ローアル・side story/失ってしまった僕の星④
「死んだ…だって?彼女が…?」
あの残酷な冬の日を僕は忘れない。
「ええ。可哀想なエステレラ。ディーの手によって無惨にも心臓を奪い取られてしまったのよ。」
まるで足元から、冷たい氷が体ごと覆っていくような感覚。
激しい吐き気と、途方もない胸の痛みが全身を抉る。
僕の目の前にいるエスピーナは、可哀想だというその口で目が笑っていた。
「ディー様が殺したのか…?それとも、エスピーナ、君が…?」
「いやだわ、ローアル。わたくしがそんなことをする筈ないでしょう?わたくしはもう貴方の妻なのよ?」
嘘だ…エステレラ…
もう君に会えないなんて。君の笑顔を見れないなんて。
「…君と結婚したらもう、エステレラは大丈夫だって約束したじゃないか………
裏切ったんだな。」
寝室の床に崩れるように僕は膝をついた。
とめどない涙がこぼれ落ちる。
体にいくつもの剣が突き刺され、僕の心臓が血を噴き出しているようだった。
「やめてよローアル。わたくしは無実よ?
そんな酷いこと言わないで…あんなに愛し合ったでしょう?」
「……てない。」
「え…?」
「君と僕は一度も愛し合ったことはないじゃないか…!
僕たちは白い結婚だっただろう!!
ずっと君を拒絶していたのに何で嘘ばかり吐くんだ!!
そう言う噂を皇宮に広めたのが君だってことも知ってるんだ!!」
「まあ…!あんなに穏やかな貴方がそんな感情的になるなんて驚いたわ。
それだけわたくしのことを分かっているなら、これも分かるわよね?
いい?ローアル、わたくしはこのトルメンタ帝国の皇帝なのよ?
わたくしを愛すれば貴方は、帝国一の幸せな男になるのよ?貴方は愚かではないわよね?」
…この女は……何だ…?
悪魔……?
涙でぼやける視界の中で、蔑むように彼女を見上げた。
エスピーナは決して自分が悪いとは思っていない。
その態度に全く罪を犯したというような悪びれた様子はなく、エスピーナは上から見下げるように僕に言葉をねじ込んだ。
初めから分かっていたのに。
エスピーナが正真正銘の悪女であるということを。
戦うべきだった。
エスピーナの言うことに大人しく従ってきたのは、すべてエステレラを守るためだった。
守れるはずだと…でも違った。
守るはずの人がもういないなんて。
例え自分の命を失ったとしても、この悪女と真正面から戦うべきだった。
「孤独《一人》で逝かせてごめん…辛かったよね、エステレラ…」
遺体はすでにディー・ハザックの手により埋葬されたのだという。
どんなに悔やんでも、もう彼女は戻らない。
やり切れず喉の奥が焼きついていく。
心も体も業火に焼かれているように苦しく、嵐の時に吹き荒れる雨粒のように、絶え間なく涙がこぼれ落ちた。
…エステレラ。
本当にもう君はいないの…?
君に伝えそびれたことがある。
ずっと胸に秘めていた想いだ。
僕は君を愛している。
ずっと愛していた————————




