが皇帝だというのも頷ける気がした。


 宛てがわれた使用人の部屋でエステレラと夕食をして間もない頃、兵がやってきた。


 「皇帝陛下がお呼びだ。…ただし、エステレラのみだ。」


 …え?


 耳を疑いたくなるような命令。

 少し前まであの煌びやかな皇座に座り、僕たちと謁見していたあの恐ろしい陛下が、なぜエステレラを?


 訳もわからず僕は胸騒ぎを覚えた。

 あの燃えるように鋭い赤い瞳、鋭い目つき。

 まるで狙った獲物は逃さないとでも言いたげに僕らを見つめていた皇帝・アウトリタ・タエヴァス・トルメンタ。


 彼が一体、エステレラになんの用があると言うのだろう?


 気がつけば僕はエステレラの裾を掴んでいた。

 行ってほしくなくて。

 僕の不安を察したかのように、エステレラは掴んだ手にそっと触れて、いつものようにふわりと笑った。


 『心配しないで。』


 目が、私があなたの側を離れないのは分かっているでしょう?と言っている。

 それなのに僕はずっと不安だった。

 エステレラが奪われてしまう。



 ———その日の夜、エステレラは長く部屋に戻らなかった。



 僕はベッドに寝そべり、天井を仰ぎながら隣の部屋に彼女が戻ってくるのを待っていた。


 その時、部屋の外を通りかかった、他の使用人たちが話す声が聞こえた。


 「…何で…あの下賎な娘が陛下に呼ばれたのかしら?」


 「そうよね。しかも陛下の自室でしょう?

 今まで亡くなった皇后様以外、後宮に側室だって入れたことのないお方よ?

 …まさかとは思うけど陛下は幼女趣味がお有りなのでは……」


 「し!やたらなことを口走るものじゃないわ!誰かに聞かれたらどうするの?」


 「そうね、ごめんなさい。行きましょう。」


 使用人たちが慌ただしく去って行ったが、僕の心臓は激しく脈打っていた。

 胸がぎゅっと締め付けられる。

 

 エステレラ…無事なのか…?


 今の話が本当なら…僕はどうしたらいいんだ。

 いますぐ君を皇帝から奪い返したい。


 どうして僕はこんなにも無力なんだろう?


 もしも皇帝が君に少しでも触れたなら…


 皇帝を…殺してやる…!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ