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前世編/私も本物の皇女だった②



 「おとうさま。エスピーナいがいのおんなを愛さないでくださいませ。

 エスピーナがいちばんでしょう?

 …あんな、いなかきぞくのげせんなおんななど、りきゅうからおいだしましたわ。」


 エスピーナは幼少にしてすでに思考が極端に歪んでいた。



 アウトリタが数週間留守にしている間にトリステルに様々な嫌がらせをし、追い詰め、皇宮から追い出したのだという。


 「エスピーナなぜ…そんなことを?」


 「とうぜんですわ、おとうさま。おとうさまはおうぞくいがいはゴミだとおっしゃってました。

 あのおんなたかが、へんきょうはくのおんなでしょう?

 かくしたきぞくなど、おとうさまにふさわしくないですわ。

 めがさめてよかったですわね。」


 その時アウトリタは、初めてエスピーナの異様な性格を思い知った。


 しかし身分の低い貴族は見下せと、そう教育したのは紛れもなくアウトリタ本人。


 後からトリステルの侍女に聞いた話では、それは想像を絶するものだったという。



 「嫌がるトリステル様を、使用人たち数十人で追いかけ回し、庭の噴水に顔をつけて溺れさせようとしたり、服の後ろから火をつけて燃やそうとするなどとにかく悪質で…

 ですが使用人たちもエスピーナ様に家族の命を脅され従うしかなかったのです。

 そして…最後は……

 トリステル様は、エスピーナ様が連れて来た、何処の馬の骨ともしれない多くの野蛮な男達に慰みものにされました……

 それから精神的にもおかしくなられ…

 もう2度と陛下を愛さないと、憎しみのこもった目をしながらこの宮を去られました。」



 ———なんてことだ。



 全ての事実を聞いたアウトリタはその場に崩れ落ちた。


 トリステルを愛していた。

 しかし傷つけた。

 それは取り返しのつかないほど残酷な方法で。


 これまで闇雲に暴君として歩んできた。

 娘を歪めてしまったのは自分だと、アウトリタは心底悔やんだ。


 さらにエスピーナは、アウトリタが不在の間にトリステルの実家である辺境伯に冤罪をけしかけ、トリステルの父親や領民を処刑したという。

 それをこんなに幼い娘がしたのだ。


 間違いを正したのだ、それを褒めてくれと罪の意識もなく笑うエスピーナを見てアウトリタはその場に崩れ落ち、涙するしかなかった。


 だがアウトリタはエスピーナを憎めなかった。


 これは因果応報だと気づいてしまったからだ。

 歪んでしまったエスピーナを正すのは自分しかいないと思った。


 

 アウトリタは、すぐにでも行方不明のトリステルを探そうとした。


 実家を失い、全てを失ったトリステルは、身を隠すために貧民街にいるのではないかと。


 だがエスピーナを刺激してはいけなかった。

 トリステルを探していると悟られたり、貧民街にいる事を匂わせてはならなかった。


 エスピーナにそれを悟られれば…

 必ずエスピーナは、アウトリタが愛を向ける誰かを躊躇いもなく殺すだろう。



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