表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

73/81

前世編/魔術師ディーの幸福(ディーside)


 ◇◇◇


 

 今から300年ほど前に滅んだ国を巡り、長い戦争や内戦が繰り返された。

 しかし、ついに人々が安心して暮らせる新しい帝国が興った。


 新しくその国を治めた皇帝は、世に蔓延る不正や汚職を正し、また民を平等に愛した。


 都市には活気が溢れ、一度は途絶えた魔術の発展により、生活水準は上がり周辺国に名を馳せた。

 帝国の名前は『レールタ』。意味は『星』である。



 ——————



 「皇女様。今日も驚くほど、元気に走り回っていますね。」


 皇女のために建てられた皇女宮の広大な庭で、元気に剣を振るっているであろう彼女は、この国の第一皇女である。

 白銀の長い髪をしたわたしは、全てをまるで見ているかのように呟いた。


 「ディー…!いつからそこに?」


 彼女が嬉しそうに言った。


 「ずっといましたよ。」


 「もう。すぐに声をかけてくれれば良かったのに。」


 近づく彼女の声はとても軽やかだった。

 …この目が見えれば、きっと美しく育った彼女を見ることができただろう。

 誰もが彼女をこう絶賛する。


 『皇帝に似て、情熱的な赤い瞳をし、暖かな紅葉のような赤茶色の髪をし、色白で華奢。

 剣術が好きで、少しおてんばで、けれど賢く、民を大切に慈しんでくれるお方だ』


 その優しい声を聞けば、彼女だとすぐに分かるし、気配を感じればすぐに気づく。


 「お茶にしないか。」


 「貴方の好きなお茶菓子もあるわよ。」


 『金糸のように美しい髪をし、赤い瞳をした優しい皇帝と、皇女様と同じ赤茶色が鮮やかな髪をした、賢い皇后』


 見目麗しいと讃えられている両親の二人が、皇女を呼びにわざわざ皇女宮に訪れた。

 仲睦まじい家族はいつも幸せそうだ。


 「ディー、お前もいらっしゃい。みんなでお茶しましょう。」


 柔らかい声で彼女がわたしの手を引いた。

 …見えなくても感じることはできる。


 皇女の名前は『エステレラ』。

 300年前に亡くなったあの娘が転生したのだ。


 信じられない話しだが、彼女の容姿は前世と変わらなかった。


 それだけではない。

 この帝国の皇帝の名を『アウトリタ』、皇后の名を『トリステル』。

 不思議なことに皇帝も皇后も前世と同じ名前で、皇帝に至ってはやはり前世と同じ容姿をしていた。

 まさに奇跡とでも言うか。


 そして…わたしもまた転生し、ディーとして生まれ変わった。名前は両親がつけてくれた。

 生まれは公爵家ではなく平民だったが、魔力量が多いのを見染められ、エステレラに魔術を教える講師として皇室に召し抱えられた。


 …彼らと違うのは、わたしは記憶を持って生まれてきたという部分だ。

 エステレラの死の直後、わたしは魔術で取引をした。


 『どうかエステレラが幸福であるように』と。


 わたしは、畏多くも神物に取引を持ちかけたのだ。

 その対価として転生後は盲目で生まれたのだと思う。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ