前世編/私も本物の皇女だった③
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アウトリタは高い天井を薄暗い目をして見上げ、一文一句噛み締めるように告白した。
「それから…わたしは……エスピーナの悪意が誰かに…向かないよう…、さらに暴君でいることを…続けた…
トリステルに…悪いことをした。
その罪は…一生消えないだろう…」
「実家を失ったトリステルが…帰る場所がないのは分かっていたから…
視察するふりをして…あの貧民街にトリステルが…いるのではないかと…彷徨っていた。
あの日は…何かに勘づいたのか…エスピーナがついてきて…そして…馬車を引き返した。
そこに…そなたがいた。
トリステルと…瓜二つの赤茶色い髪に…わたしと同じ…赤い瞳を…したそなたが。」
「エスピーナに…気づかれないよう…離れようとした…だがうまくいかなかった…
運命だったのだろう…刺繍が得意だと聞いて…間違いないと…確信したよ。
赤い瞳は…間違いなく…わたしの血を引いた娘だと…一目で分かった…
…トリステルのお腹には…すでにお前がいたのだと…嬉しくて…」
あの当時を知る者は、この城にはほとんどいない。
エスピーナに目を付けられる前に、アウトリタが城から関係者を追い出したからだ。
けれど何の不幸かエスピーナの気まぐれにより、城にエステレラを招き入れてしまった。
ローアルを玩具のように欲しがっているエスピーナが次に何をするのかが、アウトリタには手に取るように分かった。
間違いなくエステレラの命を狙うと思い、その日のうちに加護をかけた。
自身の娘であり、トリステルの娘だと知られたら危険だと思った。そのため皇女であることを明かせなかった。
だが指を落とされたことで、裏でディーが動いているのだと知る。
貧民街に帰しても、いずれエスピーナに暴き出されて殺される。
だからあの時は無理やり皇女として側に置く方法しか思いつけなかった。
同じアウトリタの娘なのは変わりないのに、半分血の繋がった姉が、妹の命を狙うことの悲しさ。
それを止められない無能な皇帝。
結局、アウトリタは全ての権力を手にしながら、愛する人を守ることができなかった。
「トリステル————
今、どこに、いる……?
お前が…産んで、くれた、娘を見つけた……
可愛い、娘だ……あり、がとう……。」
「会い、たい…
今も…変わらず、お前を……愛して……
最、期に、もう一、度…お前…に会い、たかっ…………」
「…へい、か?」
エステレラが泣きそうな声で呼ぶ。
アウトリタは自分の命の灯火がもう残されていないと悟り、トリステルへの想いを語った。
「…もし…生まれ、変わ…る、ことが、できたなら。
そこに、お前が…い、たのなら。
次こそお前を守るから……
だ、から…トリ、ステル…出会った、あの頃の…よう、に、笑って…くれ…ないか…?」
「…エスピーナも…いつか心を入れ替えるのではないかと…きたい…し…愛し…て…
トリステルも、そして、そなたも…エステレラ…わたしのかわいい…む……す……め」




