前世編/それでも最期に願うのは②
———目を失った事で、ほとんどの時間を車椅子で過ごすようになった。
そんな私を憐れむような素振りをしながら、ローアルはまた、何かを強請るようにじっと私を見つめている。
今ローアルは、エスピーナと結婚したがっているらしい。
だがそれにはストレーガ家の後ろ盾が必要で、ディー様に後継人になってもらわなければならないらしい。
だからなのか、泣きつくような、縋り付くような優しい声でローアルは私に尋ねる。
「ねえ…エステレラ。僕が幸福だと君は嬉しいかい…?」
もう片目でしか彼を見ることはできないけれど。
エスピーナとの結婚を夢見ているローアルの瞳は、まるで水滴を垂らした水面のように揺れていた。
ずっとローアルの幸福を願っていた。
エスピーナと結婚することがローアルにとって幸福なら、叶えてあげたい。
本当にそう?
ローアルは私が体を犠牲にしていることを知りながら、なぜ何も言わないの?
なぜ私にそんな縋るような目をするの?
もう幸せなんでしょう?
そんなにエスピーナと結婚したいの?
そんなに私から、まだ何かを奪いたいの?
私のことは本当にどうでもいいのね。
嫌いよ。(違う大好き)
憎い。(愛してる)
嫌い。嫌いよ。
(愛してる、愛してるわ)
貴方が嫌い。エスピーナも嫌い。
(違う、幸せならそれでいい)
二人して私に死んで欲しいのね。
(———幸せになってね———)
「嬉しいわ……
ローアルが幸せだと、私も幸せなのよ。」
どうやってそのセリフを紡ぎ出せたのか、もう分からない。
嘘をつくのも息を吐くのも、全て同じになってしまった。
————————————————
自分の気持ちを完全に見失った私は、逃れられない呪いのように再びディー様に取り引きを懇願した。
ローアルは完璧に幸せでなければならない。
彼が幸せでなければ自分もまた、幸せにはなれない。
そのためには自分を壊してまでローアルに尽くさなくては。
それ以外にお互いが幸せになる道はない。
…むしろこの頃はもう、私は身体だけでなく心まで完全に壊れてしまっていた。




