表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

57/68

前世編/愚かな娘②


 今日みたいにエスピーナとのキスを見せつけられたりしなかっただろうか…?


 どうしてもっと早くローアルに好きだと言わなかったのだろう。


 エスピーナが好きなの?

 お父様を無慈悲に殺した彼女が……


 私はもう、どうでもいいの?ローアル……

 だから私の元に来てくれなかったの?


 胸が潰れそうなほど苦しかった。




 「エステレラ。

 そんなに苦しんで、一人で泣くなら……

 ローアルを諦めたらどうなんだ?」


 背後から低めの声がした。

 伏せた顔を上げると、そこには魔術で転移してきたと思われるディー様が立っていた。


 オッドアイの瞳は変わらず美しくて。

 皇室の紋章の刺繍が入った黒い服にローブを纏い、フードに隠された銀色の長い髪が、少しだけ見えている。

 

 「ディー様…?」


 濡れた顔を両手で拭き、ベッドから急いで降りて、背の高いディー様を見上げた。


 「久しぶりだね。勝手に君の部屋に入ってすまない。君も今や皇女なのに…」


 私が本当に皇女だということはディー様も知らないだろう。

 また、それを自分からバラす気もなかった。

 どうせこの人もきっと信じないだろうから。


 「いえ…私は皇女では…

 …それより、どうして私がローアルのことで悩んでいると分かったんです…?」


 「…分かるよ。君が悩むのはいつもローアルのことだからな。」


 そんな分かり切ったことを聞くな、という風にディー様は私の顔を見て溜息を吐いた。

 それから少し無愛想に口調を変えた。


 「…あの夜以来だね。

 もう体調はいいのかい?

 君を西棟まで送った後、君が倒れて…亡くなった皇帝に介抱されていたと聞いたが。」


 「はい…もうすっかり良くなりました。」


 そう言って綺麗に丸まり、傷口もない指先を見せると、被っていたフードを脱ぎながら慎ましくディー様が口を開いた。

 銀色の長い髪がふわりと靡く。


 「そうか。良かった。」


 あの夜。

 それはディー様の禁忌の魔術で小指を落とした日のことだ。

 ディー様はやや目を伏せると、短いため息を吐いた。


 「…残念ながら、君の小指でローアルが得たのは準貴族という身分だけだった。

 やはり小指だけでは難しいようだ。」


 「準貴族…それでも、貧民よりは良いのですよね?」


 「もちろんだ。でも…準貴族は平民とあまり変わらないから、やはり扱いは良くない。

 この皇宮には準貴族よりも上の身分の貴族がたくさんいるから…

 見下されるのは変わらないだろう。」


 「そうだったんですか…」


 実は今その返事を聞くまで少なからずディー様を疑っていた。

 でもどんな対価であれ望めばちゃんと取引をしてくださるのだ。


 しかし、あれ以降ローアルを見たのは久しぶりだった。

 だからローアルが準貴族になったことを私も今まで知らなかったし、ローアルがそのことをどう思っているかも知らなかった。


 今日だって…なぜ…


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ