前世編/それでも最期に願うのは①
私が死のうが、もう……どうでもいいの?
ローアル………………
———時おり東の離宮に訪れるローアルは、変わらず愛らしい眉をして私を見つめていた。
あれから毎日のように雪だ。
『エステレラ。僕は、毎日本当に楽しくて幸せだ。』
照れたように幸せそうに微笑う仕草も、恥ずかしそうに伏せた目も変わらずに。
皆が言う童話の中の理想の王子様という印象はより強くなる。
「ローアル……あなたが幸せなら私も嬉しいわ…。」
今、ローアルはエスピーナの専属騎士になるためにある宝石を欲っしているという噂を聞いた。
それは希少な鉱石を研磨した宝石で、その価値は大きな城を一つは買えるほどだという。
もしかして今度はそれを強請りに来ているのだろうかと、ふと考えてしまう。
「幸せだ」と笑うローアルを見るたびに、胸がジクジクと痛んで膿が広がる。
でも私にできるのはローアルに合わせるように笑い返すことだけ。
この離宮に、ごく稀に訪れてはすぐに去ってしまうローアルの後ろ姿を、今日も庭園で見送る。
私たちの間にはずっと、何も語らない雪が降っている。
その雪の中に美しく舞う花びらの花言葉は、【裏切り】。
ローアルが全てを知っていて私を犠牲にしているのだとしたら、二人の間にこれほど相応しい花はないでしょう。
一度疑い出したらどこまでも疑心が付き纏う。
信じているのに。
信じられない。
愛しているのに。
私はローアルを愛しているの…?
いつの間にこんなにも深く…
だからこそ、深い憎しみが湧いてしまう。
それでも私は、まるで誰かに呪いでもかけられているみたいに自分を犠牲にするのを止められなかった。
ローアルが欲しがっている宝石を手に入れるため、ようやく帰還したディー様にまた、みっともなく縋ってお願いする。
これこそエスピーナとディー様の思惑通りね…
———魔法陣の中に入っていくのにすっかり慣れた私を、ディー様は物悲しそうに見ていた。
馬鹿だと言いたいのでしょう?
そんな顔をしないでディー様。
あなたもどうせ、私が死んでもいいと思っているのでしょう?
むしろそれが狙いなんでしょう?
だからそんな顔をしないで。
心配してくれているのだと勘違いしてしまいそうになるから…




