前世編/それでも最期に願うのは②
◇◇◇
ゆらゆらと、白い光が揺れている。
太陽の光…?
それとも月の光だろうか…?
眩しいけど片目ではどうにも確認しづらい。
私の左目の眼球は永遠に失われてしまったのだから。
「…エステレラ?」
誰かが私を呼んでいる。
あの儀式の後で気を失い、今まで眠っていたのか。
無理はない。
あれほど大きな儀式だったんだもの…むしろ生きているのが不思議なくらいだわ。
残された方の目に、私の手をぎゅっと掴み、まるで祈っているようにも見えるローアルの姿が飛び込んできた。
「ロ…」
「君のおかげだよ。」
「君のおかげで、なれたんだ。皇室騎士の中でも名誉ある専属騎士に。本当にありがとう、エステレラ。」
涙を浮かべ、嬉しそうに笑うローアルを見て私は言葉を詰まらせた。
良かった。
…今度は目を犠牲にした甲斐があった。
半分の目でしか見えないけどこんなに笑うローアルを見たのは久しぶりだ。
私が倒れたと聞いてそばにいてくれたんでしょう?
優しいローアル。大好き。
…なんて、うそ。
…違うでしょ。
言って。ローアル、言ってよ。
『君のおかげで、大好きなエスピーナの専属騎士になれたんだ。』って。
私の失った目を見て言いなさいよ。
知っているのよ。ローアル。
皇室騎士の中でも、名誉ある専属騎士になれたのが嬉しいんじゃない。
エスピーナの専属騎士になれたのが嬉しいんでしょ?
あの女が好きだから…!!
あなたは私が何を犠牲にしているか、知っているんでしょう?
知っていて黙ってるんでしょ?
エスピーナを手に入れるために、私を利用してるんでしょう?
…違う。
違う。違う。違う。
ローアルは…そんな人じゃないのに…
信じたいのに……!
私いつの間にこんなに、大好きなローアルを疑うようになってしまったの?
本当に自分が嫌になる。
私が片目を失ってから、宮中にはこんな噂が流れるようになった。
『皇家の血が流れているディー様は銀髪だから、同じ銀髪のローアル様にも実は皇族の血が流れているのではないのか』
『ローアル様はストレーガ公爵家に縁のある誰かの子ではないのか』
『だとするとローアル様は本当に皇子に近い存在ではないのか?』
廃れていく皇宮でも、ロマンスが好きな宮中の女官たちは夢中でそのことを語る。
スラム育ちのローアルと私。
一方は奇跡のように地位や富や権力を手に入れ、一方は呪いのように左手小指、左脚、臓器、左目が欠けてしまった。
『本当の皇子と壊れた姫』。
今や宮中では誰もが私達のことをそう呼んだ。




