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前世編/私も本物の皇女だった④

 

 ◇◇◇


 《皇宮地下牢獄》。


 罪を犯した重罪人を捕らえておくための地下の牢獄に、フォンセの姿があった。


 厳しい尋問を受けたせいで、罪人用の衣服はかなり汚れている。

 そこに見張りの者とお供の騎士を連れてエスピーナがやって来た。


 「フォンセ。」


 「皇女様!」


 薄暗い牢獄で冷遇を受け続けていたフォンセにとって、そこに現れたエスピーナは光のように眩しかった。

 自分を牢獄から出すために来てくれたのだと。

 万が一逃亡に失敗しても助け出すと。

 初めからフォンセはエスピーナとはそういう約束をしていたのだ。


 「フォンセと話をしたいの。下がって。」


 エスピーナは騎士と見張りを後退させると、冷たい檻の中にいるフォンセに近付き言った。


 「…よくやったわ。フォンセ。

 さすが、わたくしの騎士。

 皇室騎士副団長ね。」


 「恐れ入ります!エスピーナ様。

 このフォンセ、エスピーナ様のためならば喜んでこの命を差し出すでしょう!」


 嬉しそうにするフォンセを見て、エスピーナは遠くからは分からない程度に微笑した。


 「そう…ならば喜んでその命を差し出してちょうだい?ね?フォンセ。」


 「え…?」


 それまで、絶対に自分は守って貰えると信じ切っていたフォンセの表情が固まってしまう。


 「いやだわ、フォンセ。分からないの?

 文字通り、その命をわたくしのために使いなさいと言っているのよ?」



 「エスピーナ様…一体な…にを」



 「《皇帝弑逆》には犯人が必要でしょう?

 黒幕を探られては大変だわ。

 だから、フォンセ。

 お前とはここでお別れしなくちゃならないの。

 ずっとそばにいたお前を手放すのはとても辛いわ。

 けれど、仕方ないわよね?

 だって…お前がお父様を殺したのは事実ですもの。」


 檻の隙間から、お互いの肌が触れるほど距離が近づく。

 エスピーナの、唇の端がくっと吊り上がる。

 あの恍惚とした表情をフォンセに向ける。


 勝利したと確信した時の顔。


 エスピーナのこの顔を、フォンセは幾度となくそばで見てきた。

 その瞬間フォンセは全てを悟ってしまう。



 「必ず助けると、仰ったじゃありませんか。

 皇女様、貴方のために皇帝を…

 いいえ皇帝だけじゃない、俺はこれまでどれ程この手を血で染めましたか?

 …それなのに………俺をたばかったのですね?」


 「謀る…?

 いえ、フォンセ。貴方はわたくしの道具。

 わたくしのための使い捨ての、その他大勢の命となんら変わりないのよ?

 使い捨ての道具の命をどう扱おうと、わたくしの勝手でしょう?ね?」


 「…使い捨て…皇女様、俺のことをずっとそう思ってきたのですか?」


 「そうよ。他に何かあって…?」


 罪の意識などないという風に無邪気に笑うエスピーナを見て、フォンセはこれまでの熱を一気に奪われたような気がした。


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